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起業・スタートアップのための起業家講義
弁護士ドットコムの事業化戦略<前半>

掲載:2020/09/23

講師:元榮太一郎(オーセンスグループ株式会社 代表取締役社長)
2014年6月18日講演

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

事業を立ち上げる時っていうのは、信用もない、実績もない、ないないづくしの状況ですから、そういった時に「なんだか面白いな」「一緒に仕事がしてみたい」と思ってもらうための一つの武器として、理念やビジョン、志、というのは非常に重要だと思うわけです。

日本初にして日本最大の法律相談ポータルサイト、「弁護士ドットコム」。インターネット法律相談(有料)、弁護士一括見積もり依頼、弁護士検索、みんなの法律相談(無料)などのサービスがあり、月間3000件の相談が寄せられています。「弁護士ドットコム」の創業運営者である元榮太一郎氏は、第二東京弁護士会に登録する弁護士でもあるという異色の起業家で、起業家・アントレプレナーを目指す方が集うアタッカーズ・ビジネススクール(起業家養成学校)で学んだという経歴も。ビジネスを成功させるために必要なのは、「想い」の部分であると語る元榮氏に起業までの道のりと、成功要因をお話しいただきました。

日本初の弁護士検索マッチングサイト「弁護士ドットコム」とは

私は2005年4月から起業家・アントレプレナーを目指す方が学ぶアタッカーズ・ビジネススクール(起業家養成学校)19期生として起業戦略講座を受講しました。その練り上げたビジネスプランがまさに「弁護士ドットコム」という、本日お話しする事業です。

弁護士ドットコムは、日本初、そして日本最大の法律相談ポータルサイトです。弁護士サービスをもっと身近にしたいという思いで立ち上げたサイトで、登録弁護士数は現在約1800名。今、全国に29000名の弁護士がおりますので、シェアでいうと6パーセントというところです(※2020年4月に登録弁護士は国内弁護士の45%超となる約19,000人。「2020年3月期決算説明会資料」より)。

1案件につき2往復メールベースで相談ができる有料のインターネット法律相談、弁護士費用の一括見積もり、弁護士ドットコムのユーザー評価を基にした弁護士の検索サービス、そして、「みんなの法律相談」という、Yahoo!知恵袋のような、ユーザーも弁護士も回答ができるコミュニティQ&Aサイトの4つのサービスを展開しています。「みんなの法律相談」は弁護士の先生には無料でご回答いただいており、これまでにない独自性があるため、相談数がかなり伸びている状態です。
 

弁護士、そして起業に至る原体験となった大学2年生の交通事故

大学時代、楽しく過ごしていた学生生活に転機が訪れたのが、大学2年生の後半でした。冬で2月のことだったと思います。月8万円の自動車ローンを組んで中古車を買いました。アルバイトとお小遣いで8万円を払ってしまうと、ほとんど残りがないというような無謀な自動車購入だったので、任意保険に入るかどうかで非常に悩んでいました。事故を起こさなければ掛け捨てになる保険でしたので、「これ無駄になっちゃうんじゃないか」と。そんな中、悩んでいたバチが当たったのか、購入から2週間経った時に事故を起こしてしまいました。

お先真っ暗な気分の中、すぐに保険会社との交渉が始まりました。向こうは示談交渉のプロです。私は二十歳そこそこで、法学部とはいっても法律の知識は全くありません。担当者はそれを見抜いていて、「このケースは、あなたは10:0です」と言ってきました。つまり、私が全部悪いから全部払いなさいということです。その時、悲嘆に暮れていた私を見かねた両親が、「こういう交通事故は弁護士が役に立ってくれるんだ。行ってみたらいいんじゃないか」とアドバイスしてくれました。すると弁護士が、「こういう案件は過失割合が判例でほぼ決まっているんです。確かにあなたの方が悪いけれど、先方も注意義務を怠っているので、7:3であなたが悪い。10じゃない」と。このことを、弁護士にアドバイスを受けたと先方に伝えたところ、あっさりと7:3で収まってしまったということがありました。

この時、人が困っている時に役に立てる弁護士という仕事は本当にすごいなと思いました。絶対に弁護士を目指そうと決意しましたし、同時に、普通の人の生活に降りかかるような交通事故の案件について、一体誰に頼めばいいのか、弁護士に頼むことが分かったとしても報酬がいくらで、どこにどういう弁護士がいるのかが全く分からない。ブラックボックスになっていることに疑問を感じました。弁護士というのはもっと市民にとって身近にならなければと思ったことが弁護士ドットコムの原体験になっていると思います。

その後、司法試験を無事に突破。ちょうど司法修習生だった2000年頃、法曹人口を毎年3000人増やそうという司法制度改革が進められていました。毎年3000人増えていくと2018年には弁護士人口が5万人くらいになるんですね。新聞の一面に「弁護士も大競争時代へ」とあり、今までのような古き良き弁護士の時代が終わりを告げるならば、生き残れる弁護士になるために、弁護士+αとなる差別化や優位性を常に意識していかなければと考え始めたのがこの時でした。
 

勤務弁護士時代に芽生えた「ビジョン」の実現に向けて

司法修習時代を経て、私は「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」でM&Aの法務監査など、企業買収や合併が花盛りの時代を企業法務ロイヤーとして充実感を持って取り組んでいました。しかし、弁護士というのはクライアントの想いを実現するお手伝いが役目であり、自分のビジョンを入れる余地が限定的なことに気づき始めていたんです。そして、28歳の時。一度きりの人生、何かもっとワクワクして、血沸き肉踊る生き方しないと、ブレークスルーはできないのではと思うようになりました。2004年当時、若くても時代の表舞台に出てくような経営者が現れ始めていた時期でもありました。自分も「起業」というものをテーマにしてみようと思い立ったのです。

起業のモチベーションを高めるためには、私にとって何がやりたいのか、夢を膨らませるのが最も大事だと考えました。自分にとってのコアコンピタンスは何なのかと考えた時、やはり弁護士なので、法律や司法の世界だなと思ったんですね。ですので、弁護士・法律を軸に置こうと決めました。また、ちょうどインターネットの世界ではWeb2.0などの息吹が起こっていた時期ですので、弁護士だけれどインターネットと掛け合わせることで、何か異質な、独自のものができるんじゃないかなと思い、ずっとその二つでできることを考えていたんです。その時目にしたのが「引っ越し比較.com」でした。「価格.com」などのモノを扱うのであれば比較できるだろうなと思っていたのですが、「引っ越し比較.com」はサービス比較している。すごいなあと思ったのと同時に、大学2年の時の自動車事故の経験がフラッシュバックしてきました。あの時の自分に弁護士サービスを比較できるようなサイトがあったら、多分使っていたし、相当便利だったはずだと。あの時の自分みたいに、いろんなトラブル抱える人達に役立つサービスになるんじゃないかと思いました。

「これは芽がありそうだ。絶対やろう」と思ったわけです。新しい時代の弁護士が大量に入ってきて3000人時代が始まる2007年より前に立ち上げなければと思いましたし、リーガルマーケットが拡大していることを見越して他の企業も入ってくる可能性があったので、事業を思いついた1か月後には「退職したいです」と事務所に伝えました。
 

起業準備スタート ~起業・スタートアップのためのアタッカーズ・ビジネススクール(起業家養成学校)の受講と仲間集め

2005年の1月に退職して、自宅で開業しました。当時は元榮法律事務所という事務所名で名刺を作り、弁護士ドットコムの事業をプランニングし始めたのですが、もちろん弁護士としては開店休業状態でした。司法試験は通っているので、法律については多少の専門性はあるのですが、事業家、起業家としては全くのゼロスタートなので、事業計画などは全くのド素人なんですね。これは何かしらのペースメーカー必要だと思い、出会ったのが、大前研一さんのアタッカーズ・ビジネススクール(起業家養成学校)でした。しかも、事業計画コンテストで上位に入賞すると大前研一さんにプレゼンできるため、これはやりがいあるなと。また、自分の事業プランが単なる思いつきに過ぎないのか、社会的要請はあるのかを大前研一さんにぶつけてみるのはとても有効なのかなと思い、「起業戦略講座」を受講し事業計画に落とし込んでいきました。

また同時に、サイトを立ち上げるための仲間探しを画策したのがこの時期でした。私の場合は比較的恵まれていまして、大学のゼミの後輩だった弁護士がビジネスプランにすごく共感してくれて、その彼のルームメイトがNTTのエンジニアであると。更にその友人でベンチャースピリットある組織でやってみたいというYahoo!オークションの立ち上げメンバーだったエンジニアも加わってくれました。これが創業メンバーの成り立ちです。非常にやる気になってくれて、弁護士ドットコムをどうしていこうかと私の自称執務室で始めたわけです。2005年の7月にオーセンスグループ株式会社を設立、2005年の8月に弁護士ドットコムの運営を開始しました。