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起業・スタートアップのための起業家講義
弁護士ドットコムの事業化戦略<後半>

掲載:2020/09/23

講師:元榮太一郎(オーセンスグループ株式会社 代表取締役社長)
2014年6月18日講演

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

弁護士ドットコム、スタート ~初期の幸運と苦労の数々

起業家・アントレプレナーを目指す方が学ぶアタッカーズ・ビジネススクール(起業家養成学校)の起業戦略講座では、幸いにも事業計画コンテストで上位入賞し大前研一さんにプレゼンしたところ、大変好評をいただきました。大前研一さんが、「実は私も専門職っていうのはちょっと敷居が高すぎるから、何か変えた方がいいんじゃないかと構想したことがある」とのことで、「こういうサービスあったほうがいいと思うし頑張ったらいい」と激励の言葉をいただきました。ここまでいろいろありましたが、弁護士ドットコムの運営をやめようということにならなかったのは、やはり大前研一さんにあの時、こういうサービスは世の中に必要だと言っていただいたことが、私の中では非常に心の支えになっていたのだと思います。そういう意味で、起業戦略講座で大前研一さんにプレゼンさせていただいたことは、今も本当に感謝しています。

そのようなスタートを切ったところで、2005年の10月に、またこれも幸いなことに朝日新聞、読売新聞にご紹介いただくことができました。新聞に取り上げてもらうためにかなり努力したんですが、こうしたパブリシティの糸口を掴むと、その後すごくいい波及効果になっていきます。「何の実績もない中で、出せるのは想いだけだ」とそれを伝えたところ、両紙への同日掲載が実現でき、それが読売新聞オンラインに、さらに連携しているYahoo!にも掲載され本当ラッキーなことにYahoo!のトピックスになりました。今まで1日に数十人しか来なかったサイトが訪問者2万人、12万ページビューになったのです。やはりパブリシティというのは非常に重要だと実感しました。

そういう話を聞くと一見順風満帆なように見えますけれども、かなり立ち上げ時は困難を極めました。例えば、登録弁護士数の伸び悩みです。当時はまだ弁護士大増員時代も現実になっていない時期だったので、20世紀型の弁護士の先生がまだまだいらっしゃいました。わざわざネットで自分から顧客開拓する必要がないという弁護士が非常に多かったのです。また、立ち上げ時の運営資金の枯渇もありました。正直なことを申し上げると、その頃少しずつ増え始めていた弁護士・元榮としての法律顧問報酬などでやりくりしながら、なるべく運営コストをかけない形で細々とやっていました。
 

「オーセンスグループ株式会社」と「法律事務所オーセンス」の相乗効果

弁護士ドットコムでメディアに取り上げられるようになると、そういったベンチャースピリットを持った弁護士に、同じような目線や感覚で法務顧問してほしいという依頼が入ってくるようになりました。私自身、ベンチャー企業の経営の仕方やビジネスモデルなどもかなり勉強しましたし、経営者の自伝も多く読みました。法律相談に来た社長さんと話すと、たちどころにその事業モデルが分かるわけです。「こんな弁護士初めてだ」と評価していただき、知り合いの方を紹介していただいたりもしました。世の中の人がこれだけ面白がって必要としてくれるのも自分の運命であり、社会的な役割なのかなと思いました。

また、弁護士ドットコムの経営者が、弁護士としてプレーヤーである方が説得力があるんですね。この業界は新たなサービスモデルを必要としているから私たちは弁護士ドットコムを展開しているんです、というストーリー性を打出しやすいということにも気づいたんです。ですので、弁護士ドットコムを運営するオーセンスグループ株式会社と法律事務所オーセンスとの二頭体制でやらせていただいています。走りながらその時々で臨機応変に考え、対応してきた結果、今の最適解になったのだと思っています。当初の私は想像もつかなかった状態が今あるということは間違いありませんが、一方で、今後この形でやってない可能性もあると私は思っています。
 

「4つ」の起業の成功要因

ここまでサービスの運営を継続することができた成功要因はなにかと問われるならば、まずやはり「日本初」というものを実現できたことが挙げられるのではないかと思います。とりわけネットの世界では先行者優位が非常に強いと言われています。パブリシティで取り上げていただいたのも、やはり「初」だからだと思うんです。

また、2つ目は「コアコンピタンス」を意識したことだと思います。弁護士と法律という、自分にとって最も地理の明るい分野にこだわったことで、今後弁護士が増えていくとどのような世界になるのか、経営者弁護士がどんなことに苦しんでいるのかといったことは、同じ弁護士なのでどんどんの人に会う中で聞き取りができました。弁護士業界を他の人より知っているからこそ、今、地殻変動が起きていて、この業界は幕末のような様相を呈していることが分かり、その先にたぶん維新のようなことが起きることも分かるのです。

3つ目は青臭いんですが、でもすごく大事なことだと思っているのが、弁護士や法律をもっと身近にしたいという「理念」です。理念とかビジョンとか志とか、そういった想いをたぎらせながら大事なプレゼンを行うと、その社会的意義に共感して、多少寛容な評価を受けることが大きいと思うんです。テクニカルなことを理由付けとして使ってしまうと、その裏側を見透かされてしまうものです。ですから、何か事業をやる時は、理念というものをしっかり自分の頭の中で整理して、いつも話せるようにしておくということが、0を1にする作業の中では非常に大切なのかなと思っています。事業を立ち上げる時というのは、信用もない、実績もない、ないないづくしの状況ですから、そういった時に、なんか面白いなと思って一緒に仕事がしてみたい、取引してみたい、そういうふうに思わせるひとつの武器として理念というのは非常に重要だと思うわけです。

最後、4つ目は、一人になっても続けたいという想いも非常に重要だと思います。その想いがある限り、全てを自分事ととらえることができるので、何か上手く行かない時に外部要因ではなくて自分の中で問題がある、絶対自分で解決できるという気持ちになれるのです。何か事業プランを練り上げる時に、この事業だったら絶対一人になってもやり続けたいと思えるかどうかというのも、その事業を進めていくかべきかどうかの判断材料になるんじゃないかなと思います。

最後の2つは情念的な話になりましたが、ビジネスとメンタルは別モノではなく、切り離せないものだと思いますし、メンタル的なものというのは非常に重要だと思っているため、成功要因として振り返らせていただきました。
 

今後の成長戦略 ~世界一のリーガル先進国を目指して

今後、日本を世界一のリーガル先進国にしていくために、「弁護士×IT」、「法律×IT」というものを使って、徹底的に弁護士サービスを進化させていきたいと考えています。例えば4年後に、弁護士登録数を2人に1人は弁護士ドットコムに登録しているというような状態にまで持っていきたいと思っています。さらに、相談件数100万件も目指しています。

また、弁護士初のIPOを目指し、弁護士という資格の新しい可能性を私の生き様の中で感じてもらえたらいいなと思っています(※2014年12月11日、東京証券取引所マザーズに上場)。弁護士というのは弁護士になるためのパスポートではなくて、その資格、知識を得てさらに世の中に羽ばたくための一つの資格であるということを私自身が示せれば、弁護士業界に対する貢献にもなるかもしれません。

経歴:
オーセンスグループ株式会社 代表取締役社長。1975年 米国イリノイ州エバンストン市に生まれる。1978年 家族とともに帰国。神奈川県藤沢市に居住。中学校の時に家族とともにドイツに移住。高校の時は単身帰国し、神奈川県立湘南高校に進学、1994年卒業。生活費は仕送りとアルバイトで賄っていた。1998年 慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。1999年 旧司法試験に合格(第54期司法修習生)。2001年 第二東京弁護士会に登録。2001年 アンダーソン・毛利法律事務所(現、アンダーソン・毛利・友常法律事務所)に入所。M&Aや金融など企業法務を専門としていたが、2005年に退所し、独立して法律事務所オーセンスを開業する。2005年 オーセンスグループ株式会社(現・弁護士ドットコム株式会社)を設立。現在、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」、税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」を運営。