起業・スタートアップのための起業家講義
LINEの挑戦<後半>

掲載:2020/09/25

講師:森川 亮(LINE株式会社 代表取締役社長)
2013年5月13日講演

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

LINEの組織の考え方

ここからは組織の話をします。

1)敢えて事業計画を立てない ~変化に柔軟な組織文化に

なぜ僕たちは敢えて計画を立てないかと言うと、物事は計画通りにいかないからなんです。人は計画を立てるのは結構好きで、計画を立てるのに結構な時間をかけて、計画が変わると変更するのに時間をかけて…と。そうすると、本当に計画を実行する時間がなくなっちゃうんですよね。実行にどれだけ時間をかけられるのかなと言うところが本質だと思っているのが一つです。特に、計画が好きな人は計画通りにいかないとストレスがたまるんですよね。計画変わっただけで、社長は朝令暮改だとか、信念がないとか言われたりもします。なので計画は敢えて立てませんし、立てたとしても計画はありませんと言います。変化に柔軟な組織文化を作ることに意味があると思っています。

2)徹底したアジャイル型 ~デザイン、開発を同時に進行。いち早くプロダクトを投入

徹底したアジャイル型とはどういうことかと言うと、まずは、ほとんど会議がありません。また、会議がないというのはどういうことかと言うと、議論をあまりしません。リーダーを決めたら、リーダーが徹底した早いスピードで動いて、そこに人がついていくというスタイルです。ついていけない人は置いていきます。これまでの日本の傾向としては、遅い人に合わせていたために全体のスピードが遅くなっていました。僕たちは一番早い人に合わせるんです。その分、早いスピードが維持できるのです。また、文章は作りません。文章を書くと遅くなるので、その代わりに絵をかきます。コンセプトは事業責任者と企画者が決めますが、プロジェクトリーダーはデザイナーが多く、日中に決まったコンセプトに対してデザイナーが徹夜で絵を描くんですよ。その絵を見ていいなと思ったら、それを開発チームに回すということを繰り返しています。これによって、一つのプロジェクトを形にするのに3分の1くらいの時間で作れているのではないかと思います。

ですので、フルスペックではなく、スモールスペックで市場に投入することを重視しています。おそらく議論して計画を作ってじっくり開発すると、その間に自分たちがやろうとしていたことがどんどん世の中に出てしまうんです。そうすると作っている側としては不安なので、差別化だとかうちの強みだとかいろいろと理由をつけて、いろんなものを付け足そうとするんですよね。受け手側にしたら、いろいろなものがついているとよくわからないし、面倒くさい。一番大事なことはシンプルでわかりやすいこと、そこに価値を集中させることなんじゃないかと思うわけです。僕たちはまずはコンセプトを決めたら、そのコンセプトを具現化するためにだいぶそぎ落とすと。これを削ったらその価値がなくなるというところまでそぎ落として、徹底的に速いスピードでやる。その中でわかりやすくいいものができる。それが僕たちのやり方です。

3)投資を集中 ~様々な方向から可能性を探るが、攻め入るときは一点集中

プロダクトもそうですし、事業もそうです。いろんなものを片っ端からやるというよりは、とにかく勝てるものに集中すること。顕在化したニーズを一個ずつ潰すことで事業が拡大できていた時代は終わり、今や顕在化したニーズというのは価格を安くすること以外にはないんじゃないかなと思っています。一方で、顕在化していないニーズをいろいろと試すのはリスクが非常に高く、おそらくほとんどが失敗するのではないかと思います。それであれば、顕在化していない何か一つのニーズに集中をすることで、失敗してもリスクが少なくなるし、また、失敗から成功を磨き上げていくことができるので、早いスピードで成功できるんです。さらに言うと、シンプルで本当に価値が高いものだけに集中したほうがいいと思っています。僕たちは点で1個ずつNo.1を作っていくことを目指しています。それがいずれは一つの大きなNo.1になっていくと思って進めています。

そうやって速いスピードで世に出して、サービスリリース後にデータを見て、かなり早い段階で改善をしていっています。議論したり専門家の意見を聞いたりするより、反応を見ながらユーザーにアジャストして、とにかく高速でPDCAを回していく方がおそらくニーズは満たせるだろうと、そういうやり方を取っているということです。

LINEのこれから ~市場変化=チャンス

変化は当たり前の時代なのだと思っています。人類の歴史を見ても常に変化は繰り返され、変化に対応できた者が生き残ってきました。ですので、この変化をポジティブにとらえてチャンスに変えていくことが経営戦略上重要なのかなと思います。

今後、LINEがどんなふうに考えているのか、数字の計画はありませんが、イメージはあります。キャッチフレーズとしては「生活のインフラになります」と言っていますが、それはどちらかと言うと空気みたいなものです。意識しなくても自分のそばにあって、生活にとって便利だということ。スマートフォンを使うのであればLINEを使う、LINEを使えば、より便利に豊かになるというものをこれから準備していこうと思っています。

経歴:
森川 亮(LINE株式会社 代表取締役社長)
1967年神奈川県生まれ。1989年に筑波大学を卒業。日本テレビ放送網株式会社に入社。コンピュータシステム部門に配属され、ネットや衛星放送等の新規事業立ち上げに携わる。その後、ソニー株式会社を経て、2003年にハンゲームジャパン(後にNHN JAPAN株式会社、現LINE株式会社)に入社し、07年に代表取役社長に就任。