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起業・スタートアップのための起業家講義
ソフトバンク 孫正義氏<前半>インフラにおける新しい挑戦

掲載:2020/10/02

孫正義氏(ソフトバンク株式会社代表取締役社長)
1999年12月講演

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

ソフトバンクグループは今から10年後には、1兆、2兆、10兆…、と数えていくことになるでしょう。豆腐屋が豆腐を1丁、2丁、10丁と数える「豆腐屋の心意気」の世界に来たなということです。このインターネットの世界で、世界一になりたいと思っているわけです。

「自分が命をかけて生きていけるテーマを見つけることこそ、人生の最重要 課題で、それが見つかれば後は自然に流れがついてくる」と言う孫正義氏。 19歳で自分の人生50年計画を考え、ソフトバンクを立ち上げ、いまや文 字通りインターネット業界では世界一のポジションまで上りつめた孫氏 に、その成功の秘訣とこれからの展望についてお聞きします。圧倒されるようなパワーとユニークさの源泉に迫っていきましょう。

幼少期に植え付けられた、理屈抜きの根拠のない自信

僕は小学校の4、5年生ぐらいの時からいつか必ずデカいことをやってみせる、やれるんだと思っていたんです。それを疑ったことがないんですね。それは恐らく親父の影響です。まだ小学校に入るか入らないかぐらいの時から、親父がいつも「お前は日本一の男になる」と顔を見るたびに言うわけです。一種の洗脳教育じゃないですけれど、小さい時からずーっとこう言われていますから、僕は小さい時から理屈抜きに根拠のない自信があったわけですね。この根拠のない自信ほど、強いものはないのです。理屈はなくていいんです。なぜ自分が日本一になれるのかと、問わなくていいわけですから。

自分が一生を懸けてもいいと思えるものを、とことん突き詰める

もし、みなさんが会社を始めて、お客さんに何かものを売るというのは大変ですよね。お客さんに説明をして、買ってもらわなきゃいけないわけですから。みなさんは、どんなお客さんが一番説明をして説得するのが難しいと思いますか? 僕は一番説得するのが難しい相手は自分自身だということに気づきました。つまり5分とか1時間しか会わないお客さんには、少々まやかしを言ったって、屁理屈を言ったって、その場の勢いで100円か1000円のものは売れるかもしれません。でも自分自身は一生付き合っていかなきゃいけないわけですね。自分自身はごまかすのが一番難しいんです。だから自分自身を心底説得できたのなら、大概の人を説得できると思います。

だから僕は、新規事業考えたり、意思決定したりする時、「本当にこれをやるべきなのか?」「本当にこれは素晴らしい商品なのか?」「本当にこれは素晴らしいビジネスなのか?」「自分の一生を懸けるに値するものか?」と、あらゆる角度からとことん自分に問いかけてみるわけです。そしてもう間違いないと、命を捨ててもいいと信じられたら、自分を説得できたってことになります。そうなったら強いですよ、迷いがないですから。つまり僕が思うには、自分自身をとことん問い詰めてみて自分自身が、これ以上迷いないというところまで突き詰められたら、自分の仕事の半分以上は成功したということだと思うんです。

納得がいかないのなら、その時はやらないほうがいい。失敗しますから。あるいは途中でくじけますからね。これまでやってきたことを変えるというのは、コンピューターで言えばリセットボタン押すのと一緒です。一生懸命入力したデータがパアになる。これは効率が悪いですよね。ですから一回しかない一生を懸けられるテーマを自分が見つけられたらそれはもう幸せ。少々の苦難は乗り越えられるということです。それは、半分成功したのと一緒です。成功しなかったり、あるいは思っていたよりも遥かに小さな成功しかできないというのは、大概の人が最初の土俵選びが間違っているということなんです。

だから僕はアメリカから帰ってきて、ソフトバンクを始めるまでに1年半かけたんです。40ほど新しい事業を考えて、その中から何に絞るべきかを考えたわけですね。だから決めた時には迷いはゼロだったんです。僕が決めたのはデジタル情報革命というテーマでした。これが一回も変わってない本質なんですね。そこに賭けているから、仕事をしていても辛くないし、面白くてしょうがない、寝なくてもいい。そういう意味で悔いがないし、ある程度の博打もやれると。ゼロになったって、またやれるという自信と決意があるから、突っ込んでいけるわけですね。

人生の50か年計画と各ステージの役割

僕は50年というレンジで、人生計画を練りました。20代で業界に名乗りをあげる。30代で軍資金1000億円を現金で貯める。40代で一勝負かける。一勝負とはどのくらいかというと、ここで出てくるのが「豆腐の心意気」ですね。豆腐屋が豆腐を「1丁、2丁…」と数えるように、将来的には「1兆、2兆」という単位で事業をし、突っ込めるようなひと勝負をかけるというものです。そして、50代で完成させ、60代で継承する、というのが人生50か年計画です。

そのために一生を懸けられる新しい事業を考えたということです。よく新しい事業をベンチャービジネスとかニュービジネスとか言いますが、多くの場合は、それは単なる中小企業という場合が多いわけです。他でやっていることと同じ商品、サービスを頑張ってちょっとだけ安くしただけとかいうのは単なる中小企業なんです。ニュービジネスというのは何かしら新しい切り口があるものを指します。それが単なる新しい切り口ではなく、下手をすると全然花が咲かないかもしれないけれど、でもひょっとすると、100倍1000倍に化けるかもしれないというのをベンチャービジネスと言うのだと思います。ハイリスクだけどもハイリターンだと。これがベンチャービジネスですね。

自分はどこをやりたいのかということを、まず考えるべきですね。少なくとも僕は、自身のテーマであるベンチャラスな、ハイリスクでハイリターンなものをめがけたわけです。40ほど考えたテーマから絞り込んでいくための決定要因も25ほど考えました。それは儲かる仕事であること、50年間一度も迷わなく継続できるもの、日本一になれること、新しいこと、社会的に意義のあること。そういう要因を25ほど考え、最終的に選んだのがデジタル情報革命だったのです。

どのようにして事業資金を集めたか?

では、どうやって事業をスタートしたかということです。ビジネスプランはできたけれど、先立つもの、つまりお金がありませんでした。資本金の1千万円は九州の銀行で借りたのですが、会社を始めてすぐに使ってしまい、また1億円を借りることになりました。当時僕は24歳で、お客さんはほとんどない。月商は200万円。支店長は一応真面目に聞いてくれて、担保や僕の経験、商品などについて矢継ぎ早に質問してくるわけですね。ここで僕は、絶対に嘘は言わないと決めていたんです。だから僕は支店長の目を真っ直ぐ見て、

「お客さんはほとんどいません。日本で会社を始めたばかりだから経験なんて全くと言っていいぐらいありません。伝票の書き方も知らないんです。担保?そんなもの、会社始めたばかりだからないんです。そして、僕の一生の方針として人に保証人を頼むなんてありえません。まだ資金がないので商品だって仕入れられないんです。だから在庫もありません。これはもう本当の話です、信じてください」と。支店長、キョトンとしていました。「ただ1つだけ、もしこの私の事業への情熱と内容を聞いて、少しでも融資を考えていただけるんであれば、1つだけ条件があります。一番安い金利、プライムレートでしか私は借りません」と。

もうあまりの様子に、最初真面目な顔をして聞いていた支店長が、こいつはちょっとおかしいんじゃないかと、ついには笑い出しましたね。でも、ちょっとおかしすぎるから、何かあるかもしれない。この自信は何処から来るんだろうと。もしかしたら、隠れた何か凄いものがあるのかもしれないということで、自分で判断しないで本店まで上げてくれたんですね。

そして本店でも、もしかしたら何かあるかもしれないということで、取引先とかをあちこち聞いて回ったそうなんです。そうしたら、たまたまラッキーなことに、取引を始めたばかりの上新電機の社長が、「あいつは面白い男だよ。貸してやってくれ」と言ったそうなんです。そしてもう一人、シャープの佐々木専務が「あれは面白い男だよ。是非貸してやってくれ。必要ならば、自分が保証人になる。自分の家を担保に入れてやってもいい」と。僕は一年後に聞くまで、そんな話があったことを知らなかったです。本店の審査部も、「シャープの佐々木さんがあそこまで言うんだったら何かいいんじゃないの?」ということで、結局、仕入れのための運転資金を、保証もなし、担保もなしということで借りることができました。

まあ僕の場合はたまたまそういうラッキーなテーマを選んだということです。世の中が必要としているもの、皆が「あいつに頑張ってもらわないと、俺らも困る」というようなテーマを選ぶと、ラッキーな風が吹いてくる。最初はみんな何も持っていないんですよ。もの凄いエネルギーがあれば、お金を1円も持ってなくても、人に誇れる商品がまだなくても、経験なんてなくても構わないんです。今言ったように何とかなるんですね。

どのようにして最初のお客さんを見つけたか?

次にどのようにして最初のお客さんを見つけたのかお話ししましょう。最初にソフトを売りに上新電機の社長に会いに行った時、先ほどの銀行同様、全部正直に話をしました。「あなた以外にお客さんは1人もいません。まだあなたもお客さんではありませんが…。現在商品もありませんし、経験なんてそんなもの何処にもありません」と僕は言ったんです。さらに、「ソフトの仕入れに関しては、あなたのところの仕入れの責任者の方が詳しいでしょうし、安く仕入れられるでしょう」と。それなのに僕から買え、あなたの責任者のことはもう聞かない方がいい、今直接メーカーから仕入れているものをわざわざ我社を経由すると今までよりも高くなるし納期も遅くなると。でも今までの仕入れを全部切って、私から一本化して仕入れてくださいとお願いしたわけですね。「お前は何者だ?」ということになりますよね。

でもそこから僕が申し上げたのは、「でも考えてください。あなたのバイヤーは冷蔵庫も洗濯機も、パソコンのハードも周辺機器も仕入れなきゃいけない。そのうえでソフトも仕入れなきゃいけない。どんなに天才でも、全部の専門家になるのは無理ですよ。私はこれだけに命を懸けているんだ。パソコンのソフトしかやらないと、これだけ情熱を懸けて絞り込んだ男と、あなたの担当者、どちらが詳しくなりますか? 私はいつか必ず、あなたのところ以外のためにも仕入れます。ボリュームだって絶対うちの方が増えてその分だけ安くなります。納期だって、いずれは何千種類、何万種類のソフトの在庫が揃ったところを想像してみてください。5種類、10種類まとめたワンパックのダンボールで納品できるなど、いずれうちの方が構造的に納期は早くなるでしょう。これだけ情熱を持って命を張っている男を最初に発掘した親になったとしたら、こちらはどれだけ感謝すると思います? この感謝たるや、もの凄い財産になりますよ、そう思いませんか? 日本一になりたいと思いませんか? 日本一になるためには日本一のパートナーを先ず見つけましょうよ。私は今は何もありません。でも社長さん、あなたも最初は何にもなかったでしょう。あなたの20歳の時を思い出してください。私が今まさにそれだ」と。

そしたら最後には笑い出しましてね。「お前は面白いやっちゃ。若かりし頃を思い出したぞ。分かった、お前に賭けてやろう。もう今まで直接仕入れたやつは全部切る。お前一本にしてやる。その代わりお前途中で投げ出すなよ」と言って握手をしました。いきなり2千万円の仕入れです。1本残らず、我社以外からは入らないという、独占的供給権です。全く同じような理屈で、ものを供給してくれるほうの側は日本一のハドソンでした。日本一の販売店と日本一のメーカー、両方に対して独占権を取ったわけですね。新しい業界だったからこそ、色んな意味でラッキーな要素がありました。みなさんが考えているようなテーマがすべてそういうわけにはいかないとは思います。だけど、事の本質は一緒です。そうしたら、ベンチャーキャピタルなんて要らない。あって邪魔にはならないけれども、金なんて要らない。商品なんて要らない。経験なんて要らない。

一番難しいのは自分がそこまで恥も外聞も捨てられて、全然苦労とは思わないというような、命を張れるテーマを選ぶことができるか、しかもそれが将来、10年後、20年後、30年後、50年後も伸びていくようなものを選ばなくてはいけません。ですから重要順は、命投げられるテーマを見つけること。それが理念になり、ビジョンになり、戦略になって、最後に計画になる。この順序が最初に計画ありきで逆になる人が大半なんです。こんなの駄目ですよ。失敗します。魂の入ってない計画なんて出来ません。