• ホーム
  • 起業家講義
  • 起業・スタートアップのための起業家講義ソフトバンク 孫正義氏<後半>

起業・スタートアップのための起業家講義
ソフトバンク 孫正義氏<後半>インフラにおける新しい挑戦

掲載:2020/10/02

孫正義氏(ソフトバンク株式会社代表取締役社長)
1999年12月講演

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

理念、ビジョン、戦略

ソフトバンクにとっての理念は、テクノロジーを使って人々に幸せな社会を提供していきたいというものです。人間は知恵と知識、これが最大の財産です。この知恵と知識を1人でも多くの人に分かち合って、素晴らしい社会を作る。デジタル情報革命そのものです。これが僕の理念です。

ビジョンは全ての生活がインターネットでつながることです。当時はインターネットという言葉はありませんでした。でもコンピューターのネットワーク、今の言葉に直せばインターネットですが、全ての生活がインターネットでつながることがビジョンです。

そして戦略です。絞り込んだデジタル情報革命の中で圧倒的世界No.1になりたい。そのためにインターネットに集中することにしたのです。そして1つの製品や1つのビジネスラインに頼らないという「群戦略」を取ることにしました。リスキーなものをとは言いましたが、それでも確実に成功させるためにリスクヘッジするということです。

企業価値経営を行うことの本質

企業価値(創造)経営と言うことについてお話ししましょう。パソコン業界は10年間で200兆円市場になりました。インテル、マイクロソフト、コンパック、IBM、それらを全部入れて約200兆円です。インターネット市場は今20兆円です。これがそれぞれ今から倍になり、パソコンは少なくともあと10年くらいで400兆円ぐらいに、インターネットは同じか追い越すくらいの規模になるでしょう。従って20兆円が20倍の400兆円になる計算です。

時価総額でいうと、3年前に社員がたった15人だったヤフーがソニーを抜きました。もうあと1、2か月で松下を確実に抜きます。日本で一番時価総額の大きいNTT、2番目のトヨタ、これをアメリカのシスコが抜き、マイクロソフトは12年前に株式公開しましたが、そこから2000倍になりました。12年前の時価総額が200億円で今45兆円ですから、2000倍以上ですね。テーマが良ければ、こういう夢のようなことだってありえるということですね。

そして、インターネットの分野で、実はソフトバンクは世界最大の大株主になりました。インターネット業界全体の25%がソフトバンクグループです。で、そのソフトバンクグループに対して約30%株主です。ですから20兆円市場において、25%×30%=7.5%、1兆5千億円になりました。したがってこのインターネット産業の世界最大の大株主は、実はソフトバンクだと言うことであります。案外知られてない事実です。これを私は40%にして、世界一をダントツ世界一にしたいと思っています。もしかしたら10年以上かかるかもしれないし、15年かもしれない。でも必ず行くと僕は信じています。

デジタルサービスの世界で、世界一を目指す

人類20万年の歴史を振り返ってみると、農業革命があって農耕社会になり、産業革命があって工業社会になり、そして情報革命で情報社会になるという3つのステージしかなかったんです。この3つ目のステージの入り口の事業をやっているのでフォローの風が吹いています。その情報産業の中でも4つのステージがあります。その1番目は新聞やテレビ、ラジオといったアナログの情報テクノロジーです。次がその道具を使ってサービスを提供する新聞社やテレビ局、ラジオ局、電話局などです。この2つはアナログの世界です。そして次にデジタルの道具が出てきました。マイクロソフトやインテル、シスコ、これらは道具屋さんです。次に出てきたデジタルのサービス屋さんがヤフーであり、アメリカンオンラインでありイーベイやアマゾン・ドットコム、イートレードなどです。

私の興味は最初からこの4番目で、4番目以外は興味がありませんでしたし、ここで世界一になりたいというのが僕の願いです。その4番目のステージでは、世界一の大株主にもうなりました。ここからぶっちぎりにいきたいということです。

インターネット業界を牽引するための「群戦略」とは

インターネットの特徴として「ゼロ」と「無限大」というものがあります。タイムラグがゼロ、情報の劣化がゼロ、変動費がゼロ。そして、無限のユーザー、無限の切り口、無限のコミュニティ。このゼロと無限大、両方の特質を一番良く理解して、それをビジネスモデルにまで落とし込めた人は成功するでしょう。だから僕はワンカンパニーでは限界があると考えていて、ウェブ型組織を目指しているんです。特にインターネット業界は変化が激しく、ジャンルの幅が広く、各国にまたがっているので、取るべき戦略は群戦略であると考えています。

ソフトバンクは事業会社として始まり、それが事業持株会社になりました。そして純粋持株会社へと変わろうとしています。こうして世界最大の株主になり、インターネット財閥を構成するというのが僕の狙いです。ソフトバンクは100%の事業体で、自分で始めました。そこから買収でいくつか加えていき、それらの株を51%以上持つという形で進めてきました。これからは51%以上は要らない、2割か3割を沢山持ち、ブランドも統一しないでいいと思っています。こういう組織体を作ると勝手に伸びていくというのが僕の考えです。最終的にソフトバンクは、本体は純粋な持株会社になって真空状態になり、その下にそれぞれの事業の持株会社があって、さらにその下に事業会社があるような状態になります。

先ほど、40代で一勝負して、50代である程度形を完成させ、60代で継承すると言いましたが、これらのステージの中で1番難しいのは「継承」です。創業者が頑張った時はだいたい上手く行くんです。2代目が継ぐ時が危ない。3代目になったらもう目もあてられないというものですよね。僕はどういう形で誰に継がせるかを19歳の時からずっと考えていたのですが、ついに答えが出たんです。誰にも継がせないと。つまり継がなくても良い組織体を作ると。本体は真空状態にしてサーバー1台があるだけです。そうすると300年、行ける。その見えてきた形にぐっと今からもっていこうと思っています。

企業価値を改めて考える

改めて、企業価値とは何かというと、将来のキャッシュフローの現在価値の合計です。そして時価総額とは、企業価値全体から負債を差し引いたものです。MVAとはこの時価総額から株主資本を引いたもの、つまり企業付加価値(Market Value Added)です。このMVAを最大限に伸ばして行くと。つまり最初の資本である株主資本から、どの程度価値を伸ばしたかということが、その会社が頑張って増やした価値ということになります。だから、売上や経常利益、その他も全部意味がないことです。大事なのは会社の価値をどれだけ伸ばすかということなんです。

そういう僕なりの物差しでいくと、実はソフトバンクはMVA /Equityのランキングで、理論値ではもう日本で3番になりました。そしてDelta MVA/Equityにおいては、理論値でも実際の数字でも2番というところまで来ました。一年間で伸ばしたMVAのランキングで言えば、日本で2番です。もうじき1番になりますから見ていてください。時間の問題です。

ということで、ソフトバンクの企業価値は、我がグループのそれぞれの企業価値の合計です。ソフトバンクの本業はその総合計の価値を最大限に高めていくことです。しかもそれがデジタル情報産業に集中し特化しているのです。既に上場済のものもあれば、未上場のものもあります。つまり、現在の時価総額よりも本質的価値はもっと大きいということです。ソフトバンクグループのインターネットカンパニーは全部で100社を超えています。今から10年後には1兆、2兆、10兆と数えていくことになるでしょう。最初の「豆腐屋の心意気」の世界に来たなということです。この世界で、世界一になりたいというふうに思っているわけです。

経歴:
孫 正義 氏(ソフトバンク株式会社代表取締役社長)
1957年佐賀県鳥栖市生まれ。74年に渡米。カリフォルニア大学バークレー在学中に「音声装置付き他国語翻訳機」を発明し、シャープと契約する。80年同大学を卒業する。81年株式会社ソフトバンク設立。代表取締役に就任。94年には店頭公開を果たす。現在、デジタル情報サービス産業のリーディングカンパニーとして邁進中。
※経歴は講義時のものです。