FX初心者向け入門・始め方と口座比較

FX入門〜初心者におすすめ!円と米ドルの特徴と比較 、アノマリー

円の特徴概要

それでは次の「ABSの今井雅人流初心者向けFX入門・始め方と口座比較」講義では、入門者から脱初心者を目指す方にまでおすすめできる主要通貨を比較しながらそれぞれの特徴をみていきましょう。

 

まずは、円からです。日本は、米国、中国に続いて世界第3位のGDPを有する国です。上述のように中国がいろいろな規制がある共産主義国であることを考慮すると、円はアジアを代表する通貨と言えるでしょう。

 

中国を含むアジア諸国との貿易も盛んで、関係も密であるため、お互いに経済や政治問題が波及する傾向があります。また、地政学的な観点からは、共産主義国家という異なる政治信条を持つ北朝鮮や中国の動向は、円に大きな影響を与えます。2017年の夏の北朝鮮のミサイル発射問題が米ドル/円相場に影響を与えたことは、FX初心者のみなさんでも、記憶に新しいことでしょう。

 

そして、リスクオフ相場になると起きるのが「有事の円高」です。CIAによるデータでは2019年こそドイツに次ぐ2位でしたが、長年に渡って世界最大の経済収支黒字国という地位を築いてきた日本の通貨である円は安全通貨として買われ、円高となる傾向があります。反対に、リスクオン相場になると売られることとなります。

 

円高の際の為替介入が円の大きな特徴

 

しかし、貿易立国である日本にとって、円高は輸出の減少と貿易黒字の減少につながるので歓迎されません。そこで度々実施されてきたのが日本銀行と財務省(実際は財務省が決定し、日銀が執行する)による為替介入です。市場に関与しないことを基本としている米国の財務省などと比較すると、両者は外為市場へより積極的に関与します。特に円高が行き過ぎると介入を行なうのが、長年の伝統となっていました。

 

近年では直接的な為替介入は見られませんが、市場への強いメッセージを放つことにより相場を動かすという間接的な介入は、変わらず行われています。2013年春の日銀政策決定会合で、黒田日銀総裁が異次元規模の量的・質的金融緩和を行うと発表し、その後大きく円安が進みました。いわゆる「黒田バズーカ」で、株式投資家だけでなくFX投資家も、良くも悪くも、大きな影響を受けたことでしょう。

 

その後も円安進行を狙ったと思われる同様なメッセージは、何回か発表されています。こうした政府による市場介入により、変動、特に円安、が引き起こされることが円の特質といっても、過言ではありません。FX入門者や初心者の方は是非覚えておいてください。

 

3月に円高、4月に円安というアノマリー

 

最後に、季節的な要因について触れておきましょう。日本の会計年度は3月のため、毎年3月末になると日本企業の資金の本国送還が行われます。これは外貨を売って円を買うことになるため、円高要因となります。レパトリエーション(レパトリ)と呼ばれるものです。

 

反対に、これに乗じる投機筋がポジションを手仕舞いすることと、新年度から日本の機関投資家による新たな海外投資が始まるため、4月以降は円安に振れる傾向もあるようです。

 

事実、2018年においても3月に105円を割った米ドル円相場が4月には109円台まで回復、2019年には2月末の112円台からが3月には110円を割り、4月には再び112円に戻しました。この3月のレパトリーによる円高とその反動による4月の円安についても、FX入門者や初心者が頭に入れておいても損はないでしょう。

 

米ドルの特徴概要

 

次に、米ドルについて見てみましょう。米国はご存知の通り、軍事・政治・経済などあらゆる分野で世界のリーダーとされる国家です。経済面からのみ比較しても、世界最大のGDPを誇り、多くの国にとって最大の貿易国であり、米ドルの価値の変化はあらゆる国へ大きな影響を与えることとなります。

 

国際取引における決済通貨として広く使われ、繰り返しになりますが、世界の基軸通貨となっています。米ドルが関係する取引は9割弱とFX全体のほとんどを占めており、入門者や初心者が中心である取引参加者のみなさんにとっても、最も重要な外貨といえるでしょう。

 

取引の参加者であるドルペッグ制とは

 

この基軸通貨であることから存在する他の外貨には見られない特質が、ドルペッグ制です。ペッグとは英語で釘、釘を打つという意味であり、そこから転じてドルペッグ制とは、自国の通貨を米ドルに連動させることを指します。自国の通貨相場が極端に不安定になるのを避けることが目的です。主な採用国としては、中国(香港を含む)やサウジアラビアなどの産油国が挙げられます。

 

基軸通貨としての信頼の喪失と有事のドル高から円高への変化

 

次にその特徴として想起されるのが、先にも触れた「有事のドル高です。これは、世界で戦争、石油供給不安など何か大きなイベントが起きた時は、ドルが買われるというものです。米国は世界で最も政情が安定しており、世界中で何かがおきても米国に影響が及ぶことはないと思われていたからです。

 

しかし、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件でアメリカ本土が直接攻撃を受けてからは、事情が変わってきています。事件が起きる地域にもよりますが、日本やスイスが一番安全だとされ、FX初心者の方にもおなじみの有事の円高という言葉が生まれたわけです。

 

また、通貨自体への信頼性も落ち、基軸通貨としての地位は少しずつ脅かされています。これも繰り返しになりますが、投資家はリスクヘッジのため、ユーロなど他通貨の保有を増やすようになりました

 

金価格と米ドル価格は逆相関、12月には米ドル高!

 

他にその価値を見るのに有用とされるのが、金価格です。金と米ドルには、歴史的に強い逆相関があります

 

通常は、政治経済などの問題が持ち上がった際にはリスクオフ(リスク回避)となり、安全資産である金が買われ、米ドルが売られます。地政学リスクが持ち上がった際にはその傾向は特に強いと言っても、過言ではないでしょう

 

反対に、そうした問題が落ち着いた際にはリスクオンとなり、金が売られ、米ドルが買われることとなります。

 

最後に季節的要因としては、年度末に当たる12月には海外利益の資金還流が行われるので、概して米ドル高となる傾向があるのでFX入門者や初心者の方は頭の片隅にでもいれておいてください。

松田遼司の解説

 

この10番目の記事では、今井先生は円と米ドルの特徴やアノマリーについて解説されています。

 

まずは円について、有事の円高について述べられていますが、残念ながら現在は死語になりつつあります。日本経済の地位の低下により、貿易黒字から赤字体質に変わりつつあり、有事のドル高が復活しています。ウクライナ紛争後にも、下図のSBIFXの米ドル/円の月足チャートの右端にあるように、開戦時の2月は十字線ですが、3月には5円以上の円安ドル高が進んでいます。そして4月28日のブルームバーグの記事にあるように日銀が毎日の指値オペを行い金融政策に変化がないと分かると、なんと誰も予想もできなかった20年ぶりの130円台に突入しました。2ヶ月で115円から130円へと15円もの円安が進んだのです。鈴木財務相の円安は行き過ぎ発言よりも、4月25日の日経の記事にあるように安倍元首相の円安は日本経済に良いという発言に反応しなかった相場感のなさが悔やまれます。

米ドル円月足 出典:SBIFX

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

円高の際の為替介入も黒田総裁就任以降、全く行われていません。FRBの利上げ発言に対して金利の現状維持発言に加え、国債の指値オペを初めて実施したことで、3月28日には一気に3円以上の円安ドル高となり、125円をつけました。インフレ懸念はないと言い切っており、庶民が困るインフレよりも富裕層が困る株安には向かわせたくないようです。民主党政権時代の70円台の円高など全く想像もできない状況であり、市場介入は130円に達した際の円安介入となりそうです。

 

そして3月の期末による日本企業の海外からの資金流入によるレパトリも、黒田総裁のマイナス金利政策に比べれば影響力はなく、2020年3月は非常に長い髭の十字線、2021年3月は上髭を含めると10円以上の円安となっており、アノマリーとして機能しなくなっています

 

米ドルについては有事のドル高が復活し、12月のレパトリによるドル高も2021年には起きたことが上図から読み取れます。ドルインデックスが上昇を続けており、やはり、米ドルこそが有事の際に世界中が欲しがる基軸通貨であるということが証明されました。米国の国際競争力がが落ちていると言われて久しいですが、中国は共産主義国家ですし、民主主義陣営では消去法ではやはり1番ということなのでしょう。

 

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