海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
アルファベット(Alphabet)

シニア・女性・学生の起業でも注目のスタートアップ

掲載:2020/8/14

最終更新日:2020/08/14

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はグーグル(Google)とその親会社であるアルファベット(Alphabet)について解説していきます。まずは、子会社にあたるグーグル(Google)について見ていきましょう。

Google(グーグル)の登場によって検索エンジンの品質が一気に向上した!

Google(グーグル)は、1996年にスタンフォード大学の博士課程でロボット検索エンジンについての研究を行っていたラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが、該当サイトにリンクを張っているページの品質と数によって検索順位を決定するページランクという概念を考えついたことに由来します。

当時は、ロボット検索エンジン会社としてはInfoseek(以下インフォシーク)やExcite(以下エキサイト)が主流でした。しかし、検索順位を検索されたワードの表示回数で決定していたため、その順位は正確とは言い難かったのです。そのため、YahooやMSNが採用していた、検索結果を手動でサーファーが集めてきて登録していくというディレクトリー検索エンジン(エンターテインメント>音楽>洋楽>ロック>ハードロック>クイーンというようにクリックで目的のサイトまでたどり着く)が、米国においても人気を集めていました。

上記のようにロボット検索エンジンにとっては不利な環境下でしたが、ページランクの概念が評価され、Googleは1998年にサン・マイクロシステムズの共同創業者から10万ドルの融資を受け、SRI Internationalのあるメンローパークに設立されました。同年には、Amazonの創業者ジェフ・ベゾスなどのエンジェル投資家から、100万ドルの融資を受けました。

1999年には現在のパロアルトに本社を移転、セコイア・キャピタルなどから2500万ドルの出資を獲得すると、一気に事業を拡大していきます。

余談ですが、セコイアなどからの大口出資を受ける前にGoogleはエキサイトに100万ドルでエグジットを提案したそうですが、エキサイトはその申し出を断ったそうです。

その後のグーグルの躍進の結果、エキサイトは2001年に経営破綻、会社を売却することとなりました。インフォシークやエキサイトは日本ではまだ運営されていますが、米国ではもう存在していません

こうした将来性を見る目を持つことがいかに重要かということを、起業家・アントレプレナーを目指す方は、頭の中に刻み込んでおいてください!

グーグルの躍進の理由は検索連動型広告への参入!

検索エンジンとしての優秀さを認められたグーグルでしたが、ロボット検索エンジンの提供というビジネスモデルでは、ポータルの数×提供金額=売上となり、収益はたかがしれています。

そこでGoogleは、2000年にリスティング広告とも呼ばれる検索連動型広告に進出、この結果売上と利益が急増していくことになります。

ここで、パソコンでGoogleのウェブサイトを開き、何でもよいので、好きなキーワードを検索してみてください。
すると、トップページを含めた全てのページにおいて、検索結果(Webサイト)の中に「広告」と表示されているものがあることに気づかれると思います。これが検索連動型広告です。

検索連動型広告は、実はOverture(旧GoTo.com)という会社が発明したものでし。2000年当時は、Yahooなどの有力ポータルに検索連動型広告を提供していたOvertureが、グーグルの売上を上回っていました。その後グーグルが著作権を侵害しているとOvertureが訴訟を起こしました。しかし、OvertureがYahoo!に買収されると、Yahoo!は2004年にグーグル株と引換えに、グーグルに永久ライセンスを与えました。

その結果グーグルは、現在でも主要な収入源である検索連動型広告を、続けることができるようになったのです。エキサイトがエグジットを断った件といい、運がやはり非常に重要だということがみなさんにもご理解いただけたでしょう。そして、成長し続ける収益モデルを持つことが必須だということも、覚えておいてください!

当初ペイジとブリンは、検索結果の質を重視するあまり、検索連動型広告への進出には乗り気ではありませんでした。そのこだわりを捨てていなかったならば、今のグーグルの成功はなかったでしょう。

そして同年グーグルはIPOを果たし、時価総額は230億ドル、約2500億円になりました。今考えると、安すぎです。この時グーグル株を買っておくべきでしたね!

Google(グーグル)の他分野への参入は2004年のIPOを契機に始まった!

グーグルは2004年に検索連動型広告の躍進によりIPOを果たしました。まず、同年IPOの前に、Gmailをローンチしました。これについてはみなさんには説明する必要もないほど、現在では広く普及していますよね。

続いて同年には、人工衛星からや航空撮影の画像をデータベース化していた企業を買収、Googleマップ、Google Earthとして公開しました。IPOによる巨額の資金により新サービスを展開し始めたことが分かります。

単なるお金持ちになるためにIPOを行ったわけではなく、本来目指していた、世の中を良くしていくというビジョンのために行ったということの証明だといえるでしょう。

起業家・アントレプレナーを目標とする方にも、将来ご自分が本当に行いたい事業と、収益のために行う事業とを分けて考える必要があると、ブリンとグーグルから学んで頂きたいと思います。

詳細は後述で説明しますが、ブリンとアルファベットにとっては、アンメット・メディカルニーズなど現在まだ達成されていない未来の技術により世の中をよくしてこうというのが前者であり、検索連動型広告が後者です。

2006年にはYouTubeを、2009年にはモバイル広告企業のAdMobを買収し、成長が見込まれる動画やモバイルへの対応を進めていきました。当時の日本では若い世代はググるという言葉を使い始めていましたが、タイピングに慣れていない日本人は未だにYahoo!のディレクトリーを使用しており、Yahoo!がポータルとしてもトップの座を保持していました。

2011年にはモトローラ買収によりハードウェア分野へ進出し、Appleに対抗!

その後もグーグルは検索連動型広告で順調に売上・利益を伸ばしていきますが、2011年にはライブ・ストリーミング・サービスのYouTube Live、ストリーミング音楽サービスのGoogle Music、SNSのGoogle+という新サービスを次々に発表していきます。さらに、携帯端末会社のモトローラ・モビリティを買収し、携帯電話事業に参入を果たしました。

2013年にCalicoというヘルスケア子会社を設立します。そして2014年にはスーパーコンピュータを遥かに凌ぐと最近話題となった量子コンピュータ事業を開始、AI事業やロボット事業を行う会社も買収していきました。

こうしたヘルスケア、モバイル、量子コンピュータ、AIなどの様々な事業への進出により、ホールディング会社設立が必要となり、2015年にアルファベット(Alphabet)が設立されました。グーグルはインターネットを担当する子会社となりました。創業者のペイジはアルファベットのCEOとなり、インド系アメリカ人のピチャイ氏がグーグルのCEOとなりました。

このようにグーグルは、世の中をもっとよくする、人々の生活を便利にしていくという明確なビジョンのもとに行動してきているわけです。起業・スタートアップをお考えの方も、まずはビジョンについて決定することを第一に行うようにしてください。

Gmailにより、フリーメールが会社メールと同程度の機能をもつようになりました。世界中どこにいても、Googleマップを使えば迷うことなく、レストランや観光地などの目的地にたどり着くことが出来ます。アンドロイド携帯の参入によりiPhoneの独占は崩れ、競争によりスマホの機能はどんどん進化しています。

SRI International同様に、グーグルが存在しなかったら、今の私達の便利な生活は実現できていなかったわけです。

そして、グーグルはその事業の根幹である検索エンジンについても改良を加え続け、人々の生活を豊かなものにしています。日本においてはまだ一つの分野でしか実現されていないので理解されていない方がほとんどだと思います。後述でこの検索エンジンの機能進化による人々のQOLの向上について解説します。

グーグルの検索エンジン事業におけるMissionとE-A-T、YMYLとは?

Googleの検索エンジン事業におけるMissionとは、有益で関連性の高い検索結果の提供であり、それは創業時と変わっていません。

しかし、1996年に考案されたページランクに変わり、2015年に発表されたSearch Quality Evaluator Guidelines(検索品質評価ガイドライン )の中で初めて E-A-TとYMYLという概念が導入されました。

Search Quality Evaluator Guidelinesはその後2018年6月20日、2019年5月16日の2度アップデートされています。

ページランクとは、該当サイトへの被リンクの数と被リンクの品質によって検索順位が決定されるという考え方です。

それに対してE-A-Tとは、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)からなる造語です。該当分野における、権威のある専門家が書いた、論文などから引用された信頼性の高い情報も併せ持つサイトが上位表示されるべき、という概念です。

一言であらわすと、高品質のサイトが上位にランクされるべきということです。詳細はサクラサクラボの記事を御覧ください。

YMYLとは、YOUR MONEY YOUR LIFEの略であり、医療、健康、政治、法律、投資、ローン、財務アドバイスなど、あなたのお金や人生、将来の幸福、健康、財務の安定性に影響を与える分野を指します。

E-A-TとYMYLの米国と日本における現状は?

米国においてはYMYL分野におけるE-A-Tが既に実装されており、品質の高いサイトがトップページを占めています。

残念ながら日本においては、E-A-Tの導入が遅れています

その理由としては、

  • 英語など欧米で用いられるアルファベットではなく漢字という独特の言語を使っている
  • 世界最大の人口を有する中国がグーグルの閲覧を禁止しているため、世界で漢字を使用する国家は日本と台湾しかない

という現状が理由と推測されます。

しかし、みなさんならご存知でしょうが、2016年に医師ではない素人が医療記事を書くというスキャンダルが起き、テレビなどマスコミでも大きく報道されました。

この件はグーグル本社にも届き、大きく問題視されました。世の中をよくするというGoogleの目標と正反対のことが起きたためです。その結果、日本でも医療分野に限り、2017年12月にE-A-Tが実装されました。

E-A-Tの導入により、日本においても医療分野のみにおいては、素人が書いた低品質な記事は100位以下の圏外に追いやられ、現在では医療論文、病院のサイト、医師が書いたブログなどが上位に表示されるようになりました。

それまでと比較すると、利便性は天と地ほどの差があります。

例えば、筆者は最近右の上腕部に痛みがあったのですが、上腕筋 痛みとグーグルで検索することでトップに表示された「のざと診療所」という大阪府の医院のウェブサイトの該当ページにいきつきました。そして、自分の障害が頸肩腕障害というものであること、さらに症状についても、病院に行かずに調べることができました。2017年12月以前には全く考えられなかったことです。

残念ながら医療分野以外では専門家以外の素人が書き、それをコピペしたキュレーションサイトが横行しているのが、日本の検索結果の現状です。

しかしこれは、グーグルが望んでいる、ユーザーにとって最良な検索結果が表示される世界とは、全く逆の状況です。

繰り返しになりますが、グーグルが望んでいるのは人々の幸福であり、ユーザーのためになる検索結果です。

将来の起業家・アントレプレナーを志すみなさんも、お金儲けよりも世の中の役立つという理念を掲げるべきだということを、是非とも忘れないで頂きたいです。

グーグルの本体であるアルファベットとは?

グーグルは2004年に公開したGoogleアースやGoogleマップを皮切りに、自動運転、ヘルスケア、モスマートホーム、携帯電話とそのソフトウェア、量子コンピュータ、AIなどの様々な事業への進出していきました。そしてホールディング会社設立が必要となり、2015年にアルファベットが設立されたわけです。

創業者のペイジ氏はアルファベットのCEOとなり、インド系アメリカ人のピチャイ氏がグーグルのCEOとなったと上述しました。

こうした中、2019年12月3日にグーグルの共同創業者でありアルファベットのCEOを務めていたペイジ氏、社長を務めていたブリン氏が共に辞任し、ピチャイ氏がCEOに就くというニュースがありました。創業者の二人と、長く二人を社長として支えていたシュミット氏は取締役会には残りますが、これを機にアルファベットは新たな時代に入るといえるでしょう。

アルファベットは2016年には一時資産価値が、世界一となりました。現在でも、世界で最も成功をおさめている会社の一つです。アップル、フェイスブック、アマゾンと共にGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazonの頭字語)として、米国株式市場に君臨しています。その収益源は検索連動型広告であり、最大の子会社はもちろん検索連動型広告を統括しているGoogleです。しかし、その収益を元に、様々な事業に投資をしているわけです。

アルファベットの主要子会社とその概要

その主な子会社と概要は、以下のとおりです。

  1. Calico: 健康と長寿にフォーカスして老化を抑制する医薬品やバイオテクノロジー製品を開発する。California Life Companyのそれぞれ最初の2文字からなる頭字語が会社名となっている。
  2. DeepMind: イギリスの同名の人工知能企業を買収した子会社。どのように人間と同じ手法でビデオゲームをプレーするかという、人間の脳機能と類似したニューラルネットワークを開発。2016年には、コンピュータ囲碁プログラム「AlphaGo(アルファ碁)」が、囲碁世界タイトル優勝記録で歴代2位である韓国の棋士を破り、そのレベルの高さが話題となった。
  3. GV: 以前はグーグル・ベンチャーズとして知られていたCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)子会社。インターネットやソフトウェア、ヘルスケアやライフサイエンス、AIなどアルファベットが子会社を傘下に持つ様々な分野のスタートアップ企業に投資を行っている。
  4. Glass: AR(コンピュータにより作成された人工環境である仮想現実VR=バーチャル・リアリティを進化させ、現実の一部を付加・削除させた情報提示を行う)ヘッドマウントディスプレイ(HMD)技術を開発。ハンズフリーで情報をゴーグルに表示、言語音声コマンドでインターネットを使用できるGoogle Glassとして製品化された。X社のプロジェクトの一つ。
  5. Jigsaw: オンライン検閲の阻止、デジタル攻撃の軽減、オンラインでのハラスメントの撲滅などに必要な技術を構築している社名は世界を課題が山積みする複雑なパズルとして捉え、名付けられた。
  6. Nest Labs: プログラムができ、学習力を持ち、センサーで動き、Wi-fiで動くことが特徴のホームオートメーション(スマートホーム)市場用の家電機器を製造する。2014年に買収。スマートスピーカー、監視カメラ、空調・気温管理システム、煙探知機、ホームセキュリティシステムなどを開発してきた。
  7. Loon: 高高度気球を用いた移動体通信システムであるProject Loon(プロジェクト・ルーン)を推進。成層圏に打ち上げられた気球に搭載された基地局により、通信網の整備されていない地域の人々がインターネット接続出来ることを目指している。X社のプロジェクトの一つ。
  8. Wing垂直離陸機によるドローン宅配便計画。ヘリコプターに似たマルチコプターを使用する競合他社の計画よりも、広いエリアをカバーできる。X社のプロジェクトの一つ。
  9. X: 上記のGlass、Loon、Wingの他にも自動運転技術を搭載した車、Siriのような音声認識技術空中水力発電、糖尿病患者が血糖値を常時モニタリングできるコンタクトレンズなど様々な技術に取り組んでいる。
  10. Verily: ヘルスケア分野の子会社。世界中の健康のデータを有効活用することで人々を幸せにすることを目標に掲げているda vinchiの競合として以前に紹介した手術用ロボット開発のVerb SurgicalはこのVerilyの子会社(現在は売却を検討中)。
  11. Waymo: 自動運転分野の子会社。世界で初めて2012年から自動運転車の公道での実験走行開始している。AIを使用したソフトウェアで世界最先端を走っている。

いかがだったでしょうか?

このようにアルファベットはあらゆる分野で世界をよくしていこうというビジョンのもとに行動しているのです。

Google/Alphabet(アルファベット)は当初は本業関連の会社を買収してきた

Google/Alphabet(アルファベット)は、買収してきた企業の技術を用いて、シナジー効果を出しています。

Google(2015年以降はAlphabet)は、非常に多くの会社を買収してきています。その数は200以上に登ります。理由は、Google/Alphabet(アルファベット)が異業種にまでM&Aの対象領域を広げたためです。

当初買収していた企業は、写真アプリのPicasa(2004年)、日本でも誰もが知っている動画配信のYouTube(2006年)、アドネットワークと広告配信技術を持つダブルクリック(2007年)、検索エンジンのKaltix(2003年)、Metaweb(2010年)や商品検索のLike.com(2010年)など、本業のパソコンでのポータル事業と検索連動型広告の拡大に必要な会社でした。

起業を計画中である方もお使いであろうGoogle Maps関連では、地図解析のKeyhole(2004年)やWhere2(2004年)、渋滞情報のZipdash(2004年)、欧州の地図会社のEndoxon(2006年)、アメリカの航空写真を提供するImage America(2007年)などがあります。

次にはモバイルを重視し始めたため、モバイルOSを提供するアンドロイド(2005年)、現在はアプリの収益化などを行っているモバイル広告のAdMob(2009年)、さらにはモトローラの携帯基地局部門を切り離し携帯電話本体を製造・販売していたモトローラ・モビリティ(2011年)までを取得しました(現在は特許のみを残して売却)。

Microsoft Officeに対抗するため、ワードやスプレッドシート機能を持つ会社も統合しています。

レストラン・レビューのアメリカ版ミシュランであるザガート(2011年)やオンライン決済、オンラインセキュリティー、デジタルクーポン、電子メールなどの企業も複数買収されています。

ここまでは本業のポータルサイトを強化するための会社を吸収・統合してきているわけで、みなさんもなるほどと思われたことでしょう。

Google/Alphabet(アルファベット)のその後のM&A

しかし、その後のGoogleは、本業以外のビジネスに積極的にM&Aを展開していきます。

2013年にイスラエルのスタートアップであるWaze社を買収しましたが、この会社はスマホやタブレットに適応できるGPSナビゲーション技術を持っていました。この買収がGoogle Mapsのさらなる高度化に貢献したのです。

同年にはSchaft、Industrial Perception、Redwood Robotics、Meka Robotics、Holomni、Bot & Dolllyという複数のロボット関連企業を次々に買収しました。

2014年には外出先からスマホで空調などを操作できるホームオートメーション(スマートホーム)企業のNest labsWi-Fiによる家庭監視カメラのDropcam、ロンドンのAI企業であるDeepMind、無人飛行機の実現を目指すTitan Aerospace、AR機器を開発するQuest Visual、衛星からの高解像度画像を提供するSkybox Imagingなどを買収しました。

こうして本業のインターネット以外の様々な分野の企業を買収した結果、Alphabet(アルファベット)という持株会社が2015年に誕生することになったわけです。ベンチャー・キャピタルだった成長ステージ期スタートアップ向けのGoogle Capitalや、シード期スタートアップ向けのGoogle Ventureも傘下となっています。

Google/Alphabet(アルファベット)が買収する企業の特長とは?

次に、Google/Alphabet(アルファベット)が買収する企業の特長を見ていきましょう。

まずは、英国企業であるAIのディープマインドのような例外もありますが、ほとんどの企業がサンフランシスコからシリコンバレーにかけたベイエリアの会社であることです。

次に、ほぼ全てのGoogle/Alphabet(アルファベット)の製品は、買収してきた企業のサービスに由来していることです。

上記のアンドロイドとAdMobがiPhoneと並ぶアンドロイド携帯を生み出し、アプリでの収益化を実現しているわけです。YouTubeについては、名称もサービスもそのままの形で残されています。Google Mapsも、買収した企業の技術を寄せ集めて作成されています。

最後は、そのサービスが、1日に1回か2回は使われて、世の中の役に立つものであるということです。ファウンダーのペイジ氏が歯ブラシテストと呼んでいるもので、この方針がそれ以降の他業種での買収の根幹となっています。

Alphabet(アルファベット)誕生後のM&A

Alphabet(アルファベット)誕生以降ももちろん、クラウド・サービスやモバイルなど、主力事業での注力分野の企業を買収しています。

インターネット関連以外では、AIやVR、画像認識、データ・サイエンス、オーディオ、ビッグ・データ、ヘルス・モニタリングなどの分野で複数の企業を統合しています。

こうして買収された企業は、今まで紹介してきたGoogleを始めとする子会社や、Xプロジェクトに編入されていくことになります。

新しい企業の技術やサービスを次々に取り込み、色々な分野のプロジェクトで試験を行うことでその技術にさらに磨きをかけ、ビッグデータとして収集し、マシンラーニングで解析していく。

インターネット企業であったGoogleがライフ・サイエンス、ロボティクス、再生可能エネルギーなど多くの分野を抱えるAlphabet(アルファベット)に進化を遂げたわけです。その結果、同業他社に差別化をし、自動運転分野のOSでは自動車会社を、ドローン宅配ではAmazonを追い抜いたのです。将来成長が見込める多くの分野でトップ企業となりつつあると、シニアや女性等の将来のアントレプレナーにもご理解いただけたのではないでしょうか?

起業・スタートアップを目指す方は、このAlphabet(アルファベット)が買収した企業を研究し、買収されやすいニッチな分野でのトップ企業を目指すのもありかもしれません。

次はサブスクリプション・サービスについてです。

アルファベットの時価総額が1兆ドルを突破!

アルファベットの上述の解説で、アルファベットは2016年に資産価値が世界一になったことがあると書きましたが、2020年1月にも重要なニュースが報じられました。

日経新聞の記事にありますように、アルファベットの時価総額が1兆ドル(約110兆円)を突破したというものです!

アップル、マイクロソフト、アマゾンに続き4社目ということですが、インターネット関連株としては初の快挙です。これで、GAFAの中ではフェイスブックのみが未達ということになりました。世の中をよくするために頑張っているアルファベットが、市場から支持されていることの証明といえるのではないでしょうか?

日本取引所グループのサイトによりますと、2019年12月の東証1部、2部、マザース、JASDAQなど日本の全ての株式市場の時価総額の合計が約670兆円のようです。アルファベット1社でこの6分の1を占めていることになります。

グーグル以外のアルファベットの子会社も世界中の投資家から注目されており、みなさんにもこのコラムで紹介する価値があることをご理解いただけたのではと思います。

アルファベットの将来の時価総額は、グーグル以外の現在は赤字である各子会社が、どのように成長していくかにかかっているわけですので。

そして、Nest Labsや、アマゾンも研究を行っているドローン宅配便、Googleグラスなど、実はそのほとんどが注目企業といっても差し支えないのです。

2018年のFAANGから2019年のGAFAへ、しかしビデオ・オン・デマンドとサブスクリプション・サービスは拡大中!

2020年1月には、日本のマスコミでも、米国の5社の株価と日本の全ての企業の価値が同じになってしまうという記事が話題となりました。

ここで注意をしておきたいのは、2019年の時価総額ランキングを見ると、アラムコが首位、アップルが2位、3位がマイクロソフト、4位がアルファベット、5位がアマゾン、6位がフェイスブックとなっており、2018年にFAANGとしてもてはやされた(Facebook, Amazon, Apple, Netflix, Googleの頭字語)のうちのネットフリックスはランキング入りしていないということです。

ネットフリックスを除いたGAFAと呼ばれるようになったのはこのためです。市場の動きがいかに早いかがご理解いただけたと思います。

ネットフリックスは2019年は不調だったわけですが、その根幹モデルはむしろ好調だったといえるでしょう。新型コロナウイルス流行後は、アマゾンやゲーム会社と並び、巣ごもり消費の拡大で再び成長路線に戻りました。

ここでみなさんが知っておくべき、米国では当たり前となっているビデオ・オン・デマンドとサブスクリプション・サービスについてふれてみたいと思います。

ネットフリックスは毎月定額の料金を支払えば好きな時に好きな映画やTVシリーズが無料でみられるサブスクリプション方式のビデオ・オン・デマンド方式の動画配信で成功した代表的企業です。

過去に放映されたTVシリーズを例に取ると、2007年にネットフリックスがビデオ・オン・デマンド方式のストリーミング配信を始める以前は、視聴者は現在の日本と同様に過去のシリーズであってもレンタルDVDを借りる、または翌週、翌日など決められた日時に放映されるまで待たなくてはならなかったわけです。

しかし、現在では過去のTVシリーズであれば、ネットフリックスやアマゾンプライムなどで視聴者は好きな時に自分のペースでまとめ見をすることができます。これがビデオ・オン・デマンドです。

漫画でいうと連載が終わってから単行本となったものをまとめ買いをして一気に読んだりするのと同じ感覚でしょうか?英語ではシリーズを1エピソードだけではなく、好きなだけ数エピソードまとめて観るBinge-watchingという言葉も生まれました。ビデオ・オン・デマンドは、消費者の生活行動を変えてしまったのです。

音楽ではSpotifyなどの、好きな時に好きなアーティストの曲を聞くことができる音楽ストリーミングサービスもミュージック・オン・デマンドと呼べる革命的なサービスだといえるでしょう。また、アマゾンが始めたレコメンドサービスも、自分の好きなアーティストと似た知らないアーティストを発見出来るという意味で、画期的なサービスといえるでしょう。

例えばSpotifyでは、007シリーズの主題歌を史上最年少の18歳で担当することになったビリー・アイリシュが好きだとすると、彼女に似たスタイルのアーティストを自然に推薦してくれます。凄いですよね!

サブスクリプション方式は、CDやDVDなどのモノを購入したりレンタルするのではなく、利用権を購入して利用した期間に応じて料金を支払うシステムです。通常は月額ですが、年間購入での割引もあります。バージョンアップの際の追加料金も必要ありません。

そして、このサブスクリプション方式で復活を遂げた代表的企業がマイクロソフトということになります。2019年末にはWindows7のサポートが終了するとニュースになっていましたが、過去に購入した方の場合は、Windows10にソフトウェアをバージョンアップしなくてはならないわけです。

Office2019を3万円台で購入した方は、いつかこのように買換えを行うことになるわけです。しかし、サブスクリプション・サービスであるOffice365 Soloの場合は毎月1,274円、または毎年12,747円を支払うことでこうした手間から逃れることができるわけです。さらにアップル製品同様に、サポート体制も無償で利用できます。

このサブスクリプション・サービスを導入することでマイクロソフトは時価総額でGAFAに追いつくことができたわけです。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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