起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 ルーン(Loon)2

2020/10/16

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回は、アルファベットによる砂漠など移動体通信網のない地域への通信サービスを開発するLoon(ルーン)について解説していきます。

起業家・アントレプレナー注目!イリジウムの問題点とは?

前回解説したイリジウム・プロジェクトは、75個の衛星を打ち上げることで、世界中どこでも携帯無線通信が使用できるという衛星電話プロジェクトでした。しかし、1996年に認可を取得し1999年に開始された最初のサービスはわずか1年で頓挫し、新規の75個の衛星の打上げが終了したのは2019年であり、20年かけてようやくスタート地点に立ったという状況です。

イリジウムの通信衛星は、高度770~780キロの低軌道で地球を周回しています。しかし、2009年にはロシアの軍事通信衛星と衝突事故を起こすなどリスクも高く、衛星打ち上げなどのコストも高く、端末や通信費の高価格化につながり一般には普及しなかったわけです。米国国防総省または超富裕層が顧客というのが現状です。

それに対して、一般の方でも手軽に利用できるサービスが構想されました。その一つが今回紹介するLoon(ルーン)です。

起業・スタートアップを目標とする方必見!プロジェクトLoon(ルーン)はどうして生まれたのか?

プロジェクトLoon(ルーン)とは、以前にご紹介したアルファベットの次世代技術開発を行うX社による気球を用いた移動体通信システム構築計画を指します。

地球からの高度が10キロから50キロである成層圏に気球を飛ばすことにより、世界中を覆った気球により、どこでも無線通信ができるというアイデアから生まれました。
地球から770キロも離れた宇宙を周回する衛星と比較すると、非常に地球から近い成層圏での通信網となり、さらに気球という安価な媒体を使用するため、コストが衛星電話よりも相当安くなるのではという期待が膨らみますよね?

Loon(ルーン)がイリジウムの発想と失敗から着想されたことは明らかですが、それでも地球の上空を沢山の気球で覆い尽くすというアイデアは凡人では考えられないです。そして、イリジウムと比べるとクレイジーなアイデアではないということでゴーになったのでしょうが、アルファベットのチャレンジ精神には本当に頭が下がる思いです。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさんには、こうしたチャレンジ精神も必要ですが、コスト意識はそれ以上に重要だということを学んでいただければと思います。

起業家・アントレプレナー注目!成層圏とは?

ここで、成層圏について少し見ていきましょう。成層圏は、起業家を目指すみなさんも耳にしたことがある言葉だと思います。

現実の世界でロケットが地球に帰還する時に成層圏に入る、ガンダムなどのSFアニメやSF映画を見ていても、「間もなく成層圏に突入!」などのセリフが緊張感の中でパイロットから飛び出してきますよね?その後、成層圏に突入した宇宙船のいくつかは燃え尽きてしまう、というのがお決まりです。

宇宙に温度はありませんが-270度に近いと言われているようで、このことから成層圏というのはそれよりは温度が高いということになります。

成層圏は上部の温度が0度、下部の温度がマイナス50度程度となっており、いわゆるオゾン層と重なっている部分を指します。オゾン層が太陽からの紫外線を吸収し、上層部は空気密度が低いために、上層ほど温度が高くなっているそうです。

ポイントとしては、宇宙よりは暖かいとしても、こうした氷点下という超低気温で通信機器が機能しなくてはいけないことを起業・スタートアップを目指す閲覧者の方は覚えておいてください。

また、気球に影響をしてくる風ですが、下部では1年を通じて偏西風が、中上部では夏季は偏東風、冬期は偏西風、極地では夏は上昇気流、冬は下降気流が吹いているとのことです。

起業・スタートアップを目指す方必見!Loon(ルーン)の詳細と沿革

プロジェクトLoon(ルーン)は、上記の成層圏を浮遊する高高度気球(通常の低高度気球とは異なる)に基地局を設置することで、世界中どこでも使える無線通信システム構築を目指すというプロジェクトです。

プロジェクトが開始されたのは2011年ですが、公表されたのは2013年6月です。ニュージーランドで30の気球を使用した公開実験が行われ、南半球のニュージーランド、オーストラリア、チリ、アルゼンチンをカバーする300の気球の打上げ計画を発表します。

2014年の5月にブラジルでLTE(携帯電話用の通信回線規格、Long Term Evolutionの略)の実験が行われ、2015年にはスリランカでLoon(ルーン)システムが導入され、スリランカ全土でのLTE通信網が使用可能となりました。

技術面でも、2016年にレーザーを使用して2つの気球間の距離を100キロに安定的に保つことに成功します。以前にご紹介した、ウェイモのレーザー技術が使用されているそうです。

2017年にプエルトリコをハリケーンが襲った際には30の気球を打上げ、緊急のLTE通信網を構築するなど、社会貢献でも実績を上げました。そして、2018年にはLoon(ルーン)inc.として、アルファベット傘下の子会社として独立を果たしました。

さらに2019年にはテレコム・ケニアと提携、ケニアの携帯電話通信網がない地域を対象として、初の商用サービスを開始しました。

ここで重要なのは、イリジウムと異なり、Loon(ルーン)独自のシステムを開始したわけではないということです。

既存のテレコム・ケニヤの無線基地局がない地域にはLoon(ルーン)の気球に積まれた基地局が対応するという補完的なシステムとなっており、ユーザーはテレコム・ケニアのサービスを使用することになります。テレコム・ケニアの圏外の地域がルーンのおかげで大幅に減少したといえば、分かりやすいでしょうか?

そして、賢明な起業家・アントレプレナーを目標とする読者のみなさまならば、この沿革を読んでなにか違うなと思われたのではないでしょうか?そうです、ビジネスモデルが変化しているのです!

次回はLoon(ルーン)のビジネスモデルの変更と、その元となった技術を中心にLoon(ルーン)をさらに詳しく掘り下げていきたいと思います!

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。