起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 ルーン(Loon)3

2020/10/19

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回も、アルファベットによる移動体通信網のない地域への通信サービスを開発するLoon(ルーン)について、解説を進めていきます。

起業家・アントレプレナー注目!Loon(ルーン)のビジネスモデルの変化について

Loon(ルーン)は、前回解説しましたように、成層圏に気球を打上げて地球上を覆う気球による移動体通信網を構築するというアイデアから始まりました。しかし、2014年のスリランカ、2017年のプエルトリコを経て、2019年に商用サービスが開始されたのはケニアのみです。

つまり、いつの間にかイリジウム計画が構想された1990年代前半から2010年代前半のルーン・プロジェクト開始時まで引き継がれていた、南極でも、公海でも、砂漠でも世界中どこでも使える移動体通信網の構築というアイデアは消え去り、代わりに通信網の整備されていないある特定の発展途上国の地域への通信網の提供にビジネスモデルが変化しているわけです。グローバルからローカルへの大きな変化です!

起業家・アントレプレナーを目指すみなさんは、是非ともこのモトローラとイリジウムの失敗と、アルファベットとルーンの成功から、学んでいただきたいと思います。

モトローラは前回ご紹介したように、1990年代にはGE、コダック、IBMなどと並び、エクセレント・カンパニーと呼ばれていました。昔のハリウッド映画に出てくる警察が使用している無線機器、携帯電話、そして半導体において、リーディング・カンパニーとして君臨していました。しかし、携帯電話事業はグーグルからさらには中国企業に、半導体事業も売却され、現在ではほとんど話題にのぼることもない状況となっています。

対照的にAlphabet(アルファベット)は、以前にご紹介したように、時価総額は世界第4位、GAFAと呼ばれる4社の一つとして世界をリード、理系の学生の間では就職人気トップ企業となっています。

起業・スタートアップ後、最初に目指していた事業が予定通りに立ち上がらないことはよく起こることです。イリジウムは高価な衛星の打上げにこだわり続けチャプター11に陥り、多額な資金援助を行っていたモトローラ本体もその後衰退していくことになりました。

反対に、Loon(ルーン)は地球の成層圏を気球で覆い尽くすという当初の計画を修正し、商用契約を結んだ地域のみに数個の気球を打ち上げるというビジネスモデルに見事に修正を果たしました。コストが大幅に削減されたのはいうまでもないことでしょう。

こうしたビジネスモデルを環境に応じて変更するという柔軟性が、将来の起業家・アントレプレナーである閲覧者の方には求められてくるわけです。

起業・スタートアップを目標とする方必見!Loon(ルーン)の技術について

Loon(ルーン)のサービスは正確には、成層圏の中でも高度18キロから25キロの間(成層圏の中下部)に打上げた高高度気球に設置されたアンテナ状の基地局を通じて4GLite無線通信サービスを提供する、というものです。

風速が10キロから30キロと安定している高度18キロから25キロの間に気球を打ち上げる事が非常に重要であり、その技術を有していることがルーンの強みなのだそうです。

東京~ニューヨークなどの遠距離の飛行機に乗っていると、「この先気流が乱れていて機体が揺れるのでシートベルトをお締めください」というアナウンスが流れることがあります。これは、乱気流のためです。この乱気流は当然気球に影響を与えますが、Loon(ルーン)はAIを使用して季節や高度により変化する気流の流れを予測する取り組みを行っているとのことです。

前回ふれたレーザー技術もそうですが、今までいろいろな例で紹介してきましたように、アルファベットの強みは、子会社が持っているAIなどの技術を他の子会社の発展のために使用することでウインウインを図っていることだと毎回痛感させられますね。

また、Loon(ルーン)は緯度や経度による気球の位置を、高度を調整することでコントロールできるとも宣言しています。気球に積んだガス(ヘリウムや水素など空気より軽い物質から構成されている)の量や濃度を調整することで可能になるとのことです。

前回ご紹介したように成層圏では強い偏西風や偏東風が吹くので気球の制御は困難なわけですが、ビッグ・データとディープ・ラーニング技術で状況を予測し、気球を特定の場所に留めることが可能になったとのことです。

Loon(ルーン)は、当初はイリジウム同様に数百もの気球で地球上を覆うということを目標としていました。

しかし、上述のようにAIを使い気球の位置をコントロールできるようになったことで、地域ごとにいくつか(数個から数十個)の気球を設置することで基地局のない地域に無線通信網を提供することが可能になったとのことです。

通信システムは2.4~5.8GHZの3G相当の電波帯が使用されていましたが、現在ではLTEとなっています。

次回はLoon(ルーン)とその新たな競合会社について見ていきましょう。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。