起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 ルーン(Loon)4

2020/10/23

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回は、アルファベットによる移動体通信網のない地域への通信サービスを開発するLoon(ルーン)の長所とその競合企業について、解説を進めていきます。

起業家・アントレプレナー注目!衛星電話と比較したLoon(ルーン)の長所と短所とは?

Loon(ルーン)が2013年6月に最初に実験されたニュージーランドの農場では無線通信網が整備されておらず、前々回紹介したようなイリジウムやインテルサットのような衛星電話システムを使用すると月に10万円以上の通信費がかかったそうです。75もの衛星を発射し、かつ宇宙を周回させていることで、高コストは避けられないわけです。

それに対して現在のLoon(ルーン)のシステムでは、高高度気球で地球を覆うのではなく、限定された地域で数個から数十個の気球を飛ばすだけですから、低価格の通信費での利用が期待されています。

さらに、高価な専用端末を購入しなくてはならないイリジウムとは異なり、ルーン専用の携帯電話を購入する必要はありません

前々回に説明したケニアの商用サービスのケースでは、テレコム・ケニアにSIMカードで、またはドコモなどのキャリアのご自身の端末の国際ローミング機能で接続すれば、テレコム・ケニアの基地局がない地域ではルーンの気球に搭載された基地局を通じてインターネット接続が出来るわけです。

野生動物を保護する国立公園、タンザニアと国境を接する野生動物が最も多く見られるマサイマラ国立保護区や、富士山よりも雄大なキリマンジャロ山を背景に象の群れなどの写真を撮れるアンボセリ国立公園などには、当然ですが、携帯電話の基地局は設置されていません

しかし、ケニアを訪れる観光客の最大の楽しみであるこうしたサバンナ地区でライオンなどの野生動物を見るチャンスがある早朝と夕方に実施されるサファリにおいて、Loon(ルーン)の気球に搭載された基地局を通じて観光客が自由にライオンの動画を故郷の家族に送付することも可能になったわけです。

観光客は、この電波は目に見えない成層圏にあるLoon(ルーン)の気球から発信されているなどとは、夢にも思わないことでしょう。

このように、Loon(ルーン)は従来の衛星電話と比較すると、1. 月額の通信費は安い、2. 高価な専用端末を購入する必要がない、3. 地域のキャリアが基地局を建設していない従来なら圏外の地域でも圏内になる、などの多くのメリットがあるということを、起業・スタートアップを目指すみなさんにもご理解いただけたと思います。

もちろん、長所ばかりがあるわけではありません。

数百万円の気球は表面をおおうプラスチックの劣化で約半年ごとの交換が必要、気球がAIでも想定外の強風で流されると通信が切れるなどです。それでも、アルファベットのAIやレーザー技術は日々進化を遂げているわけであり、プラスチックに代わる素材を見つけるのはアルファベットが成し遂げてきたことと比較すると、それほど困難とは思えないのですが、いかがでしょうか?

起業・スタートアップを目標とする方必見!Loon(ルーン)の普及による世界的なインターネット通信網の拡大への期待

英語版ウィキペディアによると、2019年の段階での世界のインターネット普及率は、実はまだ54%にすぎません。36億人もの人々は、まだインターネットに接続できていないのです!

Loon(ルーン)が今後低価格の通信システムを提供できれば、アフリカや東南アジア、中東、ラテンアメリカなどの発展途上国のインターネット接続に大きな貢献をすることになると、アルファベットは考えているそうです。

インターネットに接続できない世界など考えられるでしょうか?日本では当たり前になっているニュースを取得する、家族や友人とSNSや電話で繋がる、ゲームや音楽、映画を楽しむ、観光やレストランの情報を得る、買い物をするなどの機会に恵まれない方は世界のほぼ半分を占めているわけです。

もちろんインターネット接続網の拡大は、世界最大の検索エンジンを有し、キャッシュ・カウ(市場成長率が低くても高い市場シェアにより稼ぎ頭となっている商品)であるアドセンスによる広告収入増加に繋がることもあるでしょう。

しかし、インターネットを理異様できないことから生じる情報格差、いわゆるデジタル・ディバイド添付の総務省の資料にありますように、国家や個人間の大きな格差を生じさせます。

ここまでの記事を読んでこられた将来の起業家・アントレプレナーである閲覧者の方ならば、アルファベットが世の中をよくするためにこのデジタル・ディバイド解消のために貢献しようとしているのをご理解されていることでしょう。

起業家・アントレプレナー注目!Loon(ルーン)の競合会社

Loon(ルーン)には、2019年4月にソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルが出資をしています。1億2500万ドル、約130億円という資金が、独立会社となったLoon(ルーン)に必要だったのは間違いないでしょう。しかし、日本だけでなく米国にも販売ルートを持つソフトバンクの子会社がLoon(ルーン)の事業のホールセール、つまり販売代理店になるということにも惹かれたのでしょう。

さらに、2月21日CNETの記事ににあるように、以下のニュースが飛び込んできました。米国のボーイングと並ぶ航空機大手会社である欧州のエアバスの軍用機部門など12社が参加する空飛ぶ携帯電話基地局の実用化に向けた企業連合をHAPSモバイルが立ち上げたというものです。

こちらは気球ではなく無人航空機を成層圏に飛ばし長時間旋回させるというもののようです。

このように、地球上の基地局を建設できない海洋や砂漠地帯などもカバーできる空中の基地局による世界のインターネット化プロジェクトがどんどん出てきてしのぎを削ることは、世の中のためにも良いことですよね。

しかし、Loon(ルーン)が低コストでローカルに無線電話網を構築できることになったので、イリジウムから続く地球上を衛星や気球で覆うというビジネスモデルはもはや過去のものとなってしまったようです。

3月28日のブルームバーグのニュースによると、ソフトバンクが出資していたイギリスの衛星通信ベンチャーのワンウェブがチャプター11を申請したとのことです。

上記の未だインターネットに接続できない36億人を対象とした大市場においても、アルファベットが優位に立ちつつあるようです。自動運転、AIなど各子会社のシナジー効果がここにきて現れてきているようです。もはや、アルファベットの子会社を知れば世界の流れがわかる、という状況になってきているのかもしれません。

スタートアップを考えておられるみなさんは、アルファベットの子会社について研究し、彼等が成長のために必要としているニッチな領域を見つけて起業し、買収されるというエグジットも考えるべきでしょう。

ウイングとドローン宅配システムについて見ていきたいと思います。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。