起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 マカニ(Makani)3

2020/11/09

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回は将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと、Makani(マカニ)の特長とその後の展開について見ていきましょう。

起業家・アントレプレナー注目!Makani(マカ二)とは?

さて、前回までの解説で、起業・スタートアップを目指す閲覧者の方も、地球温暖化問題と風力発電の重要性についてご理解いただけたと思います。バイデン元副大統領が次期大統領となることも決まり、地球温暖化問題にアメリカも取り組むことになると予想されています。この前提のもとにMakani(マカニ)について解説していきます。

Makani(マカニ)は2006年に設立された、空中に飛ばしたカイトによる風力発電を行おうというスタートアップでした。3人の創立者のうちの一人はプロのウインド・サーファーで、後にカイト・サーフィンという空中に飛ばしたカイトでウインド・サーフィンを行う、日本ではあまり知られていませんが米国西海岸やハワイなど海外では人気の高いスポーツに転向しました。筆者が以前在籍した外資系企業のアメリカ人の同僚や、日本人の開業医のテニスの先輩などは、長期休暇を取ってはハワイやオーストラリアでカイト・サーフィンをしていたことが思い出されました。

数人のカイト・サーファーが、カイト・サーフィンから十分な電力を得られるのではという画期的なアイデアからカイトでの風力発電を行おうとして設立されたのがMakani(マカニ)であり、Makaniはハワイ語で風を意味するそうです。

Google(グーグル)が当初から出資(2006年に約10億円、2008年に5億円)していましたが2013年に完全買収し、Makani(マカニ)はXプロジェクトの一つとなりました。Xプロジェクトのテラー氏はクリーンエネルギーの提供はGoogle(グーグル)が何年も解決しなければと興味をもっていた分野であり、Makaniは風量発電に新たな革新的な手法を開くかもしれないと述べています。

一方ファウンダーで当時のGoogle(グーグル)CEOのペイジ氏は、買収にあたって、Xが独自の投資をするのはよいことだが、今後少なくとも5つのプロジェクトは解散となるだろうと注文をつけたそうです。

起業・スタートアップを目標とする方必見!Makani(マカニ)の特長とは?

Makani(マカニ)は既存の風車ではなくカイトを使用することで、低コストでの風力発電を目指してきました。

Makani(マカニのカイトは自動運転され、地上や海上の基地局に結ばれており、空中を旋回すると、主翼に取り付けられたタービンが回転し、発電するという仕組みです。風に向かって風力の数倍のスピードで進むことで取得した風力エネルギーは、カイトに繋がれた電線を通じて地上に送電されます。そのデザインは航空力学を取り入れています

前回ご紹介したように、カイト・サーファーの発想から生まれたことから当初のモデルは布製でカイト・ボードのカイトと酷似していたそうです。カイト・ボーダーのアイデアがビジネスになるなんて日本では考えられないですよね?

このカイト・ボードの発想から、Makani(マカニ)のカイトは競合他社とは異なり発電機が地上にはなく、カイトに内蔵されているのだそうです。下記のTechcrunchの添付ニュースに画像があるので、見ていただければMakaniのカイトのイメージが湧くと思います。1980年に発表された、Crosswind Kite Powerという技術に基づいています。

従来の風力発電と比較すると、

  • 風に向かって数倍の速度で飛行することで、静止している従来の風力発電基地局と比較すると、より強力な風力を安定的に捉えることができる
  • タワーを必要としないので低コストである
  • 高容量
  • 陸上にも海上にもより簡単に設置できる

という長所があるそうです。

さらに、アルファベットが開発してきたセンサーやGPS技術、搭載されたコンピュータやフライトコントローラがソフトウェアによるカイトの操作を助けています

Makani(マカニ)によると、風が強く、安定している海岸から25マイル(約40キロ)に世界中で数億人が住んでいるそうですが、その3分の2は従来の風力発電所を建設するには海水が深すぎて適していなかったそうです。しかし、Makaniの技術を用いればこうした場所にも風力発電で電力を届けることができるとのことです。

Makani(マカニ)にはグーグルXが認めたポテンシャルがあると、起業家・アントレプレナーを目標とするみなさんにも分かっていただけたと思います。

起業家・アントレプレナー注目!Makani(マカニ)のその後の展開

2013年にXプロジェクトの一つとなって以降Makani(マカニ)は、2015年に再生エネルギーとその効率性の研究開発をしているNRELの元所長だった再生エネルギーの専門家であるフェルカー氏をCEOとして採用しました。

2016年には28メートルの翼長を持つ600kWを発電する試用機を初飛行させました。2018年以降、ハワイのハワイ島でのテスト飛行を続けてきました。そして2019年には石油メジャーの一角であるロイヤル・ダッチ・シェルが投資を行い、事業を共同開発していくこととなり、共同でのノルウェイでのデモ飛行も成功させました。同時にXから独立し、アルファベットの子会社となりました。

しかし、同年には海上での試験飛行中にカイトが行方不明となる事故が発生しましたが、原因は解明されませんでした。

そうした中、テッククランチの記事によると、2020年2月にアルファベットはMakaniを終結すると宣言しました。

起業・スタートアップを目指す方必見!Makani(マカニ)の終了から学べること

Makani(マカニ)をアルファベットが終結させたことに驚かれた起業・スタートアップを志向するみなさんも、多かったのではないでしょうか?

アルファベットは、世の中をよくすることを目標に掲げています。クリーンエネルギーを従来とは異なる革新的な手法で提供しようというMakani(マカニ)は、アルファベットのMissionに合致した会社だったのは確かです。

テラー氏は、商用化への道のりが予想以上に困難だということが理由だと述べていますが、筆者の私見でも、創業してから15年ですから、少々時間がかかりすぎているという印象があります。

しかし個人的には、グリーンエナジー企業を応援していきたいので、Makani(マカニ)が出資者であるロイヤル・ダッチ・シェルの協力をえて事業を継続していくということを目にして安心しました。

Verily(ベリリー)傘下のロボット手術機器企業のVerb Surgical(バーブ・サージカル)を合弁企業のJ&Jに100%売却したのは目標と合わなくなってきたことが理由でしたが、アルファベットもやはり利益を生み出し株主に還元することを第一とする米国企業ですので、利益を生み出さない企業に投資をし続けることは難しいということなのでしょう。

筆者は、アルファベットは他社ならば躊躇する世界中を気球で覆うというLoonのような夢物語のようなアイデアの会社であっても、世界を変えるゲームチェンジャーとなりうる技術を要する企業には投資をするというイメージがありました。

しかし、その考え方もここに来て変化がみられるようです。新型コロナウイルスによりその傾向がますます顕著になることが危惧されます。

上記のペイジ氏の言葉が本当ならば、今後他のXのプロジェクトやXから独立した会社にも収益性が厳しく求められてくるのかもしれません。

将来の起業家・アントレプレナーとなるみなさんは、このようにファースト・ラウンド、セコンド・ラウンドに成功しても気を緩めることをせずに、エグジットのタイミングも計ることが必要なのだとこのMakani(マカニ)の例から学ぶことが重要だと気付いて頂ければ幸いです。

次回はDandelion(ダンデライオン)について解説していきます。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。