起業アドバイス

起業・スタートアップのためのアドバイス11
株式会社と合同会社どちら?

掲載:2020/9/24

最終更新日:2020/09/24

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への起業のアイデア・スタートアップのためのアドバイスの第11回。前回は、起業する日はいつがいいのかについて、お話ししました。今回は、起業・スタートアップには株式会社と合同会社のどちらがよいかについて、解説していきます。

将来の起業家・アントレプレナー必見!なんで有限会社ではなく合同会社なの?

第3回では、個人事業主としてスタートするのか、それとも会社を最初から設立すべきかについてお話しました。今回は、会社を設立する際には株式会社、それとも合同会社(LCC)のどちらがいいのか?についてのポイントを解説していきます。

ところで、特にシニアの起業家候補においては、合同会社なんて聞いたことがない、有限会社はどうなっているの?と思われる方が多いと想定されますので、有限会社についてまずは簡単に触れておきましょう。

1990年の法改正により、最低資本金が株式会社の場合は35万円から1,000万円、有限会社は10万円から300万円に引き上げられ、会社を設立するならばまずは有限会社からという状況でした。

しかし、2006年の会社法の施行により資本金1円での会社設立が可能となり、有限会社制度は廃止されました。

それ以前に有限会社として設立された会社は、現在でも商号を有限会社とするように定められています。そのため、現在でも中小企業の方の名刺などで、有限会社という名称を見かけることはあるでしょう。しかし、これから会社を設立されるみなさんは、有限会社を設立することはできないのです。

起業・スタートアップを目指す方注目!資本金はいくらぐらいにすべきか?

以上のように、会社設立の資本金は1円でも法的に問題はないわけです。そうはいっても、みなさんも会社設立時に資本金をいくらにすべきかと、悩まれることでしょう。

資本金は、開業資金に加え開業後の1年ほどの運転資金を目安に、決定すべきでしょう。

ビジネスは、最悪のケースを想定するのが基本です。売上もなく、融資や増資などの新たな資金調達が受けられなくても、1年間は運営していける事を必要条件にしましょう!

開業資金としては、自宅で開業するのでオフィス代が必要ないと仮定しても、会社設立登記費用と印鑑(会社の実印と銀行印)の代金は最低でも必要です。

まずは、株式会社の場合を見ていきましょう。

登記には、定款認証のための証人の手数料として5万円、謄本が2冊で2,000円、印紙4万円、登録免許税の印紙が15万円、銀行口座開設時に必要な登記簿謄本が1通600円、印鑑証明書が1通450円の計24万3千50円程度の実費が必要です(電子認証の場合は定款認証の印紙代が発生しないため4万円安い)。

さらに、日本公証人連合会のサイトにありますように、定款認証は複雑で通常は司法書士に作成や手続きを依頼するので司法書士により値段は様々ですが、通常は10万程度かかります。合わせて35万円程度の費用がかかるとみておいたほうがいいでしょう。

印鑑もハンコヤドットコムのようなチェーン店で頼む、手彫りで彫っていただく、材質がなにかによりピンキリでしょうが、5万円程度は必要でしょう。

また、業種にもよりますが、通常はウェブサイトの開設も必要でしょう。ワードプレスなどのテンプレートを用いて知人からフリーランスの方を紹介してもらったとしても最低でも10万円は見ておいたほうがいいでしょう。

つまり、株式会社の場合は開業資金として50万程度を用意しなくてはならないということです。

これに加えて毎月の運営資金がかかるわけですが、ざっくりとですが、ウェブサイトのメインテナンス費用が1万円ウェブサイト運営の場合は毎日のように更新費用がかかるため5万円)、サーバー代が5千円、通信費が1万5千円、電気代5千円、雑費5千円など4万円程度はかかることになります。年間で約50万円となりますが、ウェブサイト運営の場合は年間で約100万円となります。

ここには人件費、店舗費、開業に必要な椅子、机、電話、パソコンなどは含まれていません

ウェブサイト運営でない実業の場合はお一人で始めるとしても、設備費用を用意しなくてはならないでしょう、仮にこれを50万円とします。

結論として、株式会社の場合の資本金は実業でもウェブサイト運営であっても、最低でも150万円以上の資金を準備するべきということです。

そして、最も重要なことですが、ここにはみなさんに支払われる人件費は入っていませんので、1年間の生活費も必要だということを忘れないでください!

未来の起業家・アントレプレナー必見!株式会社にすべきか、それとも合同会社か?

つまり、会社設立費用と1年間の運用費用で150万円、それに生活費が300万円かかるとすると、売上が1円も立たない最悪のケースを考えると、株式会社を設立し1年間運営していくには450万円の出費を覚悟しなくてはなりません。

1年以内にある程度の売上が計上される、または出資の目処が立つのならば社会的信用度の高い株式会社を設立するべきですが、そうでないのなら合同会社がおすすめです。

ここで合同会社のメリットを挙げてみましょう、やはりもっとも大きいのは費用面での長所です。

上記のように会社登記には株式会社では登録免許税が15万円、定款認証の手数料が5万円、収入印紙4万円など24万3千50円程度かかったわけです。

一方、合同会社(LLC)の場合は免許税が6万円、収入印紙が4万円、定款の謄本手数料など約10万3千50円程度と半額以下ですみます。

また、本来株式会社は決算公告の義務があり、官報に掲載する費用が6万円程度必要ですが、合同会社の場合はこの費用もかかりません。

次に、経営の自由度があります。株式会社は原則としては株主優位なので出資比率により利益の配分が決定とされていますが、合同会社では自由に設定できますので、貢献度に合わせた利益配分ができます。出資はしているが会社には貢献していない方に対しては、利益を配分する義務がないということです。

また、株主総会を通さずに意思決定をできるのは面倒がない、といえるのではないでしょうか?

起業・スタートアップを目標とする方注目!事業が順調に進めば株式会社にすべき!

しかし、事業が順調に進んできた場合には、個人事業主から会社設立へと転換したように、株式会社にするメリットがより重要になってくるでしょう。

金融機関の方はもちろん合同会社についてはご存知なので、以前にお話したように経営者や会社の内容で判断するでしょうから、融資の際は問題ないと思われます。

しかし、合同会社という事業形態を知っている方があまりいないため、取引先からは軽んじられたり、事業拡大で人材採用する際には不利になるでしょう。

さらに、大きな資金が必要となりVCから資金調達をしようとしても、資金と交換する株式がないわけですから、合同会社では不可能です。

また、合同会社では上場もできません

ある程度の規模になってきた時点で、株式会社へ転換することをオススメ致します。

次回は青色申告、白色申告のどちらが有利?などについて解説していきます。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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