海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
ルーン(Loon)

掲載:2020/10/12

最終更新日:2020/10/12

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は、アルファベットによる砂漠など移動体通信網のない地域への通信サービスを開発するルーン(Loon)について解説していきます。

日本における携帯電話普及のきっかけとは?

ここで、30年ほど時計の針を昔に戻してみましょう。携帯電話を持っていた人は殆どおらず、NTTが開発した携帯電話はショルダーホンと呼ばれたバッグ型の大型サイズであり、自動車電話が主流だった1989年の日本。現在のauであるDDIは、当時世界の携帯電話市場でNo.1だったモトローラ社が開発した手持ちサイズの「マイクロ・タック」を採用、関西などでは一気に市場シェアを奪いました(関東では営業権はトヨタ資本のIDOが持っており営業力が弱く、マイクロ・タックを見かけることはあまりありませんでした)。

危機感を覚えたNTT(旧電電公社)は、公社設立時代から通信機器を提供してきて旧電電ファミリーと呼ばれた、日本電気(NEC)、富士通、三菱電機に松下通信工業(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)を加えた4社に、マイクロタックより小さな200ccの携帯電話の開発を指示しました。そして、1991年から「mova(ムーバ)」の名称で、各社が開発した4種類の小型携帯電話の提供を開始しました。端末には各社の頭文字を取って、それぞれmova N、mova F、mova M、mova P と名付けられました。そして、1994年の売り切り制解禁から携帯電話は一般にも普及していくことになりました。

自由貿易国の日本に存在する非関税障壁とは?

皆さんに理解しておいて頂きたいのは、軽自動車問題もそうですが、民主国家で自由貿易を掲げていると一般には思われている日本には、実はこうした政治的背景による、世界から批判されている見えない貿易障壁が存在するという事実です。

海外ではマイクロソフトのOSを使用したIBM製のパソコンが主流であったのに対し、日本ではNECのPC-9800シリーズが1982年から1997年まで市場を独占していたことも思い出されます。

そして1994年以降、日本でモトローラ社などの海外の携帯端末を見かけることはほとんどなくなり、いわゆるガラケーが独自の発展を遂げることとなります。2008年にiPhoneが発売され2009年に普及するまで、奇しくもNECのPC-9800シリーズがトップシェアだった期間と同じなのですが、15年間もこうした状況が続いていたのです。

しかし海外では、1990年代は勿論、2000年代以降はノキア社が台頭しますが、モトローラ社が携帯電話端末のトップ企業として世界に君臨していたわけです。

モトローラ社のイリジウム計画とは?

それでは、当時世界の携帯電話市場においてトップ企業だったモトローラ社による、イリジウム計画について解説をしていきましょう。

イリジウムは、元素番号77の白金に似た元素のことです。

シカゴに本社があったモトローラの幹部夫人が休暇に行った際に上記のマイクロ・タックを使用しようとしたところ、圏外で使用できなかったそうです。彼女の、地球上どこでも使える携帯電話があれば便利だとの声を取り上げた創業家2代目のガルビン会長が開始した携帯通信事業が、イリジウム計画です。

当初は77個の低軌道を周回する衛星を打ち上げることで全世界どこでも使える携帯電話網を構築するという案であったため、77という数字からイリジウム・プロジェクトと名付けられました。しかし、最終的には66の衛星が打ち上げられることとなりました。

莫大な予算がかかることから、その成功について疑問視もされていました。それでも、社会貢献的な意味合いも強いこのプロジェクトは、大きく注目されました。日本でも上記のDDI(現au)が京セラと日本イリジウム社を設立、京セラ製の端末も発売されるなど一部では話題となりました。起業・スタートアップを目指すみなさんの、特にシニアの方の中には、ご存知の方もおられると思います。

モトローラ社からの財務支援を受けたイリジウムSSC社は1996年には米国政府の衛星打ち上げなどへの認可も獲得、1998年にサービスが開始されました。しかし、端末の価格も利用料金も高額でユーザーが増えず、翌年にはチャプター11(米国法における倒産処理手続き)を申請する事態となりました。

米国国防総省による救済と第2世代のイリジウム計画とは?

しかし、da Vinci(ダ・ヴィンチ)の解説から何度も登場しているので将来の起業家・アントレプレナーである読者の方も段々と米国のビジネスへの国防省の関与について理解が深まっていると思いますが、米国国防省は軍事上、北極圏など通信網のない地域での移動体通信網を必要としていました。

そこで、2000年に新組織イリジウム・サテライト社(現イリジウムコミュニケーション社)がイリジウムSSC社から事業譲渡を受け、国防省との契約というビジネス・モデルで新たなスタートを切りました。

そして2010年には決済サービスPaypalの前身企業や電気自動車会社テスラを創業したイーロン・マスク氏が率いる低コストのロケットや宇宙船の打上げを行うスペースX社と提携、2015年から2017年にかけて70の衛星を打ち上げることとなりました。

その後打上げ計画に遅れは出たものの、2017年1月には最初の8つの衛星が発射されました。最初の打上げから2年後の2019年1月には当初の計画から5つ増えた75の衛星の打ち上げに成功、世界中をカバーしたとのことです。6つの衛星がバックアップとして製造されており、合計81の衛星が製造されました。

現在では商用サービスも開始、4種類の携帯端末と2種類のポケベルが用意されており、世界中どこでも使用できるとのことです。日本でも第1世代同様に、KDDIが取り扱っているようです。

このように、携帯電話の基地局がなく圏外となっている地域でも使用できる携帯電話の需要が存在するわけです。

イリジウムの問題点とは?

イリジウム・プロジェクトは、75個の衛星を打ち上げることで、世界中どこでも携帯無線通信が使用できるという衛星電話プロジェクトでした。しかし、1996年に認可を取得し1999年に開始された最初のサービスはわずか1年で頓挫し、新規の75個の衛星の打上げが終了したのは2019年であり、20年かけてようやくスタート地点に立ったという状況です。

イリジウムの通信衛星は、高度770~780キロの低軌道で地球を周回しています。しかし、2009年にはロシアの軍事通信衛星と衝突事故を起こすなどリスクも高く、衛星打ち上げなどのコストも高く、端末や通信費の高価格化につながり一般には普及しなかったわけです。米国国防総省または超富裕層が顧客というのが現状です。

それに対して、一般の方でも手軽に利用できるサービスが構想されました。その一つが今回紹介するLoon(ルーン)です。

プロジェクトルーン(Loon)はどうして生まれたのか?

プロジェクトルーン(Loon)とは、アルファベットの次世代技術開発を行うX社による気球を用いた移動体通信システム構築計画を指します。

地球からの高度が10キロから50キロである成層圏に気球を飛ばすことにより、世界中を覆った気球により、どこでも無線通信ができるというアイデアから生まれました。
地球から770キロも離れた宇宙を周回する衛星と比較すると、非常に地球から近い成層圏での通信網となり、さらに気球という安価な媒体を使用するため、コストが衛星電話よりも相当安くなるのではという期待が膨らみますよね?

ルーン(Loon)がイリジウムの発想と失敗から着想されたことは明らかですが、それでも地球の上空を沢山の気球で覆い尽くすというアイデアは凡人では考えられないです。そして、イリジウムと比べるとクレイジーなアイデアではないということでゴーになったのでしょうが、アルファベットのチャレンジ精神には本当に頭が下がる思いです。

こうしたチャレンジ精神も必要ですが、コスト意識はそれ以上に重要だということを学んでいただければと思います。

ここで、成層圏について少し見ていきましょう。成層圏は、起業家を目指すみなさんも耳にしたことがある言葉だと思います。

現実の世界でロケットが地球に帰還する時に成層圏に入る、ガンダムなどのSFアニメやSF映画を見ていても、「間もなく成層圏に突入!」などのセリフが緊張感の中でパイロットから飛び出してきますよね?その後、成層圏に突入した宇宙船のいくつかは燃え尽きてしまう、というのがお決まりです。

宇宙に温度はありませんが-270度に近いと言われているようで、このことから成層圏というのはそれよりは温度が高いということになります。

成層圏は上部の温度が0度、下部の温度が-50度程度となっており、いわゆるオゾン層と重なっている部分を指します。オゾン層が太陽からの紫外線を吸収し、上層部は空気密度が低いために、上層ほど温度が高くなっているそうです。

ポイントとしては、宇宙よりは暖かいとしても、こうした氷点下という超低気温で通信機器が機能しなくてはいけないことを閲覧者の方は覚えておいてください。

また、気球に影響をしてくる風ですが、下部では1年を通じて偏西風が、中上部では夏季は偏東風、冬期は偏西風、極地では夏は上昇気流、冬は下降気流が吹いているとのことです。

ルーン(Loon)の詳細と沿革

プロジェクトルーン(Loon)は、上記の成層圏を浮遊する高高度気球(通常の低高度気球とは異なる)に基地局を設置することで、世界中どこでも使える無線通信システム構築を目指すというプロジェクトです。

プロジェクトが開始されたのは2011年ですが、公表されたのは2013年6月です。ニュージーランドで30の気球を使用した公開実験が行われ、南半球のニュージーランド、オーストラリア、チリ、アルゼンチンをカバーする300の気球の打上げ計画を発表します。

2014年の5月にブラジルでLTE(携帯電話用の通信回線規格、Long Term Evolutionの略)の実験が行われ、2015年にはスリランカでルーン(Loon)システムが導入され、スリランカ全土でのLTE通信網が使用可能となりました。

技術面でも、2016年にレーザーを使用して2つの気球間の距離を100キロに安定的に保つことに成功します。ウェイモのレーザー技術が使用されているそうです。

2017年にプエルトリコをハリケーンが襲った際には30の気球を打上げ、緊急のLTE通信網を構築するなど、社会貢献でも実績を上げました。そして、2018年にはLoon inc.として、アルファベット傘下の子会社として独立を果たしました。

さらに2019年にはテレコム・ケニアと提携、ケニアの携帯電話通信網がない地域を対象として、初の商用サービスを開始しました。

ここで重要なのは、イリジウムと異なり、ルーン(Loon)独自のシステムを開始したわけではないということです。

既存のテレコム・ケニヤの無線基地局がない地域にはルーン(Loon)の気球に積まれた基地局が対応するという補完的なシステムとなっており、ユーザーはテレコム・ケニアのサービスを使用することになります。テレコム・ケニアの圏外の地域がルーンのおかげで大幅に減少したといえば、分かりやすいでしょうか?

そしてみなさまならば、この沿革を読んでなにか違うなと思われたのではないでしょうか?そうです、ビジネスモデルが変化しているのです!

ルーン(Loon)のビジネスモデルの変化について

ルーン(Loon)は、成層圏に気球を打上げて地球上を覆う気球による移動体通信網を構築するというアイデアから始まりました。しかし、2014年のスリランカ、2017年のプエルトリコを経て、2019年に商用サービスが開始されたのはケニアのみです。

つまり、いつの間にかイリジウム計画が構想された1990年代前半から2010年代前半のルーン・プロジェクト開始時まで引き継がれていた、南極でも、公海でも、砂漠でも世界中どこでも使える移動体通信網の構築というアイデアは消え去り、代わりに通信網の整備されていないある特定の発展途上国の地域への通信網の提供にビジネスモデルが変化しているわけです。グローバルからローカルへの大きな変化です!

みなさんは、是非ともこのモトローラとイリジウムの失敗と、アルファベットとルーンの成功から、学んでいただきたいと思います。

モトローラは上述したように、1990年代にはGE、コダック、IBMなどと並び、エクセレント・カンパニーと呼ばれていました。昔のハリウッド映画に出てくる警察が使用している無線機器、携帯電話、そして半導体において、リーディング・カンパニーとして君臨していました。しかし、携帯電話事業はグーグルからさらには中国企業に、半導体事業も売却され、現在ではほとんど話題にのぼることもない状況となっています。

対照的にアルファベット(Alphabet)は、時価総額は世界第4位、GAFAと呼ばれる4社の一つとして世界をリード、理系の学生の間では就職人気トップ企業となっています。

起業・スタートアップ後、最初に目指していた事業が予定通りに立ち上がらないことはよく起こることです。イリジウムは高価な衛星の打上げにこだわり続けチャプター11に陥り、多額な資金援助を行っていたモトローラ本体もその後衰退していくことになりました。

反対に、ルーン(Loon)は地球の成層圏を気球で覆い尽くすという当初の計画を修正し、商用契約を結んだ地域のみに数個の気球を打ち上げるというビジネスモデルに見事に修正を果たしました。コストが大幅に削減されたのはいうまでもないことでしょう。

こうしたビジネスモデルを環境に応じて変更するという柔軟性が、将来の起業家・アントレプレナーである閲覧者の方には求められてくるわけです。

ルーン(Loon)の技術について

ルーン(Loon)のサービスは正確には、成層圏の中でも高度18キロから25キロの間(成層圏の中下部)に打上げた高高度気球に設置されたアンテナ状の基地局を通じて4GLite無線通信サービスを提供する、というものです。

風速が10キロから30キロと安定している高度18キロから25キロの間に気球を打ち上げる事が非常に重要であり、その技術を有していることがルーン(Loon)の強みなのだそうです。

東京~ニューヨークなどの遠距離の飛行機に乗っていると、「この先気流が乱れていて機体が揺れるのでシートベルトをお締めください」というアナウンスが流れることがあります。これは、乱気流のためです。この乱気流は当然気球に影響を与えますが、ルーン(Loon)はAIを使用して季節や高度により変化する気流の流れを予測する取り組みを行っているとのことです。

今までいろいろな例で紹介してきましたように、アルファベットの強みは、子会社が持っているAIなどの技術を他の子会社の発展のために使用することでWin-Winを図っていることだと毎回痛感させられますね。

また、ルーン(Loon)は緯度や経度による気球の位置を、高度を調整することでコントロールできるとも宣言しています。気球に積んだガス(ヘリウムや水素など空気より軽い物質から構成されている)の量や濃度を調整することで可能になるとのことです。

成層圏では強い偏西風や偏東風が吹くので気球の制御は困難なわけですが、ビッグ・データとディープ・ラーニング技術で状況を予測し、気球を特定の場所に留めることが可能になったとのことです。

ルーン(Loon)は、当初はイリジウム同様に数百もの気球で地球上を覆うということを目標としていました。

しかし、上述のようにAIを使い気球の位置をコントロールできるようになったことで、地域ごとにいくつか(数個から数十個)の気球を設置することで基地局のない地域に無線通信網を提供することが可能になったとのことです。

通信システムは2.4~5.8GHZの3G相当の電波帯が使用されていましたが、現在ではLTEとなっています。

衛星電話と比較したルーン(Loon)の長所と短所とは?

ルーン(Loon)が2013年6月に最初に実験されたニュージーランドの農場では無線通信網が整備されておらず、イリジウムやインテルサットのような衛星電話システムを使用すると月に10万円以上の通信費がかかったそうです。75もの衛星を発射し、かつ宇宙を周回させていることで、高コストは避けられないわけです。

それに対して現在のルーン(Loon)のシステムでは、高高度気球で地球を覆うのではなく、限定された地域で数個から数十個の気球を飛ばすだけですから、低価格の通信費での利用が期待されています。

さらに、高価な専用端末を購入しなくてはならないイリジウムとは異なり、ルーン専用の携帯電話を購入する必要はありません

ケニアの商用サービスのケースでは、テレコム・ケニアにSIMカードで、またはドコモなどのキャリアのご自身の端末の国際ローミング機能で接続すれば、テレコム・ケニアの基地局がない地域ではルーン(Loon)の気球に搭載された基地局を通じてインターネット接続が出来るわけです。

野生動物を保護する国立公園、タンザニアと国境を接する野生動物が最も多く見られるマサイマラ国立保護区や、富士山よりも雄大なキリマンジャロ山を背景に象の群れなどの写真を撮れるアンボセリ国立公園などには、当然ですが、携帯電話の基地局は設置されていません

しかし、ケニアを訪れる観光客の最大の楽しみであるこうしたサバンナ地区でライオンなどの野生動物を見るチャンスがある早朝と夕方に実施されるサファリにおいて、ルーン(Loon)の気球に搭載された基地局を通じて観光客が自由にライオンの動画を故郷の家族に送付することも可能になったわけです。

観光客は、この電波は目に見えない成層圏にあるルーン(Loon)の気球から発信されているなどとは、夢にも思わないことでしょう。

このように、ルーン(Loon)は従来の衛星電話と比較すると、
1.月額の通信費は安い
2.高価な専用端末を購入する必要がない
3.地域のキャリアが基地局を建設していない従来なら圏外の地域でも圏内になる
などの多くのメリットがある
ということを、みなさんにもご理解いただけたと思います。

もちろん、長所ばかりがあるわけではありません。

数百万円の気球は表面をおおうプラスチックの劣化で約半年ごとの交換が必要、気球がAIでも想定外の強風で流されると通信が切れるなどです。それでも、アルファベットのAIやレーザー技術は日々進化を遂げているわけであり、プラスチックに代わる素材を見つけるのはアルファベットが成し遂げてきたことと比較すると、それほど困難とは思えません。

ルーン(Loon)の普及による世界的なインターネット通信網の拡大への期待

英語版ウィキペディアによると、2019年の段階での世界のインターネット普及率は、実はまだ54%にすぎません。36億人もの人々は、まだインターネットに接続できていないのです!

ルーン(Loon)が今後低価格の通信システムを提供できれば、アフリカや東南アジア、中東、ラテンアメリカなどの発展途上国のインターネット接続に大きな貢献をすることになると、アルファベットは考えているそうです。

インターネットに接続できない世界など考えられるでしょうか?日本では当たり前になっているニュースを取得する、家族や友人とSNSや電話で繋がる、ゲームや音楽、映画を楽しむ、観光やレストランの情報を得る、買い物をするなどの機会に恵まれない方は世界のほぼ半分を占めているわけです。

もちろんインターネット接続網の拡大は、世界最大の検索エンジンを有し、キャッシュ・カウ(市場成長率が低くても高い市場シェアにより稼ぎ頭となっている商品)であるアドセンスによる広告収入増加に繋がることもあるでしょう。

しかし、インターネットを理異様できないことから生じる情報格差、いわゆるデジタル・ディバイド添付の総務省の資料にありますように、国家や個人間の大きな格差を生じさせます。

ここまでの記事を読んでこられた閲覧者の方ならば、アルファベットが世の中をよくするためにこのデジタル・ディバイド解消のために貢献しようとしているのをご理解されていることでしょう。

ルーン(Loon)の競合会社

ルーン(Loon)には、2019年4月にソフトバンクの子会社であるHAPSモバイルが出資をしています。1億2500万ドル、約130億円という資金が、独立会社となったルーン(Loon)に必要だったのは間違いないでしょう。しかし、日本だけでなく米国にも販売ルートを持つソフトバンクの子会社がルーン(Loon)の事業のホールセール、つまり販売代理店になるということにも惹かれたのでしょう。

さらに、2月21日CNETの記事にあるように、以下のニュースが飛び込んできました。米国のボーイングと並ぶ航空機大手会社である欧州のエアバスの軍用機部門など12社が参加する空飛ぶ携帯電話基地局の実用化に向けた企業連合をHAPSモバイルが立ち上げたというものです。

こちらは気球ではなく無人航空機を成層圏に飛ばし長時間旋回させるというもののようです。

このように、地球上の基地局を建設できない海洋や砂漠地帯などもカバーできる空中の基地局による世界のインターネット化プロジェクトがどんどん出てきてしのぎを削ることは、世の中のためにも良いことですよね。

しかし、ルーン(Loon)が低コストでローカルに無線電話網を構築できることになったので、イリジウムから続く地球上を衛星や気球で覆うというビジネスモデルはもはや過去のものとなってしまったようです。

ブルームバーグのニュースによると、ソフトバンクが出資していたイギリスの衛星通信ベンチャーのワンウェブがチャプター11を申請したとのことです。

上記の未だインターネットに接続できない36億人を対象とした大市場においても、アルファベットが優位に立ちつつあるようです。自動運転、AIなど各子会社のシナジー効果がここにきて現れてきているようです。もはや、アルファベットの子会社を知れば世界の流れがわかる、という状況になってきているのかもしれません。

起業をお考えの方は、アルファベットの子会社について研究し、彼等が成長のために必要としているニッチな領域を見つけて起業し、買収されるというエグジットも考えるべきでしょう。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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