起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 アップル(Apple)買収企業
掲載:2021/1/29
最終更新日:2021/01/29
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はアップルとその買収した企業について、将来の起業家・アントレプレナーであるシニア・女性・若年層のみなさんと共に見ていきましょう。
起業・スタートアップを目指す方必見!アップルが買収する企業の特徴とは?
アップル(Apple)はご存知のように、GAFAとして知られる、世界でも最も成功している革新的なハイテク企業の一つです。創業者のスティーブ・ジョブズによる「消費者に見た目が美しく、高性能の製品を提供する。」というビジョンについては、起業・スタートアップを目指す閲覧者の方ならばご存知の方も多いと思われます。
しかし、現在のアップル製品が多くのM&Aにより成立していることについては、日本ではあまり知られていないでしょう。アップルは現在までに100以上の企業を買収していますが、その71は米国企業とのことです。
2019年のCNBCのインタビュにおいて、CEOのティム・クックは、2~3週間に1回の買収をしていると語っています。2019年後半には20から25社を買収したとのことです。
アップルの買収の特徴としては、以下が挙げられるそうです。
- 既存の製品、特にiPhoneを補強する技術を持っている
- 挑戦したい分野のIP(知的財産)を有している
- Siriなどを強化するAI技術がある
- アンドロイドなど、競合向けのプロジェクトは中止される
- 既存ビジネスに統合できる小さな企業が多い
米国証券取引委員会(SEC)に報告しなくてもよい小さな買収も多く、プレスに気づかれなければリリースもしないとのことです。実際の買収数は、発表されているよりはるかに多いようです。つまり、みなさんが起業される会社がアップルに買収してもらうことは、夢ではないということになります。
起業家・アントレプレナー注目!アップルが買収した主な企業
アップルは1988年のNetwork Innovation(ネットワーク・イノベーション)社を皮切りに、M&Aを開始しました。以下、英語版のウィキペディアが存在する企業と買収金額がトップ10の会社について簡単に紹介していきます。現在のアップル製品の根幹となっている企業については太字としています。
1997年 Next:ジョブズ氏が設立したワークステーション開発会社。独自のMacとアップルOSの始まりとなった原点というべき企業。買収金額も当時でも$404M(約450億)と巨額で、歴代4位となっている。
1997年 Power Computing Corporation:Mac互換パソコン開発会社、オリベッティが財務支援をしていた。
2000年 SoundJam MP:Mac OS互換のMP3音楽プレイヤー。買収後はiTunes1.0の元となった。この買収なくしては、現在のiTunesは存在していない。
2002年 Nothing Real:映画・テレビ・ゲーム業界向けのハイエンド・デジタル効果ソフトウェアであるShakeの元となった。視覚効果やいくつかの映像を重ね合わせて一つのものとして合成するコンポジティング技術を持つ。
2002年 Emagic:音楽用シークエンサーLogicで知られるドイツの音楽ソフトウェア・ハードウェア会社。現在はiLifeソフトウェアの一部となっている。
2005年 FingerWorks:マルチタッチ・キーボードのTouch Stream で知られるジェスチャー認識開発企業。
2006年 Silicon Color:Final Cut Proという当初マクロメディア社が開発したノンリニア・ビデオ編集ソフトを販売。
2006年 Proximity:世界に25のオフィスを持つデジタルCRM(顧客関係管理)ネットワーク企業。
2008年 P.A.Semi:ソフトバンクによる売却で話題のARMプロセッサーの設計者が立ち上げた、工場を持たない半導体設計企業。iPhoneなどのアップル製品用の頭脳となる専用のマイクロプロセッサー半導体を設計している。買収金額は歴代8位の$278M(約300億)。
2009年 Lala:オンライン・CDショップ。iTunesストアに統合された。
2010年 Intrinsity:高機能マイクロ・プロセッサー半導体をトランジスタをほとんど使用せずに低消費電力で開発できるデザインツールとサービスを提供
2010年 Siri:以前にご紹介したiPhone搭載の音声認識アプリ。
2010年 Polar Rose:顔認識ソフトウェアを開発するスウェーデン企業。
2010年 Quattro Wireless:何故かウィキペディアはない。アルファベット傘下のAd Mobと競合するモバイル広告会社であり、スマホでの広告事業の元となった。買収金額は歴代9位の$267M(約300億)。
2011年 Anobit:iPhoneやiPadなどに使用されるフラッシュ・メモリー半導体を製造。低消費電力でバッテリーの持続時間の長時間化に貢献している。買収金額は歴代3位の$500M(約540億)。
2011年 C3 Technologies:何故かウィキペディアはないが、当時のGoogleマップよりも技術的に優位に合った3Dマッピング会社。地図データを画像化する技術を持ちアップルマップの元となった。買収金額も歴代10位の$267M(約300億)と巨額だった。
2012年 Chomp:過去の履歴から検索するアプリ検索エンジンを開発。
2012年 AuthenTec:Touch IDに使用されている指紋センサーを開発していた半導体企業。買収金額は歴代7位の$356M(約380億)。
2013年 Hop Stop:現在のアップルマップに使用されているオンライン地図企業。
2013年 Cue:Siriに使用されている検索エンジン。フェイスブックやツイッターに自動でサインインできて、情報を取り出しまとめることができる。
2013年 Prime Sense:イスラエルの顔認識のための3Dイメージセンサーを開発する半導体企業。iPhoneなどに実装されたカメラに深い被写界深度を可能にした。買収金額は歴代6位の$360M(約390億)。
2013年 Topsy Labs:ツイッターやGoogle+などの会話を分析、応札して流行を探る分析企業。
2014年 Spotssetter:お出かけ場所などを推薦してくれる検索エンジンを提供。
2014年 Swell Radio:現在ではアップルミュージックに使用されている、ユーザーの傾向を分析するラジオ配信企業。
2014年 Beats Electronics:米国では最も人気のある高機能ヘッドフォン・メーカー。音楽ストリーミング機能もアップルミュージックに貢献している。買収金額は30億ドル(約3200億円)と、アップル史上最大の買収となっている。
2015年 Foundation DB:ビッグデータに活用されるnot SQL データベースを提供している。
2015年 Metaio:ドイツのAR関連企業。ARソフトウェア開発キットやスマホ用ARブラウザを提供している。
2015年 Turi:カーネギー・メロン大学が開発したマシンラーニングなどの大量のデータマイニング用計算ツールを提供。
2017年 Workflow:現在はShortcutとして知られるSiri用のマクロ実行アップリ。
2017年 Beddit:睡眠モニター機器を開発しているフィンランド企業。現在もブランドネームは存続している。
2017年 InVisage:スマホカメラで撮影した映像を改善するイメージ・センサーを開発している半導体デザイン会社。
2018年 Texture:Nextとして知られるデジタルマガジンアプリ。200以上の雑誌を読むことができる。月毎の課金モデル。
2018年 Aconia Holographics:世界でも有数の研究機関であるベル研究所からスピンアウトしたIn Phaseが2012年に同社に売却された。ホログラフィック・ストレージという同じ場所で複数のイメージを記録でき、転送速度も速い大容量データ保存技術を有する企業。
2018年 Shazam:マイクから拾ったサンプルから数十秒で楽曲を認識するアプリ。サウンド・ハウンドなどの競合との違いは、映画やテレビ番組の音楽やキャスト、番組のウェブサイトなども特定できる点。買収金額は歴代5位の$400M(約430億)。
2018年 Dialogue Semiconductor:アプリケーションに特化した英国のASICパワー半導体企業。買収金額は歴代2位の$600M(約650億)。
2019年 Drive.ai:AIを使用した自動運転システム開発企業。
2020年 Dark Sky:ウィキペディアはない。天気予報アプリ。
起業・スタートアップを目標とする方注目!アップル製品の主機能は買収した企業の技術を内製化している!
このように多くの企業を買収しているアップルですが、未来の起業家・アントレプレナーであるみなさんは、MacシリーズのPCやiPhoneなどのスマホやiPadなどの頭脳であるマイクプロセッサー、バッテリーを長持ちさせるフラッシュメモリーやパワー半導体などは、全て買収した半導体企業の技術により内製されているのだと気づかれたことでしょう。Macシリーズのハードウェア、iPhoneのSiri,アップルミュージック、アップルマップ、AI技術、アップルストアなど、ほとんどの製品が買収企業なしには存在していないといっても過言ではないでしょう。
そして、買収後は、アップルの基本理念である、「洗練されたデザインの製品をアメリカでデザインし、中国で組み立てる」ことで、独自のオシャレで高機能な製品ラインアップをそろえ、世界中にアップル・ファンを増やし続けているのです。
次回からは上記の買収企業の中から、スタートアップをめざす閲覧者の方に親しみやすいであろう、みなさんでも起業できそうな企業を紹介していきます。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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