海外企業紹介

副業・起業のためのシリコンバレーの企業紹介
コインベースグローバル(Coinbase Global)

掲載:2021/11/29

最終更新日:2021/11/29

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はコインベースグローバル(Coinbase Global)について、将来の起業家・投資家であるシニア・女性・ミレニアル世代のみなさんと共に見ていきましょう。

投資・副業・起業を目指す方必見! コインベースグローバル(Coinbase Global)と仮想通貨の概要

コインベースグローバル(Coinbase Global)は、米国最大の仮想通貨交換・暗号資産取引所の運営企業です。仮想通貨のマイニングから獲得できる報酬を意味する「コインベース」から命名されたそうです。2021年4月に上場を果たし、日本の米国株投資家の間でも注目され始めています。

扱っている仮想通貨は、起業家・投資家を目指すみなさんにもおなじみのビットコインを始め、2021年には値上がり率がビットコインを上回り仮想通貨投資家に知られ始めているイーサリアム、ビットコインキャッシュ、イーサリアムクラシック、ライトコイン、テゾスなど多岐にわたっています。ビットコインの取引はなんと世界190カ国で実施されているそうです。

コインベースグローバル(Coinbase Global)についての解説を続ける前に、まず将来の起業家・投資家のみなさんと、仮想通貨について振り返ってみましょう。

仮想通貨とは、中央銀行によって発行された通貨ではなく、非公的な機関により発行され、規制もなく、仮想コミュニティで流通・取引されている通貨を指します。中国政府が力を入れ、欧州でも検討されている中央銀行によるデジタル通貨については含まれません。こうした公的デジタル通貨と区別するために、暗号資産とも呼ばれます。

ポジティブな面を見ると、中央銀行が発行している通貨の価値が著しく減価し、ハイパーインフレが起きている発展途上国、例えばトルコなどでは一般にも広く流通しており、人々の生活に役立っているようです。また、2021年にはエルサルバドルで、ビットコインが法定通貨としての地位を確立しています。

反対に、ネガティブな話題としては、通貨を発行するためのマイニングと呼ばれる作業には大量の電力を必要とするので石化資源同様に地球温暖化を促進している、マネーロンダリングに使用されている、取引所からのハッカーによる多額の盗難が何度も起きているので投資家保護が行き届いていないなどの批判が見られます。

将来性についての意見をみてみても、賛否両論です。ポジティブな意見としては、新型コロナウイルスの世界的流行により米ドルを始めとする法定通貨の価値が下がったため、金を補うためのデジタルゴールドとして期待する声があります。ネガティブな意見としては、ボラティリティーがあまりに大きいため、ギャンブル性が強すぎて分散投資の対象とならないというものがあります。

いずれにせよ、FXでのトルコリラなどの高金利通貨への投資など可愛く見えるぐらいの投機であるのは確実でしょう。マクロからもテクニカルからも、将来価格が誰にも予想できないですから。投資をするにしても、全体の10%を上限にするのが賢明でしょう。

投資家・起業家注目!ビットコインの歴史

次に、ビットコインの歴史について、簡単にみていきましょう。

最も有名な仮想通貨であるビットコインは、2008年にサトシ・オカモトという日本人名をかたった謎の人物または機関により開発されたということになっています。実際のところは不明です。しかし、日本人が開発したためなのか、2010年代までは、ビットコインは日本を中心に取引されていたのは事実です。

ビットコインが日本で最初に注目を集めたのは、2014年にマウントゴックスという東京に拠点を構えた大手取引所がすべての取引を突然に中止し、ウェブサイトが消去された事件です。実は前年から取引の一時停止がおき、顧客への払い戻しに数ヶ月もかかるなど不審な動きが起きていました。

巨額の不正引き出しが行われたということですが、会社はその後民事再生法を申請、顧客へ払のい戻しがすぐには行われない事態となりました。この事件で、日本ではビットコインなど仮想通貨取引は怖いというイメージが普及しました。

しかし、アメリカでは、ネット旅行予約大手のエクスペディアやパソコン大手のデルがビットコイン決済を開始するなど、徐々に普及し始めました。

そして最初のブームが起きたのが、2017年です。年初に約10万円(900ドル)だったビットコインの価格は、5月には約30万円(2,700ドル)となり、金価格を初めて上回りました。12月には約230万円(1.98万ドル)を超えて、日本でもビットコイン長者が生まれたのは記憶に新しいところです。

しかし、翌年には暴落し、年末の価格は35万円(3,000ドル)となりました。やはりビットコインが怖いと思われた未来の投資家・起業家の方も多かったと思われます。この第1時ブーム(一般においての話)では、アメリカよりも日本においてビットコインの取引が多かったのです。

そして、2020年に新型コロナウイルスの流行により米国において失業給付金が支給されると、アメリカを中心に株や仮想通貨への投機が起こります。さらに、データ分析大手のマイクロ・ストラテジーや電気自動車最大手のテスラがビットコインの購入を発表すると、アメリカを中心にビットコインの第2次ブームが起きました。1月に約75万円だったビットコイン価格は株式と同じく3月に底値をつけると上昇に転じ、8月には1万ドル(約110万円)を回復し、12月には2万5千ドル(約275万円)となり、2017年の最高値を更新しました。

2021年になってもビットコイン価格は急上昇を続け、4月にはおよそ2倍の6万ドルを超え(約700万円)ました。同年2月にはバンク・オブ・ニューヨーク・メロンが仮想通貨の資産管理業務に参入、Paypalに続いてマスターカードが仮想通貨決済を導入、3月にはモルガン・スタンレーがビットコイン運用ファンドを開始し、世界最大級の投資家であるカリフォルニア州年金基金が仮想通貨交換会社の株式を取得するなど、多くの追い風が吹いたのが原因でしょう。

しかし、上昇の立役者だったテスラのCEOであるイーロン・マスクが、地球温暖化反対の立場のはずなのになぜマイニングに多量の石化エネルギーを使用するビットコインを支持するのかという批判が起きるとビットコインの否定に転じ、さらに独自のデジタル通貨流通を目指すマイニングの中心地である中国で、中国政府が規制に乗り出したこともあり下落に転じます。価格は3万ドル(約330万円)まで下がりましたが、7月末時点では4万ドル(約440万円)近くまで戻しています。今後の動きについては神のみぞ知るというところでしょうか?

米国株投資・起業を目指す方必見! コインベースグローバル(Coinbase Global)の沿革

コインベースは、2012年にサンフランシスコで設立されました。Yコンビネーターのスタートアッププログラムに応募、銀行を通じたビットコインの売買を開始しました。

2013年のシリーズAで約5億円、年末にはさらに約25億円を調達しています。今までご紹介してきた数々の例から、VCなどが実施するスタートアッププログラムへの参加による知名度アップが資金調達への近道だと気づかれたのではないでしょうか?

調達した資金を使用した販促活動により、2014年にはユーザー数が100万人を超えました。ハッキングによる資金流出が仮想通貨取引企業では度々起こっていますが、コインベースグローバル(Coinbase Global)は、調達資金をブロックチェーンや賭け手法開発企業などの買収にも振り向け、同社のサーバーでのビットコイン保有の安全性を高めました。そしてPC大手のデルや旅行オンラインサイトのエクスペディア、タイム紙などと提携し、彼等の顧客のビットコインでの支払いを可能とし、ビットコインの利便性をアップさせました。

コインベースグローバル(Coinbase Global)というホールディングス企業をデラウェア州に設立し、コインベース本体や買収した子会社はすべてその配下におかれました。起業や投資家を目指す読者のみなさんには、グーグルがアルファベット配下になったのと同じ構図だとご理解いただけるでしょう。仮想通貨取引には様々は種類の企業が必要になってくるので、持株会社が必要だということです。

2015年にはニューヨーク証券取引所や大手銀行から約75億円を獲得し、プロ向けの仮想通貨取引所であるコインベースエクスチェンジを創設しました。2016年にはグローバルアセットエクスチェンジ、2018年にはコインベースプロに改名されました。

これにより、コインベースグローバル(Coinbase Global)は、単なる仮想通貨売買企業から、取引所運営企業へとビジネスモデルが変化したのです。この時点で同社の競合他社への優位性は確立されたといえるでしょう。翌年には三菱UFJ銀行も約10億円を出資しました。

2017年には他の仮想通貨を扱うライセンスを獲得し、イーサリアムとライトコインの取引も開始されます。その後ビットコインキャッシュなども追加されました。そしてブロックチェーンや仮想通貨関連のアーリーステージ向けのVCを設立し、イーサリアムでの個人間貸し借りを行うコンパウンドラブに投資しました。アマゾンクラウドの幹部がエンジニアリングのトップにつくなど、サーバーの信頼性の向上に努めています。

2018年にはコインデスク誌によるロイターの予想によると、約550億円の収入をあげ、黒字化を達成したとのことです。イギリスでの収入が3分の1だったそうです。しかし、2019年には売上は伸びず、赤字だったようです。

その後新型コロナウイルスの流行の中で2020年にビットコインなどの仮想通貨が急騰したのは、上述した通りです。コインベースグローバル(Coinbase Global)も、大きく売上と利益を伸ばしました。12月時点では、4300万人のユーザーを抱え、売上は約1,000億円に達しました。売上の半分近くは10月から12月の第4四半期であり、年末に急成長したことが伺えます。

2021年4月にはナスダックに資金調達無しで直接上場を果たし、時価総額は約9兆円となりました。8月にはインテルが約3000株を保有していると発表しました。そして8月17日にはブルームバーグの記事にあるように、三菱UFJ銀行と提携というニュースが飛び込んできました。同行の口座保有者はビットコインやイーサリアムなど5種類の仮想通貨をクイック入金で簡単に購入できるそうです。仮想通貨が日本でも一気に身近になったわけです。

投資家・起業家注目!コインベースグローバル(Coinbase Global)の特徴と問題点

コインベースグローバル(Coinbase Global)は上記のように、単なる仮想通貨交換企業ではなく、仮想通貨取引所も運営しているわけです。保有は約190カ国、取引は32カ国で可能となっています。

アプリ開発と仮想通貨での支払いのためのAPIを公開しています。そのためユーザー規模の拡大が期待できます。また、仮想通貨が金融緩和下での米ドル不振によりデジタルゴールドとして注目されている点も、追い風です。

アラスカ州を除く全米では専用ATMも約3万台となり、そのうち1万台はこの半年で設置されたものであり、急増しています。三菱UFJ銀行からのクイック入金で取引開始できる点も含め、ユーザビリティが向上しているのは確かでしょう。

反面、個人ユーザーから手数料収入が90%を占めており、機関投資家からの収入も伸びてはいますが、まだ数%にすぎません。そのため、業績はビットコインなどの仮想通貨の価格に影響され極めて不安定という問題点が挙げられます。新型コロナウイルスのおかげで2020年、2021年は大きく業績を伸ばしていますが2019年は赤字だったことからも伺えます。同社株を現時点で購入するのはギャンブルといっても、過言ではないでしょう。

次の問題点は、仮想通貨についてはマネーロンダリングの温床となる、マイニングに大量の電力を消費するなどイエレン財務長官を始め政府が否定的なことがあります。

そして、仮想通貨取引では消費者保護という点がやはり以前のFX同様に問題となっています。

実は2019年には、コインベースグローバル(Coinbase Global)も、ハッキング攻撃でイーサリアムクラシックの取引停止に追い込まれました。しかし、優秀なエンジニアリングチームの活躍で盗難は防げたのは称賛に値するでしょう。買収したイタリアのブロックチェーン企業のハッカーとの不透明な関係も問題視されました。

結論としては、まだまだ未整備な業界ですが、FXや株式と比べるとボラティリティーが高いながらも仮想通貨市場は成長を続けていくのでしょう。また、その中では取引所を運営し、世界展開にも成功し、システムが安定しているコインベースグローバル(Coinbase Global)はトップランナーとなるのは間違いがなさそうです。

将来の投資家・起業家のみなさんも、仮想通貨が再度暴落した際には打診買いをしてみるのはありかもしれないですね。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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