起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
ディスポ(Dispo)
掲載:2022/6/29
最終更新日:2022/06/29
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は写真共有SNSアプリを提供している注目企業ディスポ(Dispo)について解説します。
ディスポ(Dispo)の資金調達の経緯
ディスポ(Dispo)は、クラブハウスやインスタグラムの競合ともいうべきSNS機能も装備した写真共有アプリです。オンライン掲示板レディットの創業者も出資し、人気となりました。使い捨てカメラ機能を持ち、社名は英語でそれに当たるdisposal cameraに由来しています。共有できる写真はこのアプリで撮影したもののみとしたことで、ユーザーのロイヤルティを完全なものにしています。
2020年10月にシードラウンドとして人気DJデゥオのザ・チェインスモーカーズも含めたからファンドから約5億円、21年2月にシリーズAで約24億円を調達、市場価値は約240億円となっています。
6月のシリーズAでは、写真家のアニー・リーボヴィッツやNBAのスーパー・スターのケビン・デュラントなども出資しました。
ディスポ(Dispo)の概要と沿革
ディスポ(Dispo)は2019年12月に当時23歳だった人気ユーチューバーのデビッド・ドブリックが創業した歴史の浅い写真共有アプリです。共同創業者はスポーツ・イラストレイテッドで水着モデルとしてもデビューしたナタリー・マリデュエーナで、芸能人が設立した会社といえるかもしれません。インスタグラムに使い捨てカメラで撮影した写真をアップしたところ人気となったので、iOSに“David’s Disposal”という名前のアプリをローンチしたところ、アップルストアでディズニー+やインスタグラムを抜いて最も人気のアプリとなり注目されました。当初はクラブハウスのように招待制でした。
インスタ、ピンタレスト、フリッカー、ピカサなどで混雑したレッド・オーシャンへの参入でしたが、他のアプリにはない特徴で人気となっています。
2020年9月にディスポにアプリ名と社名を変更しました。
2021年3月にSNS機能をつけて再度ローンチします。この際に招待制度は撤廃しました。
6月には創業者が退社しますが、その際に上述のセレブからの出資を受けることとなりました。この3ヶ月の間に、米国、ドイツ、スペイン、ブラジル、日本において、画像・動画アプリ部門でトップ10に入りました。
7月には日本オフィスもできたようなので、日本で人気となるかもしれません。
ディスポ(Dispo)の商品
ディスポ(Dispo)は画像共有アプリですが、使い捨てカメラというコンセプトに基づいています。インスタなどと同様に、撮影した画像をアップして、友人とシェアして楽しみます。いいねや、コメントはできますが、編集機能がありません。トリムも加工もできないので、盛ることもできません。
アプリのインターフェースは、まさに「写ルンです」そのままです。撮影した写真は、フィルムカメラ時代の現像と同じで、投稿後翌朝朝9時まで確認できません。撮影した写真は1ドル/枚で3週間以内に現像されたものが届けられるサービスに加え、画像をダウンロードして日本でいうとマツキヨのようなドラッグストアチェーンで20セント/枚でピックアップも可能なようです。
その場で画像を確認できないので、デジカメにはないワクワク感があります。米国の若者には、そのレトロ感が受けたようです。日本でも若い世代に「写ルンです」が人気となったのと同じ構造のようです。
カメラ機能がズーム、フラッシュのみで、ファインダーも小さく、シンプルな点も使い捨てカメラと同じです。
ピンボケなどがあるので沢山の画像を撮ってまずはライブラリに保存します。そこから良い画像を選んで、ロールに入れるのです。
昔のフィルムカメラでよい写真のみをアルバムに入れるのと同じ感覚で、シニア層にも受ける可能性もあります、しかし、シンプルなので写真マニアは満足できないかもしれませんね。
ロールにロール名を書き、仲間だけのプライベートまたは公開のどちらかを選び投稿します。仲間内のパーティはプライベート、皆に見せたい写真は公開などとロール毎に変更できます。
最初は招待制でしたが現在は撤廃、ロールに一緒に写真を投稿するには友人をロールに招待するまたは友人のロールに参加依頼をして許可してもらう必要があります。
キャノンの携帯カメラの「Inspicrec」のSNS版、iPhone対応のみで、アップルIDまたはスナップチャットID対応のみということから、ターゲットマーケットがティーンズだと分かりますね。
タイムラインがなく、ロールという機能に投稿します。見るには相手のロールにアクセスする必要があります。ロールはフォルダーなので、テーマごとに複数作れます。
友人とパーティの写真をシェアしたり、見知らぬ人からの投稿もあるようです。
ディスポ(Dispo)はインスタグラムやVSCOが競合とされているようです。フリッカーのような画像共有アプリというよりは、画像を共有して楽しむSNSということです。そして、メインユーザー層がティーンズという点が注目点です。何度か説明しましたが、ティーンズに受けているアプリがそのうち全ての世代に浸透していくからです。フェイスブックがワッツアップへ、ワッツアップがインスタへと人気が移行したように、そしてインスタからスナップへと移りつつあるようにです。ディスポ(Dispo)の上場のニュースを注目したいですね。
ところで、「写ルンです」は80年代に日本で大ヒットした日本製の使い捨てカメラです。米国でのヒットは90年代だったようです。こうしたアイデアだけでも、十分に起業は可能なわけです。せっかくの日本の製品が米国人にアイデアを持っていかれて、起業されてしまったのは非常に残念です。日本の起業家の方にも、ぜひとも頑張って頂きたいです!
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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