海外企業紹介

ジョビー・アビエーション(Joby Aviation):実用化も近い!?空飛ぶ車

シリコンバレーの注目企業紹介

掲載:2024/5/20

最終更新日:2024/10/15

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は「空飛ぶクルマ」の開発企業として注目されるジョビー・アビエーション(Joby Aviation)について解説します。日本でもANAホールディングスとの提携により、2025年の大阪・関西万博を起点に「空飛ぶタクシー」実用化の計画が進められています。

ジョビー・アビエーションの資金調達の経緯

ジョビー・アビエーションは「空飛ぶ車」を開発しているスタートアップの一つです。空飛ぶ車は英国の戦闘機「ハリヤー」で知られる垂直離着陸機の概念から生み出されました。ただしジェットではなくプロペラ駆動で、以前紹介した宅配用のドローンが乗務用に転じたようです。eVTOLと呼ばれる電力駆動型が主流となっています。

 

画像出典:ジョビー・アビエーションHP

2009年にNASAにより発表されたコンセプトで、現在はボーイング、エアバス、ホンダなどの大手も参入しています。その中で創業も古く、来年にも「空飛ぶタクシー」事業開始を目標としているというジョビー・アビエーションを取り上げることにしました。

2016年にシリーズaで約36億円を集め、軌道に乗りました。2018年にはインテルやトヨタ、格安航空企業ジェットブルーなどの事業会社も含めたシリーズbで約130億円を調達します。2020年のシリーズcではトヨタが主導し約800億円を集め、十分な資金を確保しました。2021年にSPAC企業との合併でジョビー・アビエーションに改名し、ニューヨーク証券取引所に上場を果たしました。

ジョビー・アビエーションの概要と沿革

ジョビー・アビエーションは、2009年にJoby Aeroとしてカリフォルニア州サンタクルーズで設立されました。当初は創業者が会社を売却して入手した広大な土地にコテージを建て、従業員と共同生活をして試作機作成を目指していたようです。最初の数年間はモーター、ソフトウェア、リチウムイオン電池などの部品の調達に費やされました。サーフィンをしたり、ピザパーティーをしたりと、近年引退したパタゴニアの創業者を想起させられました。前述のトヨタのVCのトップもこの経営スタイルに魅せられたそうです。NASAによる電動飛行機開発プロジェクトにも参加していました。

2015年に実際よりも小型の試作機を、2017年に実物大の無人試作機を開発しました。このS2と呼ばれるモデルは飛行機型で、プロペラが主翼に8つ、尾翼に4つ装着されていました。2018年に初めて条件付きでジャーナリストに情報を公開し、上記のシリーズbに繋がったようです。

2019年に発表されたS3という量産機では主翼に4つ、尾翼に2つにプロペラ数が半減されました。この頃から連邦航空局との交渉も始まったようです。トヨタの出資によりトヨタ型の製造ノウハウを手に入れたことで、実用化への展望が開けたと推察されます。航空機ではなく、車のように数千台以上の生産体制を敷くことを目標としているそうです。

そして競合製品「Uber Elevate」を開発していたUberと提携し、2020年には「Uber Elevate」部門を買収しました。これによりUberが掲げていた「空飛ぶタクシー」構想を進めていくことになります。また、Uberからは約100億円の出資と配車システムや市場予測などのソフトウェアも獲得しました。同年にはS4という6つのプロペラを持つヘリコプター形状の試作機を発表しました。また、シリコンバレー南部のモントレー郡のマリーナ空港での機体の生産開始も発表しました。

2021年には連邦航空局の許可を得てテスト飛行に成功しました。77分の充電で約250キロ飛行できるそうです。2022年には4〜5人乗りの単発エンジン機の運行の認可も獲得しました。しかし、遠隔操作機の墜落事故が発生したことは、テスラの自動運転走行車の事故を思い起こさざるを得ません。

日本でも動きがみられました。ANAと提携し、ロイターの記事 によると国交省への認可も申請したようです。トヨタが出資しているからなのか、日本を重要市場と認識してくれているのは、ジャパンパッシングに慣れてしまっている環境では非常に嬉しいニュースですね。さらにこちらの記事にあるように、デルタ航空も出資。ニューヨークとロサンゼルスで家から空港まで乗客を運ぶ「空飛ぶタクシー」構想を進めていくようです。

 

画像出典:ジョビー・アビエーションHP

ジョビー・アビエーションの商品

ジョビー・アビエーションはヘリコプター形状のeVTOLを開発しています。6つの回転プロペラは1つが停止しても浮上状態を保てるそうで、プロペラは浮上するまでは上向き、その後は前向きとなります。競合他社のように2人乗りではなく、ドライバーと4人の乗客を想定しているのは、ライドシェアがビジネルモデルだからでしょう。

問題は、5人の乗客+荷物などを乗せるには大容量のバッテリーが必要となることで、コスト面で実用化のハードルが高いようです。EV電池は大型の場合は特に発火性も問題であり、バッテリーの進化が必要なようです。最高速度が325キロで、空港までの所要時間は車の約5分の1を想定しています。
電動なので環境に優しく、離着陸時の騒音もヘリコプター比較で大幅に小さいとのことでしたが、この動画を見る限りでは過剰宣伝と思われました。

空港から自宅までの送迎サービスは「Uberコプター」というUberが掲げていたものを踏襲しており、ニューヨーク市内から国際線専用のJFK空港を想定しているようです。メルボルンやダラス、L.A.も候補地でしたが、デルタとの提携記事を見る限りでは、ニューヨークとロサンゼルスが先行するようです。

将来性は有望です。モルガン・スタンレーのリサーチによると、2040年までに約200兆円に急成長するようです。話題の自動運転はある企業のエンジニアの話では完全な自動運転の実現はまだ10年はかかるとのことでした。こちらの空飛ぶ車は市場規模も大きく、ヘリコプターの代替にもなるわけで、実用化ははるかに早いのではないでしょうか。競合他社も含めて、注目しておいても損はない市場でしょう。

著者:松田遼司 株式会社ウェブリーブル代表。 東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。 FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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