ビリール(Be Real):盛れない!映えない!SNSで人間関係が変わる?
シリコンバレーの注目企業紹介
掲載:2024/4/25
最終更新日:2024/04/25
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はリアルな日常を投稿するスタイルによって若者世代の友人関係に変化をもたらし、SNS依存の減少につながるとも言われているSNS、ビリール(Be Real)について解説します。
ビリールとスナップチャットの共通点
ビリールは、ミレニアルやZ世代に人気急上昇中のフランス発のSNSです。2022年から急に注目され始めました。毎日ランダムな時間に通知が来た後、2分以内に投稿する必要があり、「本物」の友人の姿を見ることができるというのが人気の理由です。
TikTokと並び、インスタグラムに対抗しうるティーンズに人気のSNS「スナップチャット」を以前紹介しました。こちらは投稿が閲覧後すぐに消えるので、友人におどけた自分の姿などを送付できることで話題となっていました。
インスタやTikTokなど従来のものとは異なり、この2つのSNSに共通するのは、
1.不特定多数ではなく友人が対象
2.盛った自分ではなく、素の自分の姿を見せる
3.編集や加工などによるSNS疲れを防げる
というものです。
若い世代に流行ることがSNS市場では先行指標となるのが理由でスナップチャットを紹介したわけですが、ビリールは2022年4月に約40億円、5月に約110億円を調達、評価額は約800億円になりました。
ビリールの概要と沿革
ビリールは、2020年に元GoProの社員など2人により、フランスのパリで創業されました。映画などの映像で予備用のカットを意味するB-Reelと無修正のRealな映像というダブルミーニングにより命名されたそうです。
前述のように2022年に資金を調達後は、アンバサダープログラムを立ち上げ、インフルエンサーにお金を払い宣伝してもらうことで、同年から米国の大学生の間で人気となりました。やはりいくら良い商品でも知られないと成功できない、マーケティングを行うための資金調達が最も重要だと理解していただきたいです。
5月には全世界で1100万ダウンロードを達成、8月には1000万DAU(デイリーアクティブユーザー)、月間ユーザー数は2200万へと、急成長しました。現在は英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語、オランダ語などの西欧言語と韓国語、日本語に対応しているようです。日本も対象にしてくれているのは嬉しいですね。特に本国フランスと、アメリカ、イギリスで人気だそうです。
ビリールの商品
ビリールの商品は、毎日ランダムな時間に通知された後の2分後に投稿するリアルなSNSです。フィルターもない無修正画像で、準備の時間もありません。その瞬間にいた空間での撮影なので、平凡だが虚構ではない、信頼性の高い投稿となります。
1日に1度通知が来たら、前後両方のカメラで自分と背景の両方の画像を撮影、2分以内に投稿するのがルールです。通知時間は毎日変わるので、いつ来るのかは分かりません。背景画像により、その瞬間に何をしていたのかが分かります。写真だけでなく、キャプションも追加が可能です。
また、削除をしての再投稿も1日1度だけ許されています。2分間以内に投稿しないと、何分遅れとか、何回撮り直したかと大きく表示されてしまいます。大きく遅れたり、撮り直していると、化粧などして盛っている?リアルではないのではないか?と疑われてしまうわけです。通知が来た瞬間から前日の他人の投稿が見られなくなります。これはスナップショットと似ていますよね?さらに、2分後には投稿をしていないと、当日のものも見られなくなるので、見たければ投稿せざるをえないというシステムです。
ありのままの自分を見せることになるので、公開先は原則として友人のみとなります。自分が投稿をしないと他人の投稿が閲覧できないのも特徴となっています。友人以外も見られる「ディスカバリー」というセクションもありますが、コメントは送れないそうです。インスタのようにフォロワーが沢山いて、見られる人と見る人がいるセレブとファンの関係ではなく、対等の関係ということになります。パーティー、旅行、高級レストランなどの非日常ではなく、通知が来たときの場所である日常を共有する点もインスタとは異なります。
「インスタ映え」など盛るという現実逃避を減らし、費やす時間を減らすことで、SNS依存症を減らすことができるそうです。電話への回帰にもつながるし、友達の本当の姿がわかるそうです。ミレニアル世代もゼット世代も盛るのに疲れているのです。
絵文字の代わりにセルフィーで撮影した自分のジェスチャーや表情で相手の投稿への感情をリアルに表現できる「リアル文字」が受けているそうです。広告もなく、フォロワー数のカウントもなく、YouTubeやインスタのように有名になるためのSNSではありません。クッキーや利用方法でのユーザー情報の収集は行っているようですが。
不特定の大勢と薄く繋がる世界から、昔のように特定の少数の友人と濃く繋がる世界への回帰となっている点が、評価できると感じました。電話をしたり、実際に会っている友人だけが世界だった頃を知っている大人にも人気となる可能性もあるのではないでしょうか。
ビリールの将来性
もちろん、ビリールも長所ばかりではありません。インスタやTikTokに慣れてしまった層からは、現実過ぎてつまらないという指摘もあるようです。遅延投稿も許されるので、常習犯となるユーザーも出てきているようです。やはり「盛りたい」という意識を捨てられないのでしょう。友人よりもセレブがその瞬間何をしているのかというリアルを知りたいので、セレブにインスタよりもビリールをやってほしいという声もあるようです。
スナップチャットと同様に競合他社から意識され、インスタが2022年7月にデュアルカメラ(前と後の2つのカメラ)を、8月に「Candid Challenge」を、TikTokが9月に「TikTok Now」という競合品をリリースしました。
マネタイゼーションの方法はよく分かりません。しかし、米国でTikTok禁止への動きがあることもあり、注目に値する企業なのではないでしょうか。
著者:松田遼司 株式会社ウェブリーブル代表。 東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。 FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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