海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 Desti(デスティ)

掲載:2020/12/21

最終更新日:2020/12/21

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はDesti(デスティ)について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業家・アントレプレナー注目!CALOプロジェクトとその特徴とは?

Desti(デスティ)は、旅行ガイドアプリを提供するSRIインターナショナルからのスピンアウト企業です。

SRIインターナショナルの音声認識補助のためのAIプロジェクトであるCALO(Cognitive Assistant that Learns and Organizes)を使用しています。CALOは、iPhoneの音声認識ツールとしてお馴染みの、Siriにも採用されています。

ここで、まずはCALOプロジェクトについて簡単に説明しておきます。

CALOプロジェクトは、iOS5以来アップルのiOSの一部となっているSiriで知られるようになりました。実は今回ご紹介するDesti(デスティ)以外にも、スマートカレンダーのTempo AI(テンポAI)、ゲーム開発のKuato Studio、まとめサイトのTrapit(トラッピット)など、多くのSRIインターナショナルのスピンアウト起業に採用されています。

CALOも、以前にウィキペディアを添付したので今回は省略しますが、もう閲覧者のみなさんお馴染みのDARPAによる出資により開始されました。25のトップレベルの大学や企業からの300人以上の研究者が集結し、5年間に渡り開発されました。

理由付けができ、経験から学び、反映し、言われたことを実行し、何を行っているのかを説明し、突然の要求にも明確に回答するという、新世代の認識ツールのローンチを目指したのです。その後、SRIインターナショナルがコーディネータとなり、評価を行い、ユーザーにとって価値のある認識アシスタントツールを完成させました。

CALOは毎年、ユーザーの生活から何を学んだのかという153もの問題からなる達成度テストを受けるのです。評価者は、開発者から与えられた機能ではなく、CALOが自身でどれだけ学んでパフォーマンスを進化させたのかを評価するのです。使えば使うほど進化していくというAI機能を持つことが、CALOの特徴だといえるでしょう。

起業・スタートアップを目指す方必見!Desti(デスティ)とは?

Desti(デスティ)は、2011年に設立されました。CALOを利用してユーザーの旅行プランを助ける点が特徴の、旅行ガイドアプリです。旅行に特化したSiriという表現が一番わかり易いようです。

ベータ版は2012年に公開されました。2013年にはあるアクセラレーター主催のピッチ大会で最終選考にまで残り、資金調達に成功しました。そして、最終的にはノキアの地図部門に買収されることになります。

Desti(デスティ)でユーザーは目的地を探すだけでなく、様々なカテゴリで選別でき、決定した旅程を保存することができます。CALOのAI技術により、プロの記事から一般の方のレビューまで全てを読むことで、ユーザーは目的地についての深い知識を得ることができるのです。さらに、音声認識ツールでのユーザーとのやり取りで、ユーザーが何を求めているのかを細かく理解し、最適な回答を瞬時に提示することができます。

例えば、「ナバ・ヴァレーのピノ・ノワールのワイナリーに行きたいんだけど」、とDesti(デスティ)に話しかけると、ナパのピノを醸造しているワイナリーをすぐに提示してくれます。その上、ワイナリーそれぞれの特徴や場所も提示してくれるので、自分で調べるよりもずっと簡単にどのワイナリーに行くべきなのかを決めることができるのです。

起業・スタートアップを目指しているシニア・女性・ミレニアム世代などのみなさんも、旅行プランを立てるのは非常に面倒だということはご存知でしょう。目的地が決まったとしても、どこのホテルにするか、どこでランチ、ディナーを取るか、どの観光地に行くかなど、多くのウェブサイトを見なければならないのです。そして、サイト上のユーザーの評価をいくつも読んで最終的に全てが決まるまでには、半日、長ければ1日仕事になってしまうでしょう。

それに対して、Desti(デスティ)をみなさんが使用するとすれば、目的地でのホテルやレストラン、訪れたい観光地の好みを伝えると、Web上の評価に基づいた最適のホテルやレストラン、観光地を自動的に抽出してくれるわけです。これで、どれだけ便利なアプリなのかお分かり頂けたのではと思います。

さらに改良版では、地図に基づいて旅行の計画を立案できるので、抽出されたレストランやホテル、いくつかの訪れたい観光地を、目的地へのルート上に表示してくれるのです。筆者もそうですが、この神社の後にこのお寺を廻ったら戻ることになるので、お寺を先に廻ればよかったという経験が、みなさんもおありでしょう。Desti(デスティ)を使えば、こうした事態を回避できるわけです。訪れたい場所を、効率よく廻ることができますよね?

また、Google Docsと同様に、友人や仲間と一緒に旅行プランを立てることもできるそうです。みなさんが気に入った観光地やホテル、レストランを友人のために記録として残すことが可能なわけです。信頼できる友人が気に入ったホテルやレストラン、観光地のほうが、広告目的もある雑誌やサイトの情報よりもよっぽど信用できるのではないでしょうか?

起業家・アントレプレナー注目!Desti(デスティ)が買収された原因とは?

上述のように、Desti(デスティ)は便利なツールで評価は高かったのです。しかし、収益モデルが機能しなく、ホテルなどの予約は既存のホテル予約サイトなどに流れてしまいました。エクスペディアやじゃらんなどをいつも利用していると、そちらでポイントを貯めようとしていまいますよね?

さらに、Desti(デスティ)は推薦するホテルやレストランから全く紹介料を得ていないのです。客観性を高めるのが目的です。この高尚な姿勢は評価に値します。しかし、AIが独自にユーザーの好みにあったホテルやレストランを客観的に推薦している結果をユーザーが利用したのならば、Desti(デスティ)経由で紹介されてきたホテルやレストランからある程度の手数料をいただくのは問題ないのではと、個人的には思ってしまいます。

未来の起業家・アントレプレナーであるシニアや女性・ミレニアム世代の方には、このDesti(デスティ)の例から、よい製品を作り出すだけでは駄目であり、まずは収益を上げることが事業会社の根本なのだと学んで頂きたいと思います。そうはいっても、IPOはできませんでしたが、ノキアに買収されたのですから、悪くはありませんよね?今後はみなさんに、IPOよりも身近なエグジット事例についても紹介していくつもりです。

次回はTempo AI(テンポAI)について解説します。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

ご相談・お申込み