デュオリンゴ(Duolingo):世界中でユーザーが増加!語学が楽しく学べる無料アプリ
シリコンバレーの注目企業紹介
掲載:2025/3/28
最終更新日:2025/03/28
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は、いつでもどこでもアプリで語学が学べる無料アプリ提供で躍進するデュオリンゴ(Duolingo)について紹介します。
●デュオリンゴの資金調達の経緯
デュオリンゴは語学学習無料アプリを提供している企業です。日本語版では英語、中国語、韓国語、フランス語のみですが、英語版ではほとんどの主要言語を網羅しています。イギリスの地方言語のウェールズ語や南アフリカのズールー語まで、その数は100を超えています。世界中に約6,000万人ものアクティブユーザーがいるようです。子供用の英語資格テストや数学アプリも提供しています。独自の英語ライセンステストも、米国の多くの大学で認知度が高まっているそうです。
2011年のシリーズaで約4億円を集めました。著名作家や、ベンチャー投資家としても知られる俳優のアシュトン・カッチャーも出資しています。2012年の製品発表後のシリーズbでは約20億円、2014年のシリーズcでは約25億円を調達して事業は軌道に乗りました。2015年にはグーグル・キャピタル主導のシリーズdで約60億円、2017年のシリーズeでさらに約33億円を集め、時価総額は約900億円となりました。2019年には再びグーグル親会社アルファベットの投資会社からシリーズfで約40億円を集め、時価総額は約2,000億円に達しました。その後2021年6月にナスダックに上場しています。
●デュオリンゴの概要と沿革
デュオリンゴは、2009年に米国の理数系の名門として知られるカーネギーメロン大学の教授とその博士課程の学生により発案されました。会社が設立されたのは2011年です。教授はグアテマラ出身で、途上国における英語学習の困難を克服したいという動機からこの事業は生まれたそうです。スイス出身の学生も、無料の語学学習のプラットフォームが世界を変えるという信念を持っていました。教授自身の基金とアメリカ国立科学財団の援助により事業を始めました。もともとはNPOとしてスタートする予定だったそうです。しかし、過去に起業した会社をグーグルに売却した経験を持つ教授は、NPOではビジネスとして成立しないと判断し、会社組織となりました。
2011年にはベータ版をローンチします。ウェイティングリストは30万人以上となり、リリース前から人気を集めていました。2012年の一般公開時には50万人に拡大しました。そして2012年のうちにiPhone用、翌年にはアンドロイド用アプリを導入。ユーザー数は300万人となり、普及に弾みがつきました。2013年にはアップルのアプリ・オブ・ザ・イヤー、Fast社の『最も革新的な企業』の7位に選出されました。2013年と2014年にはGoogle Playの教育部門で最もダウンロードされたアプリとなりました。2014年のアクティブユーザー数は1,250万人、2017年には約2,500万人と順調にユーザー数を増やしていきます。
2017年には、覚えたい単語を瞬時に表示してくれる「フラッシュカード」のアプリ「Tinycards」や、読解やリスニングに役立つ実験プラットフォームを開発。2019年にはシアトル、ニューヨーク、北京に新拠点を開設します。2022年にはユーザーインターフェースを一新。しかし、1つレッスンを終わるごとに次に進む構造からフラットなものに変更し、批判を浴びました。同年にはデトロイトのアニメーションスタジオを買収しました。
●デュオリンゴの商品
デュオリンゴの主力商品は無料の語学学習アプリです。初期の収入はクラウドベースの翻訳サービスでしたが、現在は英語ライセンステストと無料版の広告、プレミアサービスのサブスクリプション(全体の約7%)が収入源です。アプリは、2013年に開始されたクラウドソーシングのインキュベーター制度、つまるところボランティア達により開発されました。この制度は2021年に廃止されましたが、収益は開発に携わってきたボランティアに還元されたそうです。これ以降はCEFRに準じてプロの言語学者により開発・運営されているそうです。主力の収入源が語学公式テストになったからでしょう。
このアプリのレッスンは、動きや表情があるイラストとの双方向で、クイズ形式で進みます。実際に起きるシチュエーションが想定されており、楽しみながら外国語を学習できます。最初のステージはカフェでの注文と自己紹介という設定です。ミルク、コーヒー、砂糖、茶、アイスクリームなどのカフェで注文する商品の単語を4つの中から選ぶという簡単なものから始まります。全てイラストがあるのでわかりやすく、子供の外国語学習にも最適だと感じました。
次に「Hello.」「Good bye.」「Please.」「Excuse me.」「Hi!」などの挨拶用語が出てきます。そして「私の名前は〇〇。あなたは〇〇でしょ?」「私の出身は〇〇です。あなたは〇〇から来たんだよね?」などの挨拶文が続きます。ステップが進んでも同じ単語が繰り返し使用されるので、簡単な単語や言い回しは自然と記憶されていきます。
リスニングとスピーキングが中心になっている点が、よくある言語学校と異なるところです。日本は英語教育でも文法中心なため、米国では大学院生でさえブロークンな英語を使用していることに驚かされます(過去分詞は使わず過去形など)。日本のイタリア語教室でも男性名詞か女性名詞かなど細かい点にこだわっていたりしますが、今までの経験から言わせていただくと、語学は通じればよいのです。デュオリンゴでは全ての問題や回答が発音されるので、自然とリスニング力がつきます。マイクロフォンをiPhoneでオンにすることで可能となる発音練習もあり、スピーキング力も養われます。この発音問題では発音が悪いと、回答を受け入れてくれません。受け入れられても、「良い」「大変良い」「素晴らしい」など評価されるので、ご自身の発音レベルを客観的に知ることができて便利です。
デュオリンゴの学習ステップでライティング問題が出てくるのは、最後です。例えば「caffe」のスペルを「café」と間違えていたことに気づくのですが、そんなことは会話上では問題ないでしょう。出現するイラストや発音者も性別・年齢が異なる方が混ざっているので、同じ「caffe」でも人によって異なるアクセントにも慣れることができます。1つの練習が終わって次に進むとポイントがたまっていき、キャラクター達に褒められます。達成感があり、やる気がでてきます。
また、前置詞など2つ似たような発音とスペルの単語が並んでいてどちらかを選ぶ問題があります。こうした単語については意味が紹介されないので、別ウインドウの検索窓に、例えばイタリア語を学ぶ場合は「italian meaning」という単語をあらかじめ入れておけば、その後ろに新出単語を入れ替えて検索できます。意味を理解しながら進めた方が、より効果があると思われます。
入門コースから開始しますが、自信があればもっと上のコースから始めることもできます。やってみてうまくいけば、いつでもアップグレードできます。2022年のAI導入でいつ上のコースに移るかの判断が簡単になったそうです。様々な国や地方のネイティブスピーカー(ポルトガル語ならポルトガルやブラジル)が、簡単な単語や文法を使用し、ゆっくりしゃべるなど工夫されているそうです。研究結果でも初心者に適しており、大学での授業と同程度の成果があったなど評価は高いようです。
映画を字幕付きで学ぶのが語学学習には一番という記事をウェブ上でよく見かけますが、上級レベルの人でも速度やアクセントによっては聞き取れないことがあります。全ての単語を覚えるのは難しいですし、知らない単語を前後から推測するにも限界があります。その点、語学学習の経験者から見てもこのデュオリンゴはおすすめです。世界中に言語はいくつあるのか、見当もつきません。同じアメリカ英語でも南部と東部、白人英語とアフリカ系英語では発音が異なります。このような違いにまで分けていけば、商品の幅はまだまだ広がっていくでしょう。
まだこのデュオリンゴを知らない方も多いですし、英語版以外では学べる言語も限られています。また、英語だけ考えても、先進国の日本でさえ話せる方は少数派です。多くの発展途上国も同様だと思いますが、経済が発展すれば英語学習の需要は増えるでしょう。デュオリンゴの成長は半永久的に続いていくのではないでしょうか。

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