副業・起業のためのシリコンバレーの企業紹介
エッツィー(Etsy)
掲載:2021/12/13
最終更新日:2021/12/13
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はエッツィー(Etsy)について、将来の起業家・投資家であるシニア・女性・ミレニアル世代のみなさんと共に見ていきましょう。
米国株投資・起業を目指す方必見! エッツィー(Etsy)の目標・概要とクラフツマンシップとは?
エッツィー(Etsy)は、ハンドメイドなどのアーティストによる作品、工場で制作されていないオリジナル商品、作られてから20年以上の歴史を持つヴィンテージ商品(アンティークよりは新しい)を扱うニューヨーク発のECモールです。ベルリンにもオフィスがあります。他人とは異なる商品を探している方にはピッタリのECサイトといえるでしょう。
アート、ホーム、宝石、ヴィンテージ、子供向け、男性向け、女性向け、モバイルアクセサリーなどのカテゴリーを含む30のメインカテゴリから商品を探すことができます。アートには絵画や写真などの伝統的アートだけでなく、ガラスアートや人形などもあります。
フェイスブックやグーグルアカウントに対応していて独自のアカウントの作成の必要がないのは、もうデファクトスタンダートになったようです。
今までご紹介してきた企業と同様に、新型コロナウイルスの流行により恩恵を受けた企業の一つで、将来の投資候補にもなりうる会社です。売上は2020年には約4倍になったそうで、個人客が何度もサイトを訪れた事が理由とのことです。
モットーは、アートとクラフトを讃え、人間の交流により本物が手に入るというものでした。出品者がデザインしていることが出店条件なので、大手メーカー製品は原則としてはありません。ここでしか購入できない個性的な商品が見つかると人気となりました。既存の商品をオンラインで購入できるようにしただけのアマゾンなどとは一線を画しています。
出品者は大卒の20代から30代の女性が多いそうです。趣味の一環の方からプロのデザイナーまで幅広いそうですが、クリスマスシーズンには欧米ではプレゼントの交換の習慣があるのでプロも多く参加し、盛り上がるそうです。
アーティストは高い才能を持っていても、その存在が埋もれてしまっている事が殆どです。入学するのが東大よりもはるかに難しいとされている東京芸術大学を卒業しても、会社員や教師ではなく、芸術家として食べていける方は一握りです。こうした芸術家になれず他の仕事についているアーティスト達が、エッツィー(Etsy)では副業として自分の作品が売れるかどうか試してみることができるわけです。アーティストの支援に役立つという社会貢献をしつつ、ビジネスとしても成功させている点が素晴らしいと思います。
ここでアートと共にエッツィー(Etsy)のモットーに挙げられている、クラフトという言葉について説明したいと思います。クラフトとは伝統の技を身につけた職人による良質の工芸品のことです。
産業革命後のイギリスでは、大量生産される粗悪な製品を嫌ったウイリアムス・モリスによるアーツ・アンド・クラフツ運動が起こりました。家具やカーテン、壁紙、ベッド用品などに独特な模様の装飾が施されるようになったのです。イギリスではリバティ・プリントのクッションや寝具などが現在でも人気です。日本では柳宗悦や河井寛次郎らによる民藝運動が挙げられます。
日本中、世界中を旅行して初めて収集できる手工芸品が自宅で手に入るECモールがエッツィー(Etsy)なのです。無名の世界中のアーティストやクラフツマンの作品が探せるので、アート好きにはたまらないでしょう。
投資家・起業家注目!エッツィー(Etsy)の沿革
エッツィー(Etsy)は、2005年にニューヨークのブルックリンでiospaceとして設立されました。その後2か月でサイトを構築すると、フェリーニの名作映画「8 1/2」からエッツィー(Etsy)と命名されたそうです。売り手が売りやすくするように、タグ付きのカテゴリーやAdobe社のフラッシュなどの機能を追加していきます。
2007年5月には約1億7千万円、11月には約4億3千万円を売り上げるなど急成長を遂げ、ハンドメイド・コンソーシアムの主要メンバーとなりました。
2008年には約28億円の調達に成功し、2009年には月間売上が約10~13億円規模にまで拡大しました。そしてリーマンショックが逆に追い風となり、2010年には単月黒字化を果たしました。ここまで5年間かかっているわけで、将来の起業家・アントレプレナーのみなさんには、スタートアップにとっては黒字化よりもまずは資金調達が重要だと気づいてくれれば幸いです。
2012年には40億円を調達し、フランスとドイツ、オーストラリアに進出、2014年にはフランスのハンドメイド品を扱うECサイトを買収しました。2016年には日本語版も開始されました。
しかし、なかなか通年では黒字化できなかったのが原因なのか、2013年にはデザイナーを雇う条件で工場生産品の出品も許可されました。この決断によりエッツィー(Etsy)の思想をさらに推し進めようとする競合が生まれることになりましたので、難しい経営判断だったと思われます。
実はエッツィー(Etsy)のサイトには転売屋やメーカーが隠れているそうで、嫌気をさしたデザイナーが他のサイトへ流出するという流れもあるようです。また、商品の約5%が偽造品や商標権に問題があると訴えられることとなりました。
その代わり売上は大きく伸び2014年には約2,000億円を達成し、2015年にはナスダックに上場を果たしました。当時の時価総額は約1,800億円で、約250億円を調達することができました。起業・スタートアップを目指すみなさんは、この決断が正しかったと判断されたことでしょう、理想と現実にはやはり乖離があるということです。利益を上げるということが株式会社の使命ですので、妥協は必要なわけです。
上場により獲得した資金で、2016年にはショッピング用AI企業を、2017年にはスポティファイのような音楽ストリーミング企業を買収し、事業は拡大を続けました。
アーティスト支援だけでなく性や人種差別支援にも積極的で、2019年には従業員の30%が有色人種の女性になったそうです。
2020年4月には新型コロナウイルスの流行を受けてフェイスマスクの製造を傘下の出品者に呼びかけ、第3四半期には約2400万枚を販売し、売上の約10%に達しました。購入者たちは何も楽しみのない新型コロナウイルスの流行下でのささやかな楽しみを得られたということでしょうか?
エッツィー(Etsy)の使い方については他のサイトが沢山あるので、ここでは割愛させていただきます。問題は日本語版があるのですが、大半の売り手が個人のために面倒な越境ECを行っていなかったり、送料が高すぎるということです。筆者もバスタブに置くボード、家具に貼るデザイン性の高いステッカーなど欲しいと思った商品がいくつかあったのですが、残念ながら上記の2つに当てはまっていました。
日本で同様のサイトが人気となり、美大生や美大卒業生の作品を手に入れられるようになれば、少しはECショッピングが楽しくなりそうです。世界中の手作り商品が簡単に手に入るようになるように、エッツィー(Etsy)やその競合企業には頑張っていただきたいと思います。また、米国株投資家にもおすすめできる企業の一つです。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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