海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 フィットビット(fitbit)

掲載:2021/1/25

最終更新日:2021/01/25

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回フィットビット(fitbit)について、将来の起業家・アントレプレナーであるシニア・女性・若年層のみなさんと共に見ていきましょう。

起業・スタートアップを目指す方必見!フィットビット(fitbit)の沿革と成功の理由

フィットビット(fitbit)はアップル・ウォッチのようなウェアラブル端末の一つとして日本でも知られるようになってきたので、起業・スタートアップを目指す閲覧者の方にも、ご存知の方が増えてきていると思います。2019年にはアップルやシャイオミなどに続き、ウェアラブル端末企業としては第5位となっていました。同年にはこの分野への進出を狙うグーグルが、買収を発表しました。累計販売台数は1億台を突破しており、約2800万人のユーザーがいるそうです。しかし、その起業後の道のりは決して平坦なものではありませんでした

フィットビット(fitbit)は、2007年にサンフランシスコで、ヘルシー・マトリックス・リサーチとして創業されました。2008年にはウェブ・ニュースの「テッククランチ」による、「テッククランチ50」というコンテストで準優勝を果たし、注目されました。2009年には「Fitbit tracker」という製品をローンチ、大ヒットとなり、世界最大の電気機器の展示会であるCESにおいて、健康器具領域で最高の企業と認定され、名声を確立しました。

この製品は衣服に装着し、1日の行動を記録する万歩計のような製品でした。99ドル、約1万円という価格でしたが、3Dセンサーを内蔵しているので、単に何歩歩いたり、走ったりしたかだけでなく、どれだけの負荷がかかったが分かるというものでした。また、睡眠中に腕に装着することで、いつ起き上がり、寝返りを売ったなどの睡眠の質を知ることができるという点がセールスポイントとなっていました。

パソコンに繋ぐと1日の行動が自動的にアップロードされるので、グラフで簡単に1ヶ月などの長期での運動や睡眠記録を見ることができるのも、当時としては画期的でした。これにより、ユーザーはできるだけ椅子から離れて、立ち上がり、歩き回るなど、体に負荷をかけるという動機を得ることができたわけです!健康への意識が強いアメリカで称賛されたのも頷けるでしょう。ほとんどの方が一日一万歩を歩こうとしても達成できないわけですが、このFitbit trackerを使えば、パソコンで達成度がグラフで簡単に見られるので、ゲーム感覚で歩くことが楽しくなるわけです。人間の達成感を得たいという本能に訴えた製品といえるでしょう。

日本でも万歩計が売れたのは、アメリカの健康の専門家によると、一日に最低でも1万歩を歩くのが健康の秘訣だとされているからだそうです。デスクワークにつかれている方は、この製品を使用すれば、1時間毎に10分の休憩を取ってオフィスの内外を歩いてみたり、エレベーターではなく階段を使う、地下鉄の一つ前の駅で降りるなどの習慣化ができるかもしれません。

2014年には「Flex」という新製品をウェブサイトとアプリと共に発売、いつでもどこでも、達成度を見ることができるように改良したのです。さらにこの新製品は、消費カロリーである運動量だけでなく、摂取カロリーと、二つの結果である体重についても、トラッキングできるようにしたのです。また、ユーザーは消費カロリーとしての、歩いたり、走ったりする距離や歩数を、1日1万歩などの短期ではなく、週単位や月単位などのより長期の目標を設定することができるようになりました。

そして、これも今まで将来の起業家・アントレプレナーにご紹介してきた他の企業にもみられたように、友人などと達成度を競争することができるという機能をもたせています。アメリカ人にとっては、これは、さらなる目標達成のための動機づけとなるわけです。日本でよく教えられる「己に打ち勝て」という自己との孤独の戦いよりも、あまり勤勉ではない彼等は他人との競争を好みますので。ある目標を達成した際の画像やスタンプも共有できる機能が、ついているのです。

しかし、皮膚アレルギーで1万件ものクレームが発生し、リコールに繋がってしまいました。

起業・スタートアップを目標とする方必見!フィットビット(fitbit)の上場とその後とは?

そうした中、2015年にフィットネス・コーチング・アプリの「フィットスター」を約20億円で買収後に、IT企業が多いナスダックではなく、ニューヨーク証券取引所で念願の上場を果たしました。トレッドミルでの検査では、臀部に装着された場合は万歩計としては100%、消費カロリー系としても6%実際より少ないだけという好結果が実証されました。しかし、腕に装着した場合は特に消費カロリーは21%も多く燃焼したとするなど、正確度は劣ることも判明しました。

2016年には、スマート・クレジットカード企業の「コイン」を買収します。しかし、業績は赤字が続いており、株価は半値を下回りました。この際に、家電企業からデジタルヘルスケア企業へ転換すると宣言、一挙に成功への道を駆け上がっていくことになったのです。同年には、その年の最も革新的な企業50のうち37位に選出されたのです。

そして、2017年にはルーマニアのスマート・ウォッチ企業を買収し、念願のスマート・ウォッチを発売することになったわけです。2018年には「Twin Health」というソフトウェア会社を買収、低価格かつデザインを変更した「Versa」という新しいスマート・ウォッチ3機種をローンチします。さらにアディダスと提起した特別ヴァージョンもリリースされました。

そしてブルークロス・ブルーシールド協会と提携した「Fitbit Charge3」が発売されます。この製品は赤血球のどれぐらいがヘモグロビンと結合しているかを測定するパルスオキシメータを内蔵した初のヘルスケア製品でした。2色が用意され、18〜22センチの大型と14〜18センチの小型の機種と2種類があります。独自の支払い機能である「fitbitpay」を開発、中東のエミレーツバンクがサポートを表明するなど、多機能化していきます。

2019年にグーグルに買収されると、独自のOSは廃止されます。新製品では目標に準じた運動モード、自動停止機能によるランニング補助機能や睡眠データも付加されるなど、「アップル・ウォッチ」など競合製品を意識した高機能の製品となっています。

同年の研究では睡眠時間と睡眠中の心拍数とを正確に把握、睡眠効率も4%多く計算されただけでほぼ正確とのことでした。しかし、ダイエットについては、6つの研究のうちの4つが効果がないとしており、残念な結果となっています。運動トラッキングについてもその効果は不明で、医療機器としては認定されませんでした

しかし、グーグルによる買収価格は21億ドル、約2100億円となっています。上場時の価値は約360億円にすぎませんでした。起業、スタートアップを目指すみなさんにも、家電ではなくヘルスケア用品となるだけで価値が倍増どころか数倍になるのだと理解していただけたのではないでしょうか?

世の中のために役立ちたいというグーグル傘下になったことにより、2020年の新型コロナウイルスの大流行にともない、「fitoblow」という人工呼吸器を発売しました。これは5,000ドルという低価格であり、FDAに緊急の認可を得ることができたそうです。既存の高価格の代替製品にする予定はなく、あくまでも危機的状況への対応とのことです。

グーグルの子会社となったことで、今後日本でも注目される企業となっていくと思います。また、業界第5位であっても、成長分野であれば高価格でイグジットできるのだということを、未来の起業家・アントレプレナーであるみなさんにご理解いただければ幸いです。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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