グッドリックス(GoodRx)が変えるアメリカの処方箋市場シリコンバレーの注目企業紹介

2022/08/24

アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は処方箋の価格比較サイト運営企業グッドリックス(GoodRx)について解説します。

グッドリックス(GoodRx)の資金調達の経緯

グッドリックス(GoodRx)は、米国の処方箋の価格比較サイト運営企業です。モバイルアプリもリリースしています。近年には遠隔診断分野にも進出しています。

2011年にシードラウンドとして約2億円を集め、15年にプライベート・エクイティから出資を受け、軌道にのりました。2018年には約1,000億円を調達しました。

そして、2020年9月にナスダックに上場を果たしました。

グッドリックス(GoodRx)の概要と沿革

グッドリックス(GoodRx)は2011年に元フェイスブック製品担当幹部と元フェイスブック20人の立ち上げメンバーの一人で写真アプリを作成した人物などの3人により、カリフォルニア州のサンタモニカで設立されました。
 
2017年には処方箋価格の低下のために全米の主要な処方箋薬局と提携しました。

2019年にはHey Doctorを買収し遠隔診断分野に進出、ブランド名をGoodRx Care(グッドリックスケア)に変更しました。

2020年にはコンシューマー・レポートという車を始めとする消費財のテストと評価で米国では誰でも知っている組織から、グッドリックス(GoodRx)はユーザーがグーグルやフェイスブックなどで検索した薬名や処方依頼した薬局名を追跡していたと暴露され、問題となりました。これに対して同社は数日後にフェイスブックと共に、そうした情報が共有できなくなるような変更を施したと発表しました。

グッドリックス(GoodRx)の商品

グッドリックス(GoodRx)の処方箋比較サイトは全米で75,000もの薬局の価格を網羅し、月間利用者数は約1,400万人です。無料の薬のクーポンも提供しています。アプリのダウンロード数も2020年2月段階で、数百万に達したそうです。

ウィキペディアによると、米国の処方箋価格は比較した国の約2.5倍と世界レベルで最も高価なランクに入るそうです。多くの中間リベートが付加される、特許代金が高くジェネリック薬の普及を遅らせるよう巨大製薬会社が暗躍する、インフレ理由の価格引上げ(ある薬は2014年の価格が2010年の発売時比較で6倍となった!)など多くの原因があるようです。そしてPBMという処方箋プログラムがジェネリック薬をオリジナル薬として扱うことも許されているようです。

このように米国においては薬局により異なる処方箋価格を、同社のウェブサイトやアプリでは簡単に調べることができるのです。クーポンも発行しているので、さらに価格を下げることができるわけです。

遠隔診断商品のGoodRx Care(グッドリックスケア)では、患者がオンラインで医師の診断を受け、ある特定の薬についての処方箋を受け取ることができます。価格は保険の状況に関わらず、2019年12月時点では20ドルでした。医療機関にわざわざでかけた上に、保険外のために法外に高い処方箋代金を払う必要はないとのことです。ロイターの記事にあるように、米国では2018年の健康保険未加入者は人口の8.5%です。こうした保険未加入者にとっては特に魅力的なサービスだといえるでしょう。

そうはいっても同社によると、グッドリックス(GoodRx)の顧客の75%が保険加入者だそうです。GoodRx Care(グッドリックスケア)と組み合わせることで、医療機関に行く手間が省け、処方箋代金も安くなるのがその理由のようです。同社によると、薬局により100ドル以上もの価格差があるそうです。例えば、グッドリックス(GoodRx)でクーポンも併用すると、ED治療薬の「シルデナフィル」は92%、コレステロール値を低下させる「アトルバスタチン」錠は43%、抗うつ薬の「ゾロフト」は33%も安くなるそうです。こんなに安いのならば、保険加入者にも人気なのも頷けますよね?

また、このサービスで診療と同じ日に処方箋を受け取ることができるのがメリットのようです。これも日本では当たり前のことですよね?医療面においては、日本は米国に比べると遥かに恵まれていることが、ご理解頂けると思います。

オンラインでの医療検査も用意されています。白人に特有のセリアック病、HIVから新型コロナウイルスなどの病気の診断、コレステロールや血糖値などの血液検査、妊娠テストまで、様々なテストが用意されています。同社によると、病院で受けるのと比べると、グッドリックス(GoodRx)の検査は30分の1の価格で済むこともあるそうです。

グッドリックス(GoodRx)の買収の成功と処方箋比較と遠隔診断の高い成長性

そういうわけで、遠隔診断企業を買収したのは成功だったといえるでしょう。企業買収を考えた際には、シナジーが大きいかどうかが重要なのだと覚えておいてください!

また、日本では10年ほど前に楽天などが薬の通販を進めようとしましたが、当該業界からの反発で失敗に終わったことがあります。グッドリックス(GoodRx)はそれを遠隔診断と結びつけることで成功させているわけです。そうはいっても日本では遠隔診断についてもまた別の業界団体の反対でなかなか難しいようです。

フォーチュンの記事にあるように、世界の遠隔診断の2019年の市場は約5兆円と 巨大で、2020年から27年のCAGRは約26%と高成長が期待されています。フェイスブックやグーグルと情報を共有していたことへの批判は沿革に記しましたが、それもいずれおさまるでしょう。
日本では遠隔診断もなかなか普及していないようですが、米国において遠隔診断と処方箋薬価の比較を実現しているグッドリックス(GoodRx)の将来が明るいと思います。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。