海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
グーグルグラス(Google Glass)

掲載:2020/11/16

最終更新日:2020/11/16

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はAR(拡張現実)とウェアラブル・コンピュータのGoogle Glass(グーグルグラス)について解説していきます。

巣ごもり消費による影響でARに脚光が集まる?

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でテレワークが実施され、巣ごもり消費が活発化しています。ネットフリックスの新規加入者や、「あつまれどうぶつの森」の購入者が急増しているそうです。閉館中の美術館はオンライン展示を、オペラハウスなどはストリーム配信を実施しています。

こうした中、ARについても注目が集まるかと思いGoogle Glass(グーグルグラス)とGoogle AR(グーグルAR)について解説することにしました。

Google Glass(グーグルグラス)とその特長とは?

まずは、Google X(グーグルX)のプロジェクトの一つとして開始されたGoogle Glass(グーグルグラス)について、説明していきましょう。

一般には大きな誤解があるのですが、実はGoogle Glass(グーグルグラス)はグーグルのAR部門の開発製品とは異なり、AR機能は装備していません。アップルウォッチに代表されるスマートウォッチのメガネ版と考えると分かりやすいでしょうか?

ハンズ・フリーで情報を表示し、自動音声でインターネットにアクセスできるようにHMD方式が採用されています。OSはスマホ同様、アンドロイドです。

当時のGoogleのCEOでファウンダーのセルゲイ・ブリン氏によると、Google Glass(グーグルグラス)は、「スマホを見ながら下を向いて歩いているのが、人間のあるべき姿なのか」、という疑問から生まれたそうです。

2011年に発表された最初のモデルはゴーグルタイプで3.6キロと非常に重く、使い物にならないような有様だったそうです。しかし、2012年にはメガネタイプのデバイスへと進化し、注目を集めました。2014年に一般発売されました。レイバンやオークレイなどと提携、225ドルでメガネフレームを提供しました。

デザインだけでなく、重量も通常のサングラスと変わらないという点が特筆すべきところでしょう。重い眼鏡をかけていると頭が痛くなってくることは、閲覧者の方にもご理解いただけるでしょう。

情報は、メガネのレンズ上に表示されます。

OSでの経験から、他のAlphabet(アルファベット)の子会社と同様に開発者プログラムが用意されており、グーグルの名声で多くの一般のプログラマーが参加している点で、同業他社と差別化しています。

また、消費者視点も必要だと考え、Google Glass(グーグルグラス)のイベントに参加し、1500ドルと引き換えにプロトタイプ端末を受け取った8000人の一般の方が、そのアイデアをGoogle+やツイッターで投稿できるようにしました。

Webマーケティングを知り尽くしたグーグルらしいと感心させられます。消費者に当事者意識をもたせることができるわけです。また、消費者がGoogle Glass(グーグルグラス)をどのぐらい必要としているかも、掴むことができたわけです。

Wi-Fiやスマホのデザリング機能で使用でき、音声コマンド入力時には「OK, Glass!」と呼びかける必要があるので、Google Glass(グーグルグラス)に自然に愛着が湧くことになります。

Google Glass(グーグルグラス)の機能とは?

Google Glass(グーグルグラス)は、2012年にはTimes紙が選ぶ「Best Innovation of the year」に選出されるなど、大きな評判を呼びました。ファッションショーでも使用されるなど、その機能だけでなく、デザインの素晴らしさも特筆すべきでしょう。

機能としてまず挙げられるのが、写真とビデオ撮影の機能です。しかし、ビデオ撮影時には一応ライトが表示されますが目立たないようになっているので、「プライバシー侵害では?」と大きな問題となりました。録音機能も、同様に問題視されました。

基本的には、スマホと同様の機能が使用できます。特にグーグル・マップをGoogle Glass(グーグルグラス)を装着しながら使用できるのは非常に便利ですよね?

音声だけでなく、側面にある部分をなぞることでも、操作できます。

しかし残念なことに、デザイン性やユーザビリティよりも上記のプライバシー侵害が大きく取り上げられてしまい、僅か1年後の2015年には一般向けの販売が中止されてしまいます。

一般向けの発売が中止になったのは、非常に残念です。この日本語字幕もついているTEDのブリン氏の講演動画を見ると、Google Glass(グーグルグラス)がいかに便利なのかを、閲覧者の方にもご理解いただけると思います。

GoProのようなアクションカメラは必要なくなってしまいますよね?ハンズフリーで行き先を命令したり、Googleマップを表示しながら走行したり、前方の風景を撮影するなど、自動車の中限定で使用できるようにして、一般向けにも発売してもらえると非常に便利になると思うのですが。

2017年にはB2B製品の「Google Enterprise Edition」が、2018年には新モデル「Google Enterprise Edition2」(999ドル)が発表されています。医療機関や工場などでの使用を前提としているため、デザインはオシャレとは言い難くなってしまいました。

それでも、両手を使う仕事の方向けにデザインされたこの製品は非常に役立っているようです。

例えば、工場でなにか原因不明の故障が起きた際に、工員が現場で見ている映像を、遠く離れたオフィスに居る修理の専門家にリモートでリアルタイムに見せることができるそうです。

少量生産の複雑な組み立てプロセスでも、いちいちコンピュータ画面で確認する必要がなく、設計図をGoogle Glass(グーグルグラス)に映しながら作成できるので、生産性を25%も上げることができたそうです。

医療分野では、まず診断に使用されました。医師はコンピュータ画面に向かうことなく、より多くの時間を患者と対面しながら使うことができるようになったそうです。さらには、腹腔鏡手術でGoogle Glass(グーグルグラス)を装着することで、リモートで他の医師からアドバイスを受けたり、医学生の研修に使用されているそうです!

今まで解説してきましたように、Alphabet(アルファベット)のメディカル分野での貢献は、日本に住んでいる我々の想像を遥かに超えていますよね。

ARとVRの違いは?

まずは、ARとVRについて、簡単におさらいをしておきましょう。

ARは、ウィキペディアにあるように、拡張現実と訳されます。現実の拡張ですから、自分を取り巻く現実の環境の中で、あるものについては付加し、あるものは削除することで、構築される世界です。

それに対して以前流行したVRは、人工的に造成される空間を指します。

VRは仮想現実と訳され、ユーザーは今見ている世界が現実でないと理解しています。それに対してARは、現実の世界をベースに、あるものを強調し、あるものは減衰させるので、ユーザーは現実の部屋にいて実際に存在するものと、存在しないものに囲まれているということになります。

コンピュータが視覚・聴覚・触覚に訴えて、現実の物体と架空の物体とを混在させるのです。ツールとしてはVR時代からお馴染みのゴーグルタイプやメガネタイプのHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)が使用されます。

そしてこのARもまた、自動運転や手術用ロボットなどと同様に、米国で軍事用として研究されたものが先駆けとなっています。

Google Lens(グーグルレンズ)とは?

グーグルは、検索ロボットにより、人々が調べたいものを手に入れるようにしたわけです。サイト検索結果だけでなく、画像や動画も加わりました。しかし、現実の世界を見せられるわけではないのでGoogle Glass(グーグルグラス)が開発されたという逸話は、上述で説明したとおりです。

しかしプライバシーの問題で、Google Glass(グーグルグラス)は一般発売が中止に追い込まれてしまいました。そこで、Google Lens(グーグルレンズ)は、スマホを通じてカメラに写った現実世界を検索できるようにしています。

海外旅行をした際に母国語でない看板があった時には、グーグル翻訳が機能します。雑誌で気に入った服が見つかった際には、画像と類似した商品を検索できます。

初めて入ったレストランで何をオーダーするか迷った場合には、グーグルマップが人気メニューを画像つきで教えてくれます

こうした検索と現実世界の融合だけでなく、Google Lens(グーグルレンズ)はAR的要素ももっています

Google Lens(グーグルレンズ)のARカメラ技術とPlaygroundとは?

GoogleのAR技術は、現実の世界にデジタル・コンテンツを、まるでそこに存在するかのように、重ね合わせてくれます

グーグルのPixel3以降のスマホで使用できるGoogle Play(グーグルプレイ)のアプリPlayground(プレイグラウンド)について解説しましょう。以前はAR Stickersと呼ばれていたのが、2018年に発表された最新版から改名されました。

Google Lens(グーグルレンズ)により映し出された現実世界の写真や動画の中に、現実には存在しないキャラクターやイラストを組み込むことができるアプリがPlayground(プレイグラウンド)です。

全世界で映画興行記録を塗り替えているマーベル・コミックスのキャラクター、「アイアンマン」などを、画像に表示させることができます。

さらに、絵文字や吹き出しを使用して、みなさんオリジナルの写真や動画を作成することができます。アイアンマンと一緒にポーズをとってセルフィーもできるわけです!現在の外出制限中にはまさにぴったりのアプリですよね?

閲覧者の方々の中には、それぐらいのことは今までもできたと思われる方もいるかもしれません。しかし、今までのアプリとの違いは、そのリアルさです!3D映画の『アバター』を観て、今までの2D映画とは全く異なる世界を体験したと感じられたと思います。このPlayground(プレイグラウンド)に出現してくるキャラクターの立体感、動き、影まである細部の演出のリアルさは半端じゃないです!

さらに、プレイ文字を使用すると、キャラがみなさんに反応してくれるのです。アップルファンでiPhone以外のスマホを使ったことがない筆者も、Pixelに買い換えようかと思ったほどです。

キャラクターにはポケモンなどの癒し系もいるので、自撮りをしてキャラクターと触れ合って癒やされるという使い方もできます。自撮りしながらリアルなキャラクターを撫でてあげると嬉しそうな表情などをしてくれるので、ここまで来るとバーチャルペットを飼っているようなものですね。

猫好きな方でマンションの規約で飼えない方などは、ぜひとも試してみてください!日本版も存在しているようですので!

ARCoreとは?

ARCoreは、2018年に発表されたグーグルによるAR用のソフトウェア開発キットです。Playground(プレイグラウンド)を使用するには、最新版のARCoreをインストールする必要があります。

スマホのカメラを通じて見える実際の映像にVRを付加したものです。3つの技術が使用されています。

1つ目は6DoFと呼ばれる上下、左右、前後の3軸の動きに加えてそれぞれを軸として回転する動き、航空機では上下を軸として水平に回転するヨーイング、左右を軸として上下動する仰角変化に用いられるピッチング、前後を軸として回転するローリングを加えた、6軸を自由に使用できる技術です。航空機の他には、ロボットやロボット・アーム、ゲームコントローラーでのキャラの動きにおいて実用化されています。この技術で現実の世界に対してスマホがどのポジションにあるのかを認識することができます。

2つ目は、地面やテーブルなどの水平面の大きさや場所を認識するための環境理解です。

3つ目は、光の状況を確認するための光量認識技術です。

Playground(プレイグラウンド)がARをスマホで実現しているのは、実はこのARCoreの3つの技術を使用しているからなのです!

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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