副業・起業のためのシリコンバレーの企業紹介
インポッシブル・フーズ
掲載:2021/3/22
最終更新日:2021/03/22
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。
副業・起業を目指す方必見!インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の概要と沿革
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)は、2011年にカリフォルニア州レッドウッドシティでスタンフォード大学の生化学の名誉教授である医師により設立されました。肉の代替となる植物から作られる人工肉製品を開発するユニコーン企業です。アメリカ、香港、シンガポールのレストランやスーパーが同社の製造する製品を扱っています。
地球温暖化の第1位の原因は、水蒸気とそれを増やしてしまう二酸化炭素です。しかし、牛や豚が排出するメタンガスがそれに次ぐ温室効果を生んでいることはあまり知られていません。環境省のウェブサイトに有るように、豚の糞尿から発生するのです。さらに、豚の加工品を作るには大量の窒素やリンを放出し、飼料には銅や亜鉛が含まれ土中に放出され、汚染土となるそうです。つまり、豚肉の生産は、温暖化だけでなく、土や水の汚染という環境破壊につながっているわけです。
また、豚インフルエンザなどの疫病予防や太らせることを目的に抗生物質が投与され、豚に限らず肉は健康に良くないとのことです。西日本新聞の記事にあるように、抗生物質耐性菌により2050年までには年間に1千万人の死者がでると国連が警告しており、あながち嘘とはいえないようです。現在でもアメリカでは年間に3万5千人が亡くなっているそうです。
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)は、こうした豚肉の生産による環境破壊を防ぐために、2035年までに肉の代替を目指すという目標を掲げています。海外にはヴェジタリアンが多く、温暖化が注目されていることもあり、脚光を浴びることとなりました。また、イスラム教徒など世界で25億人もの人が宗教上の理由で豚肉を食べられないわけですが、この植物由来の豚肉に近い味わいのものなら、ハラール認証されるわけです。
見た目も豚肉と変わらなく、ミンチ状になっているので、特にハンバーガーにすると本当に植物性なのかと疑うほどの美味しさだそうです。豆腐バーガーなどの健康重視だが味は肉にはほど遠い従来の製品とは、一線を画しているわけです。
2015年には地球温暖化防止に深い関心を持つグーグルが買収を提案しますが折り合わず、UBSのリードで、グーグルのベンチャーキャピタルであるGVやビル・ゲイツなどから約100億円を調達しました。2016年には最初の製品である「インポッシブル・バーガー」をローンチ、人気となりました。2017年には約80億円、2020年には約550億円を獲得し、創立以来の調達金額は約1,400億円となりました。
2019年にはラスベガスで開催される世界一の電子機器見本市であるCESでは、食品企業として初めてフィーチャーされました。改良版である「インポッシブル・バーガー2.0」は、味と栄養と多彩さの3つのポイントでビーフ・バーガーを抑え、1位となりました!「ポピュラー・サイエンス」誌の2019年のエンジニアリング大賞を受賞し、名声を確立しました。
2020年のCESでは、世界を変える技術賞に食品会社としては唯一ノミネートされました。インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)CEOのブラウン博士は、技術分野の600名のV.I.Pが招待される権威あるディナーではホストを務め、FOXテレビのインタビューを受けました。全米の消費者ばかりか、CESに出席している日本の電機メーカーの幹部からも注目されたことは、間違いないでしょう。
起業家・投資家注目!インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の製品とその差別化要因とは?
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の製品としては、まず上記の「インポッシブル・バーガー」があります。バンズに挟んでハンバーガーとして食べることがアメリカでは主流のようです。
2020年のCESでは、新製品として「インポッシブル・ソーセージ」と「インポッシブル・ポーク」が発表されたそうです。前者はその名の通りのソーセージの代替食品で、西部の5つの州の特定地域の139の「バーガー・キング」で発売されました。現在ではスーパー、それも東海岸にまで、販売地域が拡大されたそうです。
後者は春巻きや餃子、ワンタン、ミートボール、炒めものなどの豚挽肉のレシピの全てに適応可能の植物由来の挽肉です。白人の多くが罹患するセリアック病の方は食べられないグルテンを含まず、コレステロールも入っていないので健康によいそうです。
国連の健康機関によると毎秒約50匹もの豚が屠殺され、そのうちの半分は中国で消費されているとのことです。そして中国での豚の消費は1990年と比較すると2.7倍となっており、中華料理のレシピを多く用意することで中国での豚肉からの代替を目指しているようです。
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)のウェブサイトのレシピページには、シェフのメルトン氏によるタコス、トルティーヤ・スープなどのメキシコ料理、イギリス人に人気のシェパーズパイやミートボール、ミートローフ、挽肉の串焼きやパプリカの肉詰めなどの中近東料理、上述の中華料理など、各国料理が用意されています。その他には有名シェフと組んだレシピ、40のレシピによる料理本まであります。
アメリカでは、インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の製品が食べられるレストランもあるそうです。日本でいうと糖質制限ダイエットのように、流行しているようです。地球温暖化防止に熱心なバイデン政権が誕生し、ますます発展していくと思われます。
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)の味の秘訣は Hemeという分子にあるそうです。これが調理された際に、肉と似た味を出すのです。同社の科学者と遺伝子エンジニアが、発酵イーストにより、自然界では大豆レグヘモグロビンという植物に存在する Hemeを創り出したのだそうです。このHemeが、競合他社の植物由来の代替肉からの差別化要因として、肉本来の見た目と味わいを実現しているわけです。
食にはこだわっているので偽物のハンバーグなど食べたいとは思いませんが、味だけではなく、食感や血の色が滲んだ肉汁まで本物の肉と変わらないと評判の「インポッシブル・バーガー2.0」は、食べてみたくなりました。ハンバーガーが国民食ともいえるようなアメリカ人がCESで牛肉のハンバーガーよりも美味しいと評価したのですから、試す価値はありそうです。
未来の企業家・投資家である閲覧者の方は、健康に良い食材を多く持つ日本ならではの、食品会社を起業されてはいかがでしょうか?但し、従来の食品を使うだけではなく、技術により違いを出すことがポイントで投資家をひきつけるのだと、ご理解いただければ幸いです。仮にSRIインターナショナルと組むとしても、その技術を活用できることが必要なのです。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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