海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
インビテ(Invitae)

掲載:2022/3/21

最終更新日:2022/03/21

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はインビテ(Invitae)について解説します。

米国新興成長株投資家注目の株価

インビテ(Invitae)の現在の株価は、約10ドルです。ブルームバーグの記事にあるように、2018年の約5ドルから2020年末には約55ドルへと急騰していましたが、2021年には下落に転じています。米国の利上げ観測により新興成長株には逆風が吹いていますが、中長期的にはおすすめできる銘柄といえるでしょう。

インビテ(Invitae)の遺伝子検診の目的と意義

インビテ(Invitae)は日本でも話題になりつつある遺伝子検診と癌診断企業です。ミッションは包括的な遺伝子情報の提供です。病院向けの遺伝子検査サービスだけでなく、個人向け遺伝子検査キットも提供しています。主な分野としては以下が挙げられます。

1番目は、出産前の遺伝子検査で、生まれてくる赤ちゃんの健康状態を知ることです。隠れた遺伝子変化が両親ともに存在すると赤ん坊のリスクとなるためです。280もの遺伝子状況を検査し、嚢胞性繊維症、テイサックス病、脆弱X症候群、脊髄性筋萎縮症などの難病の遺伝子疾患の有無を把握することができるそうです。テストは、妊娠前はもちろん、妊娠中でも可能だそうです。御自分とパートナーがこうした難病の保因者(キャリア)でないと分かると安心できるわけです。また、ご自身がキャリアであってもパートナーがキャリアでないのなら、ほぼ大丈夫だそうです。お二方共にキャリアの場合は子供をもつことのリスクを説明し、オプションを提示してくれるようです。

2番目は、ご自分の遺伝子的な問題点を知ることです。同社によると、大人の6人に1人が遺伝子診断で何かしらの健康的問題点が見つかるそうです。こうした問題点を把握することで正しい健康習慣を身につけ、発病を防ぐのです。エクササイズをする、野菜ジュースを飲むなど、人により優先度は異なります。ある治療やサプリメントを始めるべきか、やめるべきかを判断できるそうです。

3番目は、癌になる可能性を把握することです。米国では男性の半分、女性の三分の一が何かしらの癌にかかるそうです。例えばある女性が、家族に乳癌にかかった人がいないので安心していたところ、検査により乳癌のリスクがあることがわかり、マンモグラフィーを早期に開始することで早い段階での発見が可能になったそうです。

癌患者の8人に1人は遺伝子の突然変異が受け継がれているので、こうした事が起きてしまうとのことです。ある例では、乳癌の家系ではないのにステージ0のカルシウム化が見られたが、非浸潤性乳癌は低いので切除をためらっていたが、子供にもリスクがあるとわかり決断したそうです。アメリカの人気テレビドラマ「グレイアナトミー」にも遺伝子テストで乳癌のリスクがあることがわかった患者が乳房の全摘手術を決断するのですが、夫はなると決まったわけではないので反対するという逸話がありました。米国の富裕層の間では遺伝子検査は普通に行われているようです。

突然変異は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌には多くみられるそうです。全体の3分の1のハイリスクな突然変異による患者はテストを受けることで、従来の治療法とは異なるご自身にあった、いわゆるテイラーメイド療法を受けることができるようになるそうです。

癌の予防にも有効ですが、癌になった際にはテストを受けてご自身の遺伝子について知ることで、最も効果的な治療法を見つけられるとのことです。治療法の中で手術、化学療法、放射線療法、そして最近になって確立された免疫療法のいずれが効果的なのかについて、医師が理解しやすくなるのです。

検査費用は保険でカバーされるので100ドルの負担、保険なしの方でも250ドル、パートナーが追加の場合は100ドルとなっています。米国では200万人が受けたそうです。

インビテ(Invitae)の沿革

インビテ(Invitae)は癌の遺伝子研究企業のGenomic Healthの子会社として2010年にサンフランシスコで設立後、2012年にスピンオフして誕生しました。8回に渡り約2,200億円を調達しています。最新の2021年4月の調達はソフトバンクグループがリードを取ったので、今後日本でも注目される可能性大です。

2015年2月にニューヨーク証券取引所に上場を果たしました。

2017年にGoodstart Genetics社とCombi Matrix社を買収しました。後者はナスダック上場の臨床診断ラボ企業であり、移植前の遺伝子検査や流産分析、出生前診断、出生後診断を専門に従来の手法を超えたDNA検査を提供、ゲノム解析を行う会社です。1990年代にワシントン州で半導体ウェハーを用いるマイクロアレイ方式を開発し、2000年の上場キャンセル後には大手製薬会社のロッシュや米国防省傘下のDARPAと共同研究を進め、マイクロアレイを世界中の研究機関に販売しました。分子診断ラボを設立し、2007年にはスピンオフして独立を果たしていました。2010年までには臨床ラボは起動に乗りましたがマイクロアレイ事業がうまく行かず、腫瘍や小児疾患、出産関係の遺伝子診断ツールを開発しましたが、資金が枯渇し買収されることになりました。このCombi Matrix社の技術がインビテ(Invitae)の遺伝子テストの根幹となっているようです。

2020年の第1四半期には前年比64%もテスト数が増加しましたが、新型コロナウイルスの流行で3月末にはテスト数は前年比半分に急減しました。

しかし、同年6月には325もの製品を持ち50以上の製薬会社とのパートナー契約を持つ癌診断のArcherdex社を買収しました。同社は4兆円もの市場規模がありゲームチェンジャーとも呼べるテイラーメイド式癌遺伝子検査という商品を持っています。5,000億円の市場規模をもつ末期癌診断検査のための商品もあります。同社は前年比75%の急成長を遂げ2019年の売上が約55億となっていました。

この買収により、2020年のインビテ(Invitae)売上は約300億円となりました。赤字は約700億円となっています。しかし、遺伝子検査と癌診断の両輪を持ち毎年50%の成長余力があり、利益率も高く将来性は高いようです。

設立して10年も経つのですがまだ黒字化できていない点はヘルスケアベンチャーの特徴です。2021年にはAIスタートアップのCitizen社を買収しています。ソフトバンクグループの出資により日本法人も設立されたようです。今後日本でもインビテ(Invitae)の遺伝子検査が気軽に受けられるようになるかもしれないですね。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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