ルルレモン(lululemon)がレギンスを米国女性の国民着に発展させた
シリコンバレーの注目企業紹介
掲載:2022/9/8
最終更新日:2022/09/08
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はアパレルブランドのルルレモン・アスレティカ(lululemon athletica)について解説します。
ルルレモン・アスレティカ(lululemon athletica)の概要と沿革、レギンスが米国女性の国民着に!
ルルレモン・アスレティカ(lululemon athletica)は、カナダのヨガウェアで知られるアパレルブランドです。
2005年に資金調達を行い、2007年8月にナスダックに上場を果たしました。
ルルレモン・アスレティカ(lululemon athletica)は、1998年にカナダのバンクーバーで創業されました。当時はヨガの専門ウェアは存在せず、従来の綿製のものと異なり、その伸縮性がある柔らかい素材のルルレモンのヨガパンツは注目されたそうです。最初の独立店舗は2000年に出店されました。
単なるエクササイズの一つだったヨガは、現在では文化現象として欧米人の心に浸透しました。2014年頃にはティーンズがレギンスをジーンズより好むようになり、2017年には女性物の収縮パンツはジーンズの輸入を上回ったそうです。レギンスはジーンズに替わり、ヨガスタジオに入ったことのない人のクローゼットにまで進出していきます。ランニングに使用されるだけでなく、米国では通勤着になっているようです。ルルレモン・アスレティカ(lululemon athletica)の成長は、米国女性にとってレギンスがヨガスタジオの枠を飛び越えて国民着となったことにあったわけです。
ルルレモンは、2022年時点ではニューヨークの5番街を始め世界のファッションの中心地に500以上のショップを持ち、オンラインでも販売しています。東京では六本木や銀座、新宿に店舗があります。2021年の売上高は約8,000億円です。ランドマーク社の育成プログラムを導入、70%のマネージャーが社内で育成されていることはロイヤルティー向上に役立っていることでしょう。
しかし、この会社はその華やかなイメージとは異なり、実はいろいろと問題を抱えているようです。
2004年には創業者が日本人にとって発音が難しい“L”の文字が3つも重なっていて、日本人による会社名の発音が酷いという問題発言をしました!
2013年にはフォーチュン誌の最速成長企業に3年連続で選ばれた一方、創業者がブルームバーグのインタビューで、「太った顧客がルルレモンのウェアを身にまとうのは不適当だ」という発言が問題視され、年末には引退します。さらに、その品質の低さがクレームを受け、ヨガパンツなど全体の17%もの商品がリコールを余儀なくされています。利益とブランドが大きく傷つき、商品担当トップだけでなく、CEOも退社する事態となりました。中心メンバーが3人も会社を離れたわけです。
それでも、2014年にはロンドンのコベント・ガーデンに欧州での旗艦店となる最初の店舗をオープンしました。
2019年には家でのワークアウトのためのカメラとスピーカー内臓の鏡を販売する「ミラー」社に出資、2020年に買収、オンラインフィットネス事業に進出しました。瞑想などオンラインクラスをスタートしています。
当初はヨガパンツなどのヨガウェアのブランドでしたが、現在ではスポーツウェア全般に路線を拡大しています。
ルルレモンの商品
ルルレモンの商品としては、まずは最初に人気となったスポーツ用のレギンス、次にヨガウェアが挙げられます。トップス、パンツ、ショーツ、ジャケット、ヨガマット、アクセサリー、消臭剤やシャンプーなどです。
ストレッチと柔らかさがヨガウェアの基本ですが、ルルレモンは2005年に登録商標された「Luon」というナイロン製のマイクロファイバー素材でポリエステル製主体の他社と差別化しています。筆者も15年以上も愛用していますが、その製品は伸縮性があり、吸湿発散性のある生地でできています。本社には科学者や生理学者を含むR&Dラボがあり、素材の研究をしています。これにより、4方向に伸縮する生地でできた「Luxtream」や汗をかくエクササイズ用の「Nulu」、バクテリアの再生を抑える匂いを消す技術が注がれた「Silverescent」のような、より快適な、新しい素材を提供しています。
しかし、2007年には海藻からなる「Vitasea」という素材が消炎性や抗菌性があり水分が補給され、解毒作用があると謳ったのは不正広告だとニューヨークタイムズに糾弾されました。日本人からするとあり得ないようなことですが、東洋の神秘を信じるとでも思ったのか、カナダでは当局により、こうした健康へのアピールが禁止されました。
また、ヨガなどのフィットネスインストラクターには商品を25%オフにするという独自のマーケティングを展開、憧れのインストラクターが着ている上級者向けブランドというイメージ確立に成功しています。独自の素材もありますが、これが人気の秘密といえるかもしれません。
このように、ルルレモンの商品は、実は品質は大したことがなく、品質がよいとアピールするマーケティングに長けた企業だといえるのではないでしょうか?将来起業を考えている方は、マーケティングの重要性をご理解ください。
ところで、「ルルレモン」というとヨガウェアブランドのイメージが強く、着心地の良さを追求するなど、ターゲット層は明らかに女性でした。しかし、2019年には「Lab」というブランド名の高級ストリートウェアをいくつかの店舗でリリース、今後はナイキやアンダーアーマーに対抗して男性向けスポーツウェアに注力していくそうです。反対にナイキやアディダスも吸湿性のある素材のトレーニングウェアを開発しており、競争は激しくなりそうです。
アップルを始め、商品の質よりもマーケティングで人気を獲得した企業は、多く存在しています。ライバルとみなすナイキもこの範疇に入ります。こうした意味でも、ジーンズの地位をレギンスが奪いつつあるという点でも、今後伸びていくオンラインフィットネス分野に進出した事実からも、今後もこのルルレモン・アスレティカ(lululemon athletica)には注目していきたいですね。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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