海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
マーターポート(Matterport)

掲載:2022/2/21

最終更新日:2022/02/21

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はマーターポート(Matterport)について解説していきます。

マーターポート(Matterport)の概要、人気の秘密とは?

マーターポート(Matterport)は、前回紹介したジロー(Zillow)グループやその競合のレッドフィン(Redfin)も使用している3Dバーチャルリアリティー不動産物件閲覧などに使用される360度3Dカメラとその撮影結果をウェブ上に公開できるソフトウェアの製造・販売企業です。カメラとソフトウェアはそれぞれマーターポートカメラ(Matterport Camera)とマーターポートクラウドMatterport Cloud)と呼ばれています。

不動産バーチャルツアーで有名になりましたが、ホテルや観光施設でのイベント様子を伝えるバーチャル観光もターゲット市場としているようです。民泊のパイオニアとして米国株投資や起業を目指すみなさんにもおなじみのエアビーアンドビー(Airbnab)もパートナー企業であり、その傘下の民泊施設のバーチャルツアーが可能となっているようです。顧客は世界150カ国の数千の企業と個人客約33万人だそうです。

マーターポートカメラ(Matterport Camera)は、4Kの高画質で、赤外線カメラと通常のカメラで構成され、360度の3次元画像を作成します。赤外線カメラにより、距離も測定可能です。周囲に3Dマップを作成するという意味ではルミナーテクノロジーズのLidarシステムと似たイメージでしょうか?つまり、ストリートビューとは異なり、物体の大きさやモノとモノとの距離も測れるわけです。家具が部屋の希望した箇所に収まるか、そしてここが特に小さな日本の住宅では重要なのですが、ドアを通れるかも分かるのです。

ジロー(Zillow)グループなどの不動産サイトで人気となった理由は、部屋の様子だけでなく、ソファやベッドなどインテリアの配置も含めたバーチャル内見をできたからです。実際に現地にでかけてモデルルームを見たとしても、ご自身の家具とは異なるわけですから、どのように家具を配置するかを想像してみても、実際に購入後に行ったらベッドが収まらなかったなどの事態が起こりえるわけです。ご自身の家具のサイズさえ分かっていれば、家に居ながらそれを自由に部屋に配置することができるのですから、夢のような話ですよね?つまり、マーターポート(Matterport)はジロー(Zillow)グループレッドフィン(Redfin)が急成長できた一因といえるわけです。

そして、日本語版も登場し、日本法人も設立されたようです。このメルマガで紹介している企業の製品の多くは日本では使用できないことが多く、IT格差を危惧しているので、素晴らしいことだと思います。日本の不動産市場はIT化が遅れており、インバウンド市場も期待できるのが、近年当たり前となっている「ジャパン・パッシング」を避けられた理由なのでしょうか?

マーターポート(Matterport)の沿革と商品

マーターポート(Matterport)は2011年にカリフォルニア州のサニベールで設立されました。2012年のシーズラウンドで約2億円、2013年のシリーズAで約6億円の調達に成功します。その後2019年のシリーズDまで9回のラウンドで約120億円を獲得しました。モバイル通信企業のクアルコムやエリクソン傘下のVCも参加するなど、その技術が高く評価されていたようです。

2020年にはiPhoneカメラに対応できるようになり、不動産以外の分野にも用途が広がりました。現在ではアンドロイド端末でも利用可能です。そして2021年7月には、ナスダックに上場を果たしました。ルミナーテクノロジーズなどで最近流行りの、SPAC(特別買収目的会社)との合併によるものでした。企業価値は約3,000億円と予想されていましたが、初日には約4,600億円となりました。

製品にはまず、ハードウェアであるマーターポートカメラ(Matterport Camera)があります。現在販売されているのは主力のプロ2という製品とその簡易版のプロ2ライトです。プロ2は約3,400ドルですので日本では約38万円となかなかの値段ですが、赤外線で測量もできるので、通常のカメラと比較するのは意味がないと思われます。新製品のプロ2ライトは2,495ドル(27万円)と安くなりましたが、スペックにはあまり差はないそうです。このためなのか、米国のアマゾンではプロ2が現在は約2,195ドル(約24万円)で売られていました。

そして撮影した画像をアップロードするソフトウェアには、サブスクリプションプランが用意されています。個人向けは月額約8,000円(69ドル)から、企業向けは約3,3000円(309ドル)からとなっています。

また、編集が面倒だという顧客を想定して、カメラを購入せずにある物件について撮影を代行・編集するというビジネスモデルも用意されています。

iPhone対応版はアプリをダウンロードして解説動画をみないと難しいようですが、iPhoneやiPadと接続して、スマホやタブレットでマーターポートカメラ(Matterport Camera)を操作できます。周囲をスキャンすればすぐに始まれるのは、便利ですよね。

不動産ツアーでは、「フロアプランビュー」という2D(平面)図はもちろん「ドールハウスビュー」と呼ばれる3D(立体)図面を作成し、ストリートビューのようにその中を動くことができるのです。ウェブサイトには英語ですが動画が用意されており、その仕組みを理解することができます。居間からキッチン、ベッドルームへと自在に移動しながら、特定の場所の長さを測定できるのです。そして以前にご紹介したオキュラス(Oculus)のようなVRヘッドセットを使用すれば、さらなる仮想空間疑似体験を味わえます。まさにザッカバーグが目指すメタバースの世界ですよね?データはサーバーに保管することができます。

ハードウェアとソフトウェアのサブスクリプションプランを組み合わせるなど、マネタイゼーションもしっかりしている企業だと感じました。そのあたりが評価されているのか、SPACで上場を果たした会社がのきなみ株価を下げ、キャシー・ウッドが保有するジロー(Zillow)グループなどの新興株が下落している2021年においても、株価は上昇をしています。2021年11月末時点での時価総額は約7300億円(66億ドル)となっています。

世界中の不動産物件や民泊物件がその3Dマップ作成の対象となるわけです。中古物件を購入し、リノベーションする際にも、家にいながらプランを練ることができます。マーターポート(Matterport)のCEOによると、世界中で40億以上の建物があるが、デジタル化されているのは1%にも満たないそうです。その成長は計り知れないように感じられます。米国新興株投資家・起業家を目指す閲覧者の方も、テンバガー候補として注目してみてはいかがでしょうか?

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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