海外企業紹介

ナテラ(Natera)が遺伝子テストの可能性を広げる

シリコンバレーの注目企業紹介

掲載:2022/10/5

最終更新日:2022/10/05

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は遺伝子テストを提供するナテラ(Natera)について解説します。

ナテラ(Natera)の概要と沿革

ナテラ(Natera)は、テキサス州オースティンに本拠を持つ非侵襲性のセルフリーDNA遺伝子テストを提供する企業です。

2008年にシリーズAで約5億円、09年にシリーズBで約8億円、10年にシリーズCで約15億円を集めました。

2012年のシリーズDで約15億円、13年のシリーズEで約70億円を調達、軌道に乗ります。

2015年7月にナスダックに上場を果たしました。ティッカーシンボルはNTRAです。その後も上場後調達を行い、2022年現在までに10回で約500億円が集まりました。

ナテラ(Natera)のDNAテストは、当初は妊娠時の女性向けテストに注力していることが特徴でした。その後は大人向け癌診断などに事業を拡大しています。2021年5月には免疫に破壊されたり自死した血液中のDNAの濃度を測るセルフリーDNAテストが累計300万回を超えるなど、ナテラ(Natera)のDNAテストの実用化が進んでいるようです。発表した学術論文も100を超えており、3000人以上が参加する臨床テストを行うなど、少なくとも数字からは信頼性が高いといえそうです。

革新的な分子生物学技術とバイオインフォマティクスを統合、血液チューブ(血液検査で目にする血液が入った試験管のようなボトル)中の単一分子レベルまで検出できるそうです。米国政府の基準に適合した研究所は、カリフォルニア州サン・カルロスとテキサス州オースティンにあります。

ナテラ(Natera)は2004年にGene Security Networkという名称で設立されました。創業者の一人によると、姉妹の子供がわずか6ヶ月でなくなったことがきかっけだったそうです。

最初の製品は遺伝子の変異を調べる着床前診断テストで、2009年にローンチされました。

2010年には流産診断テストを発表します。

2012年には出生前に遺伝性疾患の原因遺伝子をもつかを調べるキャリア・スクリーニング遺伝子診断「Horizon」をリリースしました。

2013年には非侵襲性の新型出生前診断テスト(NIPT)の「Panorama」を発表しました。同年には遺伝子解析のためのライフサイエンスツールを開発するイルミナ社から非侵襲性の出生前診断のためのシーケンサーシステム提供を受ける契約を締結しており、この技術が「Panorama」を支えているようです。NIPTについては日本産婦人科医会の見解を参考ください。

2017年には単一遺伝子NIPTである「Vistara」、さらには、研究目的の小児白血病に主として用いられるMRD(骨髄微小残存病変測定テスト) をリリースします。MRDについては日本小児血液・がん学会の指針を参考してください。

2019年にはCLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments=米国臨床検査規制)テスト「Signatera」と、臓器移植が可能化を判断する「Prospera」を導入します。

2020年には腎臓の遺伝子パネル検査の「Renasaight」をローンチしました。遺伝子パネル検査については中外製薬のサイトが分かりやすいと思います。

さらに、遺伝性癌検査である「Empower」を発表、癌検査分野にも進出を果たしました!

2021年には「Prospera Heart」「Prospera Lung」という心臓や肺の移植が可能かを判断するテストと、大腸癌の免疫療法のモニタリング用の「Signatera」を発表しています。

ナテラ(Natera)の商品

ナテラ(Natera)の主要製品は、非侵襲性の新型出生前診断テスト(NIPT)の「Panorama」です。唯一の一塩基多型のNIPTだそうです。母体血漿中を循環しているDNAから3 つの染色体疾患(21トリソミー,18 トリソミー,13 トリソミー)からなる胎児の遺伝子的リスクを判定するのです。

ちなみにダウン症は21 トリソミー、エドワーズ症候群は18 トリソミーから妊娠9週目でも見つかるそうです。高齢出産が増えているので、日本でも米国同様に人気となる可能性もあるかもしれません。まだ保険適用外で20万円ほどの費用がかかるようなので、普及にはまずは保険適用が必要となるでしょう。

微細欠失症候群や双子の接合性も検出できるそうです。

キャリア・スクリーニング遺伝子診断「Horizon」は、次世代の検出方法により、274もの遺伝的状況を測れます。

「Anora」は胎盤や卵膜による流産診断テスト、「Spectrum」は着床前遺伝子診断テスト、「Vistara」は単一遺伝子NIPTです。

「Empower」は典型的な遺伝性癌のリスクがある53もの遺伝子を検査する遺伝性癌診断テストです。

「Signatera」はMRD(骨髄微小残存病変測定テスト)と癌の再発監視用のセルフリーDNAテスト用アッセイです。2019年にはFDAの死につながる疾患向けに特別に認められる「Breakturough devices program」に適用されました。2020年にはCEマークを獲得しています(ちなみに、医療機器の国際標準を獲得するには、まずはCEマーク、次に米国のFDA認可を取るのが常道となっています)。米国の大腸癌のステージ2~3において、免疫療法におけるモニタリングの素案でも保険適用となりました。特に大腸癌の再発においては、CTやMRIなどの画像イメージングよりも16.5ヶ月も早く発見できることが検証されているそうです。

これは日本でもぜひ保険適用してほしい商品ですね。2020年6月にリキッドバイオプシーによるがん個別化医療の実現を目指すプロジェクト「CIRCULATE-Japan(サーキュレートジャパン)」が始動したようです!
「Prospera」テストは、臓器移植の際に重要となるT細胞関連型拒絶反応と抗体関連型拒絶反応の両方に高く反応する最初のアッセイテストです。2019年に米国で保険適用となりました。

「Renasaight」は腎臓病の遺伝的リスクがあるかどうかや親戚にもリスクがあるかを判定するテストです。

「Constellation」は、臨床検査機関がナテラ(Natera)の技術にアクセスして使用できるようにするクラウドベースのバイオインフォマティクスプラットフォームです。米国以外で利用可能となっています。

いかがでしたでしょうか?ナテラ(Natera)は、妊婦の遺伝子疾患テストでダウン症出産などを防ぐだけではありません。特に大腸癌の再発をモニタリングするなど、大人の遺伝性癌や腎臓病を診断できます。臓器移植での不適合も防止してくれます。

そして、マネタイゼーションにおいて重要なことですが、大腸癌モニタリングと臓器移植適合検査は保険適用となっています。商品の種類と適用疾患は、毎年増えています。米国株投資にご興味ある方にはおすすめできる企業といえるでしょう!

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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