海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
パパテクノロジー(Papa Technology)

掲載:2022/4/4

最終更新日:2022/04/04

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はパパテクノロジー(Papa Technology)、現在の正式名称はパパ、について、将来の起業家・米国新興グロース株投資家であるみなさんと共に、見ていきましょう。

米国新興グロース株投資家注目の株価

パパテクノロジー(Papa Technology)はまだ上場をしていません。しかし、ユニコーン企業となっています。今のうちからパパについて理解しておくと、IPO時に購入すべきかの参考となるでしょう。

パパテクノロジー(Papa Technology)の概要、設立経緯と目標

パパテクノロジー(Papa Technology)は60歳以上の高齢者家庭に家事代行、会話やゲームの相手を務める若者を派遣する企業です。

温暖な気候で米国ではリタイア先として最も人気があるフロリダ州マイアミで2017年に設立されました。すぐに人気となり8州に拡大しましたが、2021年には全米50州にまでサービス利用地域が広がっている急成長企業です。

同社によると新型コロナウイルスの影響で全米の50%の人が不安や孤独感を抱えており、社会的孤立で死亡リスクは29%も高まるそうです。日本でも社会的孤立からの見知らぬ他人を巻き込んだ犯罪がここ最近急増していますが、コロナ禍で急成長を果たしました。

創業者がアルゼンチン出身の祖父への話し相手の必要から、祖父の友人募集広告を出したことが起業のきかっけとなったそうです。フロリダはラテン系住民が多いのでスペイン語しか話せない祖父とスペイン語で会話してくれる相手が見つかると考えたのは、米国社会ならではのエピソードですね。

アプリ登録をしたメンバーであるシニア世代とパパパル(パルは英語で友達の意味)と呼ばれる学生とのマッチングサービスです。現在では学生に限定せず18歳の孫世代から45歳の子供世代まで年齢制限は緩和されています。平均年齢は29歳だそうです。

シニア世代は若い方、特に孫世代と話せるのは嬉しいのです。また、映画やドラマでご存知の方も多いと思われますが、米国では学生のバイトとしてのベビーシッターは一般的なので、見知らぬ人が家に来ることへの抵抗感が少ないのだと推察されます。

パパパルには毎月2万人もの応募があるが、採用率は8%に絞っているとのことです。10人に1人以下しか採用されないわけであり、本当にシニアへ尽くしたいという性格のよい人材のみ採用するという意味でしょう。人格とバックグラウンドチェックがあるそうです。人材育成のための大学も用意されています。トレーニングを行い、テストに合格した人のみが派遣されるのです。

入浴やトイレの世話をするなどは仕事内容に入っていません。ここがケアワーカーとの差となっているそうです。

パパテクノロジー(Papa Technology)の沿革

2017年にマイアミに設立後、同年にはサービスをローンチしました。2018年のシードラウンドは素人投資家がヘッジファンドに勝ったとして話題となった電子掲示板レディット(Reddit)の共同創業者がリードし、話題となりました。2回で約4億円を集めました。

このように順調に事業を拡大していたパパテクノロジー(Papa Technology)の飛躍のきかっけは、2018年に“Center for Medicare Service”が保険の償還を認めたことでした。日本での健康保険を思い起こすとわかりやすいでしょう。これに当てはめると、全額負担ではなく30%負担となったようなものです。

それまでの一緒に買物に行ったり、欲しいものを買ってきてくれる、家事を代行する、シニア世代が苦手なスマホやネネトフリなどIT機器への接続を行う、話し相手やゲームの相手となる他に、医療機関の予約をして病院まで送迎をし、手続きも行うというケアサービスが加わったのです。

資金面では、2019年にシリーズAで約11億円、2020年にシリーズBで約20億円、2021年には4月にシリーズCで約70億円、11月にシリーズDはソフトバンクビジョンがリードして約170億円を調達、12月時点での企業価値は約1,600億円となり、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。

2021年春時点で約100万人ものメンバーと1万5千人のパパパルが登録されています。メンバーのうち15%が毎月サービスを利用しており、2022年には500~600万人への成長を期待しているそうです。

パパテクノロジー(Papa Technology)の商品と問題点

時間ベースのベーシックサービスとパパパルを指名できるなどの特権のあるプレミアムサービスが代表的商品です。時間あたり20ドルからとなっています。月間ベースのサブスクリプションサービスも用意されています。

パパパルに支払われる時給は15ドルプラスインセンティブとなっています。

当初は個人ベースでの申込みが主流でしたが、上述のように現在は保険を通じて申し込まれるのがほとんどだそうです。

州政府が提供指定言える医療扶助事業“Medeicade Advantage”や高齢者・障害者向け公的医療制度の”Medidare”など保険会社が提供する65ものプランから希望するサービスを選択できるようです。対象者も保険に加入している従業員の家族となりました。D2CモデルからB2Bモデルへのビジネスモデルの変更が実施されたのです。

こうした保険プランにより、まずはパパヘルス(Papa Health)という介護サービス、2020年にはパパドク(Papa Doc)という遠隔診断サービスもスタートしました。2021年時点ではプライマリーケアと呼ばれるいわゆるケアサービスを提供しているそうです。

ユニコーンとなり、ビジネス的視点では成功企業となったのは確かでしょう。問題点は、こうしたビジネスモデルの変更の中で、働き手に優しくないサービスに変化している兆候が見られることです。

米国ではインフレと共に賃金の上昇も続いており、時給15ドルは最低賃金と変わりなく、魅力的ではありません。繁華街ではなく、住宅街であるパパ宅まで1時間かけて通うとすると、近くのファーストフード店などでバイトする方が好条件となります。

掲示板を見ていても、ドタキャンがたまにあるがその際の保証がない、話し相手のはずが掃除、洗濯、庭の手入れなどなんでもやらされるなどの不満の声が見られます。

保険会社から手厚い保証が支払われているが、会社が多くを受け取り、パパパルに還元されていないようです。

当初は孤独感を持つシニア世代の不安を解消する世の中の役に立つサービスとして始まったはずが、単なるケアサービスとなってしまい、ビジネス的には成功しているだけという状況のようです。

今後米国グロース株投資などで成功され、起業をされる閲覧者の方には、お金儲けだけではなく世の中の役に立つために起業するのだという精神を忘れないでいただきたいものです。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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