海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
Renewable Energy Group

掲載:2022/7/14

最終更新日:2022/07/14

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はバイオディーゼル産出企業リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)について解説します。

リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)の資金調達の経緯

リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)は、アイオワ州の小都市エイムズに本拠を構えるバイオディーゼル産出企業です。

親会社からスピンアウトした2006年のシーズラウンドで約27億円、07年にシリーズBで約26億円を調達し、軌道にのりました。2008年のシリーズCでは約120億円を集めています。

そして、2012年1月にナスダックに上場を果たし、約80億円を調達しました。2022年2月28日のロイターの記事にあるように、シェブロンにより約4,000億円で買収されることになったようです。シェブロンはエクソンモーバイルやシェルなどと並ぶ大手石油会社です。日本には進出しなかったのでなじみが薄いですが、米国株投資家の間ではバフェット氏投資銘柄として知られています。現在の株価についてはロイターを御覧ください。

株価がなぜ4割も高騰しているのかが分からなかったのですが、調べてみると買収が理由でした。シェブロンには2030年までに10万バレル/日の再生可能燃料を生産するという長期目標があったようです。今後も、この再生燃料分野での既存石油化学企業によるM&Aが起きそうです。目が離せない分野となってきました。

バイオディーゼルとは?

 ここでまず、バイオディーゼルについて解説していきましょう。バイオディーゼルとは、ガソリンの代替として使用される穀物から取得される燃料を指します。近年は、地球温暖化対策のためのグリーンエネルギーの一つとして注目を集めています。原料は植物油(大豆油、菜種油からオリーブオイル、パームオイルまで)や豚や牛の脂、廃食用油など多岐にわたります。国立環境研究所のサイトによると、通常のディーゼルエンジンに使用される軽油と比較して、硫黄酸化物が1/2から1/3削減できるとあります。

リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)の概要と沿革

リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)は、12の精製工場を持つ全米最大のバイオディーゼル企業です。

ウエスト・セントラルという企業のバイオディーゼル部門として、1996年に始まりました。彼等によると、その歴史は、バイオディーゼルのそれと一致するそうです。同年に最初の工場が建設された時には、まだ業界はニッチで、初期段階だったとのことです。その後は競合と共に、業界全体を育てていったとのことです。業界そのものが小さいときには、競合が参入するのを歓迎するという話を聞かれたことがあるかと思いますが、まさにそれですね。

1998年にSoyPOWERというブランド名の大豆によるバイオディーゼル燃料をローンチします。2002年には世界最大級の大豆油燃料精製工場を開設しました。

2003年にはリニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)という子会社が設立され、2004年にはアイオワ州立大学と共同での新技術研究に約1.5億円の資金を農業省から付与されました。

2006年に親会社からスピンアウトしました。2008年には新製品をリリースします。

2010年から2011年にかけて植物原料を燃料に転換する精製企業を2社、競合のバイオ燃料企業を買収します。2012年には上述のように上場を果たしましたが、年間売上が初めて10億ドル(約1,300億円)を超えています。

2013年には上場後の黒字化への努力の真最中でしたが、オクラホマ州を拠点とするバイオ燃料企業を買収しました。2014年にはドイツの競合企業と再生化学技術企業を買収、さらに2015年にはワシントン州ベースのバイオ燃料企業を買収しました。将来の起業家の方は、このような決断が会社の命運を左右すると覚えておいてください。黒字化よりも事業の拡大を優先したわけです。

2014年には1億ガロンの燃料を販売しました。

2001年のウエスト・セントラル傘下時代にも起きたそうですが、2015年にはルイジアナ州の工場で2度の爆発事故を起こし、安全義務違反で罰金刑を受けています。

2016年には年間売上が初めて20億ドル(約2,600億円)を超えました。エネルギー生産に使用される脂肪酸の初の商業化も行われました。

2017年には2億ガロンの燃料を販売し、さらにドイツのバイオ燃料トップ企業を傘下に収めます。

2018年には従来のバイオディーゼル燃料と再生燃料を混合した新製品を発売しました。

そして、バイデン政権が欧州に続いて地球温暖化対策に乗り出したことやロシアによるウクライナ侵攻による石化燃料からの脱却の加速化を懸念したのでしょうか、全米第2位の石油化学企業のシェブロンに買収されることになったようです。

リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)の商品

リニューアブル・エナジー・グループ(Renewable Energy Group)の商品は、上記のバイオディーゼル燃料です。同社によると、その製品は温室効果ガスの削減に大きく貢献しているそうです。最近はロシアの財閥が大金を注ぎ込んだシティに押され気味ですが、かつてはベッカムも在籍し日本でも人気が高かったマンチェスター・ユナイテッドともパートナーシップを結んだようです。

最初は大豆油によるバイオ燃料がその商品だったわけですが、買収により5種類のバイオディーゼルのラインアップを持つようになりました。コーンオイルやバイオ燃料生産の過程で産出された廃棄油、家畜の脂肪などです。燃料は全て、同社の3つの工場で生産されています。また、生産されたバイオ燃料の配達事業も行っています。

2022年3月に発表された最新のEnDura Fuels製品ラインは、5つのバイオディーゼル燃料をブレンドした製品です。既存のディーゼル燃料からバイオディーゼル燃料への円滑な移行を目指した商品とのことで、親会社となるシェブロンの意向が反映されたのかもしれないですね。

ロシアのウクライナ侵攻や昨年の天候により風力や太陽光発電が奮わず、天然ガスが自然エネルギーだという主張を始めていた欧州も政策変更を迫られました。ロシアからの天然ガスへの依存から脱却するということです。再生エネルギー分野は、成長が期待できる上にM&Aのチャンスも増え、今後もますます注目されていく分野だと言えるでしょう。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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