海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 Seismic(サイズミック)

掲載:2020/12/18

最終更新日:2020/12/18

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はSeismic(サイズミック)について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業家・アントレプレナー注目!Seismic(サイズミック)とは?

Seismic(サイズミック)は、パワードスーツを開発するSRIインターナショナルからのスピンアウト企業です。2016年に設立され、筆者も面識がある、SRIインターナショナルのロボット部門のトップだったマホーニー氏がファウンダー兼CEOに就任しています。マホーニー氏は、前回ご紹介したリンゴ収穫のAbundant Roboticsやヤマハのヒト型自律ライディング・ロボットMotobotの開発も担当していました。

マホーニー氏はサンフランシスコ・ベイエリアの米国人にしては寡黙な人物ですが、ケンブリッジで博士号を取得していることも関係しているのかもしれません。世界中の投資家から引く手あまただったSRI インターナショナルのロボット部門のトップだった同氏が創立者というだけでも、魅力がありますよね?

さらに、Seismic(サイズミック)も今まで何度も紹介してきたDARPAの技術をベースとしています。筆者はSRI インターナショナルで、そのプロトタイプを見学する機会がありました。

その際に、イラクやアフガニスタンなどの戦場で、米国兵士が重い荷物を背負って数キロも行進が可能になるために、重い荷物を軽く感じられることを目的としたパワード・スーツ(人工筋肉)プロジェクトが原点だという話を聞きました。

パワード・スーツというと日本ではサイバーダインが有名なので、起業・スタートアップを目指すシニアや女性などの閲覧者の方にはご存知の方もいらっしゃるかもしれません。添付のウェブサイトでご覧になれるように、サイバーダインは装着型ロボットというイメージです。

それに対してSeismic(サイズミック)は、試作品の段階でさえ、ロボットよりもウェアラブル・パワード・スーツというイメージでした。コードで接続されたロキソニンテープのような薄い長方体が多数体貼り付けられているといえばイメージしやすいでしょうか?当時は、SuperFlex(スーパーフレックス)と呼ばれていました。

SRI インターナショナルでの開発中には、その衣服の下に肌着のように着れるオシャレなイメージに惹かれてか、かつては日本でも人気のあったヒップ・ホップ・ユニットのブラック・アイアイド・ピーズのリーダーで、現在は投資家となっているウィル・アイ・アムも見学に訪れてそのパワード・スーツに興味を持ったという話を聞き、投資家なんだと驚いたことが思い出されます。実際、映画俳優などでもベンチャー企業の投資家が多いというのが、やはりアメリカというところでしょうか?

そういうわけで、Seismic(サイズミック)は、その設立時には人材、技術と特許、さらには薄くて小さいという差別化要因まで備えていたということになります。50%がエグジットという驚異的な成功率を誇るSRI ベンチャーズのスピンアウト企業の中でも、以前にご紹介したJ&Jとアルファベット傘下のVerily(ベリリー)との合弁である手術ロボット企業のバーブサージカル(Verb Surgical)と並び、特に注目すべき存在だったといえるでしょう。

起業・スタートアップを目指す方必見!Seismic(サイズミック)の目標とパワード・クロージング

Seismic(サイズミック)は、障害者のリハビリやda vinci(ダ・ヴィンチ)関連のプロジェクトなどヘルスケア分野に取り組んできたマホーニー氏の経験から、世の中の役に立つことを目標としています。これはSRIインターナショナルとGoogle Xからスピンアウトされた企業に共通する目標なのだと、今まで読者でいてくださった未来の起業家・アントレプレナーにはご理解頂けると思います。是非とも起業時に目標を作成する際には、見習っていただきたいと思います。

2016年にSuperFlex(スーパーフレックス)という社名で設立されました。すぐに約11億円を調達しました。当時は人工筋肉を腰などに装着し、重いものを持ったり、担いで運ぶのを助けるイメージでした。

その後このパワード・スーツは、進化を遂げていきます。さらなる薄型化とデザインの斬新さにより、装着するのではなく、人工筋肉内蔵の肌着を着るというイメージに変化をしていきました。その結果、同社の製品は、パワード・クロージングと呼ばれるようになりました。オーダーメイドのため、マッスルユニットやバッテリー部分を除けば、体にピッタリのヒート・テックという感じです。

通常のパワードスーツのように座っている状態や寝ている姿勢から立ち上がる際にかかる力をサポートするだけでなく、立っている間には背中と腰を引き締め長時間の直立に耐えられる、などの工夫がなされています。

さらに、ロボティックスに30年以上も関わってきたマホニー氏ならではの経験から、プログラム可能となっており、動作をカスタマイズすることができます。ユーザーの仕事内容やリハビリ内容などに合わせた動きに対応可能となっているのです!

そして、そのデザイン性の高さから、洋服・肌着として販売されるようになっています。

起業家・アントレプレナー注目!Seismicの日本での状況は?

Seismic(サイズミック)には日本のVCも出資しており、その繋がりで三井不動産も株主となっているそうです。また、二子玉川蔦屋家電では、2019年には発表会も行われています。日経XTECHの記事によると、大林組は出資だけでなく、高齢化の進む現場労働者の負担軽減のために共同開発に着手したようです。

価格はオーダーメイドのため数十万円となりそうなので、富裕層向けの商品です。しかし、かつての高齢者の筋力補助のみが目的ではなく、ゴルファーからハイカーまでターゲット層は若年層にまで広がっています

Seismic(サイズミック)は2019年にはFast社による権威のある世界で最も革新的な企業にも選出されています。今後の日本での展開が楽しみですね。

次回はDestiについて解説していきます。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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