海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 シャザム(Shazam)

掲載:2021/2/22

最終更新日:2021/02/22

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はアップルが買収した企業の最終回です。将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんとシャザム(Shazam)について、見ていきましょう。

起業・スタートアップを目指す方必見!シャザム(Shazam)の概要と沿革

シャザム(Shazam)は、1999年にUCB(カリフォルニア大学バークレー校)の学生2人によりサンフランシスコで設立された、楽曲検索アプリを提供する企業です。音源収集にはDSPの専門家が必要だったため、まもなくスタンフォード大学のPh.Dが参加することとなりました。競合の「サウンドハウンド」のような音楽だけでなく、映画やTV番組、広告も探してくれます。どのようなものかを知りたいと思ったら、シャザム(Shazam)を立ち上げてiPhoneやパソコンなどを音源に向けると、内蔵のマイクロフォンが調べたい曲や映画の予告編、TV番組、コマーシャルなどを見つけてくれるのです。

アップルに買収されたわけですが、通常のアップルの戦略とは異なり、iOSだけではなくアンドロイドやマイクロソフトOSなどでも使用できます

2002年にイギリスでサービスを開始しましたが、当初の機能は楽曲検索のみでした。当時は、ユーザーは製品の通称であった「2589」に携帯から電話をする必要がありました。30秒後に自動的に通話が切れると、曲名とアーティスト名がメッセージで送付されるという形式でした。その後、その曲をダウンロードできるように、リンクに飛ぶためのテキストが追加されるようになりました。

もう今は存在していないサンフランシスコの企業と組んで、2004年にはAT&T のネットワークでアメリカ進出を果たしました。サービスは最初は無料でしたが、将来的には1回につき1ドルが徴収されるとAT&Tが発表しました。この年に初めてVCからの資金調達に成功します。2006年にはイギリスでも、1回に約1ドルまたは月額約7ドルの定額制が導入されました。

2008年には、iPhoneデビューを飾りました。さらに、iTunesと連動して直接曲を購入できるようにしたのです。もっとも、クラシック音楽は単調ではなく、その音源認識技術の性能が十分ではないため、認識できなかったということですが。

アップルに買収されるためには、シャザム(Shazam)のようにiTunesの収益に貢献したり、iPhoneアプリで話題になることが1番の近道だと、未来の起業家・アントレプレナーのみなさまにも、ご理解頂けたのではないでしょうか?

その後同年には、アンドロイドやマイクロソフトOS版もリリースされました。フリーアプリでしたが、2009年には「シャザムアンコール」という有料版もローンチされました

年末までにはダウンロード数は150ヶ国で1,000万回を越えました。さらに、そのうちの8%のユーザーは実際に楽曲を購入したのです。これによりVCからの最初の大きな資金調達に成功します

2011年1月にはアップルが、シャザム(Shazam)のダウンロード数が無料アプリにおいてアップルストアの歴代4位となった、と発表します。一方、競合の「サウンドハウンド」はiPadでの有料アプリでトップとなりました。

2012年にはアメリカではテレビ番組にまでサービスを拡大、テーマ音楽だけでなく、キャストや番組のウェブサイトの情報も提供するようになりました。その結果、8月には約500億の音楽曲やテレビドラマのテーマ曲、CMをデーターベースに収録、ユーザー数は2億2,250万人、1ヶ月後には2億5千万人を越えたと発表、35億円もの資金を調達しました。アクティブユーザー数も1週間に200万人に到達したそうです。アップルによる買収後の現在では、アクティブユーザー数は1億人となり、約5億の携帯機器で使用されているとのことです。起業・スタートアップを目指す閲覧者の方にも、アップルに買収されると一気にビジネス規模が拡大するのだとお分かりになられたことでしょう。

多額の調達資金を元に、2013年には音楽ストアの「Beatpot」と提携、エレクトロニック・ミュージックが新たなジャンルとして追加されました。「SAAVN」というインドの音楽配信サービスと排他的独占契約を締結し、100万ものインド音楽がデータベースに追加されました。そして、権威あるテックランド誌のトップ50アンドロイド用アプリにも選出され、約42億円を集めました。

2014年にはアプリのデザインを一新し、映画産業とも連携し、アメリカでは2万以上の新作の予告編がシャザム(Shazam)で検索できるようになりました。さらに、8,000のラジオ局でもシャザム(Shazam)特別仕様の曲リストが採用されました。150億もの曲を探し当てたと発表しましたが、2012年時点で500億曲がデーターベースに収録されているので、まだまだ需要に応える余裕があるようで、アップデートも終了しました。

iOS8後は、Siriに組み込まれました。22億円を新たに獲得しましたが、その際の企業価値は500億円を越えました。2016年には写真共有アプリ「スナップチャット」と提携し、「スナップチャット」ユーザーがカメラを向けると同時にシャザム(Shazam)の機能が使えるようになりました。2016年には念願の黒字化を達成、2017年にアップルが約420億円で買収しました。

起業家・アントレプレナー注目! シャザム(Shazam)の製品の特徴

シャザム(Shazam)は楽曲認識に、スペクトログラムという横軸に時間、縦軸に周波数を取り、時間と共に頻度が変化する、音を分解し波長の順番に並べたスペクトラムを使用してグラフ化した技術を用いています。特に、音声信号から生ずる音声指紋は、指紋から特定の人物を判定するように音源を特定できるとのことです。スマホやパソコン内蔵のマイクロフォンを用い、今流れている短い音源だけで簡単に音源を特定できるのは、この音声指紋技術があるからなのだそうです。

シャザム(Shazam)ではこの音源ごとの音声指紋を大量に集めデーターベース化しているため、世の中に発表されている主要な音源ならば特定できるということになるようです。従って、ご自身がたった今作曲した曲を録音しそれを流しても、残念ながらシャザム(Shazam)は認識してくれないというわけです。

ユーザーは、たった10秒間探したい音源を流すだけで良いのです。すると、シャザム(Shazam)はすぐさまその音源の音声指紋を作成し、分析し、今までに蓄えてきた数百億もの曲とマッチングさせる事で、音源を明らかにしてくれるのです。マッチしたならば、曲名やアーティスト名、その曲が収録されているアルバム名も教えてくれるわけです。

iTunesやApple Music、スポッティファイなどにリンクしています。スマホやパソコンなどあらゆる機器で使用できますが、周りの騒音がうるさすぎると音声指紋が作成できないので、認識してくれないのだそうです。筆者もカフェなどでこの曲いいなと思い試してみたら、機能しないことが何度もありました。その理由は周囲のお客様の話し声などの他の音だったということで、納得がいきました。

しかし、このシャザム(Shazam)や「サウンドハウンド」のおかげで、外出中に聞き覚えのある曲を聞いた際に「この曲なんだったっけ?」、と悩む必要もなくなりました。「この曲いいな!」と思ったらスマホを音源に向ければ、すぐに誰のどの曲かが分かります。音楽ファンには必須のアプリといえるでしょう!本当に、便利な世の中になりましたよね。しかし、こうしたアプリを知っている人と知らない人とのデジタル・ディバイドがどんどん大きくなっていると感じているのは、筆者だけでしょうか?

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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