海外企業紹介

副業・起業のためのシリコンバレーの企業紹介
スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)

掲載:2022/1/10

最終更新日:2022/01/10

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はスマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)について、将来の起業家・投資家であるシニア・女性・ミレニアル世代のみなさんと共に見ていきましょう。

米国株投資・起業を目指す方必見! スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)の概要と特徴とは?

スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)、従来の金具ではなく、マウスピースによる家庭用歯列矯正器具のオンライン販売企業です。

歯科医院での従来の金属を使用したものよりも、6割も安く、目立たなく、治療期間も短く、通う必要がないという4つのポイントをアピールし、米国では急成長しているそうです。

同社のウェブサイトで自己診断後、オンラインでも実施されていますが、通常は同社の専用ショップで30分ほどで終了する3Dスキャン(費用は約5000円)を行います。あまりにひどい歯並びで矯正不可能と診断されると、スキャン代金は返却されます。スキャン結果を元にマウスピースを作成、自宅に送付後は、自宅での矯正が可能となります。歯科矯正医師が遠隔治療で経過をモニターで観察してくれます。

オプション品として、家庭用のホワイトニングがあります。これは日本でも普及しており、筆者も経験があります。スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)の製品は同社のショップで行うのでしょうが、日本の家庭用ホワイトニング製品は歯科医院が扱っています。初回にレントゲンを撮影すると、1週間後にマウスピースが作成されます。2回目はマウスピースの装着感を確認後、歯を磨きます。その後は、歯科医院に通う必要はありません。自宅で、専用液を塗ったマウスピースを、数時間装着します。テレビを見ながらでも、寝るまでも、やり方は自由です。これの歯科矯正バージョンだと考えていただければ、イメージしやすいと思います。

価格は約20万円です。米国では歯科医での従来のものは50万円以上なので、60%安いという触れ込みのようです。その他に、毎月1万円を支払うというサブスクリプションプランもあります。歯科医院での従来のタイプの歯列矯正は定期的に通わねばならなりません。

投資家・起業家注目!スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)の沿革と問題点

スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)は、2014年に創業されました。場所はテネシー州ナッシュビルというカントリーニュージックの本場で、今までご紹介してきた企業とは異質だとお分かりいただけると思います。

徐々に評判を呼び、店舗を増やし、2017年には約150億円の売上となります。2018年には約400億円を調達、企業価値も約3500億円とユニコーンの仲間入りを果たしました。大規模なテレビ広告を実施、売上も約450億円と急成長を果たします。

2018年にはカナダ、2019年にはイギリスとオーストラリアに進出、アングロサクソン系5カ国で構成されるファイブ・アイズの中で人口の少ないニュージーランドを除き、スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)が浸透したわけです。

そして、日本でいうとマツキヨのようなCVSという薬局チェーンと提携すると、ショップは急増します。2019年のグラミー賞ではデビューから3枚連続でアルバムが全米首位となっているショーン・メンデスと「自信は素晴らしい微笑みから生まれる」という標語を使用したコラボを行います。こうして、特に若年層の間で人気となりました。

地元ナッシュビルでは2024年までに約2,000人を新規に雇用し、約250億円を投資すると発表しました。米国で成功するにはマーケティング/PRが非常に重要だと起業を目指す閲覧者の方に理解していただけたでしょうか?

そして、2019年8月にはナスダック上場を果たしました。しかし、株価は初日に約30%も急落しました。この年の売上は約800億円で前年比ほぼ倍増、とまさに破竹の勢いでした。

しかし、歯科医院でレントゲンも撮らずに、3Dスキャンのみでマウスピースを作成し、それのみで歯の位置を動かしていくなど歯列矯正とは異なり、言語道断との批判が歯科矯正医師会から提出されました。

彼等の主張によると、歯並びの矯正はどんなに小さな変更でも、歯茎、歯根などに影響を与えるので、歯科医なしに行うのは危険だとのことです。X線写真を矯正の前にも、後にも撮らないなど、本当に治ったどうかなど分からないというのです。

実際、スマイルダイレクトクラブ(Smile Direct Club)での矯正後に交叉咬合や噛み合わせのずれが起きて、歯医者を訪れるという例も多いそうです。結果的に、高くつくどころか、かえって症状が悪化してしまうわけです。そして、患者による訴訟も起きました。

このような企業が日本で人気となり、上場するなど想像できませんよね?これが、マーケティングが非常に有効な米国と日本との違いなのです。そして、アルファベットのように世の中の役に立つためでなく、お金儲けのための起業も多いということでしょう。

将来の投資家・起業家のみなさんは、起業は世の中の役に立つためだということを忘れないでいただきたいものです。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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