海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
スナップチャット(Snapchat)

掲載:2022/3/7

最終更新日:2022/03/07

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールの、投資・副業・起業を目指すミレニアル世代・シニア・女性等への起業のアイデアとなる、シリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回はスナップチャット(Snapchat)について解説していきます。

スナップチャット(Snapchat)の概要、人気の秘密とは?

スナップチャット(Snapchat)は、米国のティーンズの間で最も人気のあるSNSです。Statistaの調査の下部のテキストにあるように2020年秋の最新調査では、スナップチャットが34%で首位、TikTok(ティックトック)が29%で続いています。2019年9月の調査ではインスタが1位で25%、フェイスブックが2位で24%、スナップチャットが3位で22%、TikTokはわずか2%であり、2020年に業界地図が大きく変わったことが伺えます。世界ではフェイスブック、インスタグラムに次いで3位となっていますが、日本などではまだインスタなので、世界的な成長の余地は大いにあるでしょう。

SNSにおいては、高年齢化は大きなマイナス要因です。フェイスブックがWhatsApp(ワッツアップ)、インスタグラムを次々に買収したのは、フェイスブックのユーザー層が高年齢化したためです。SNSの最大のヘビーユーザーであるティーンズの動向は業界の先行指標となっているからです。こうした意味からも、将来の投資対象また起業における見本として日本ではまだまだ知られていないスナップチャット(Snapchat)を紹介することにした次第です。使い方などは他のサイトで紹介していますので、ここでは投資と起業という観点から説明していきます。

スナップチャット(Snapchat)の最大の特徴は、送信した1秒から10秒以内の画像や動画とメッセージがすぐに消えるというアイデアです。家族や親しい友人など特定の個人やグループ向けの画像やチャットは閲覧後すぐに、一般に公開したものでも24時間後には消えてしまいます。このすぐに消えるという安心感から、親しい友人にしか見せられないおどけた画像などを送信し、ストレスを発散することができる点がティーンズに人気の最大の理由でしょう。また、日本でもLINEでの返信が面倒だという若い世代の声を聞いたことがおありでしょうが、返信する必要がないというSNS疲れを解消してくれる点も評価されているそうです。

当初は「スナップ」と呼ばれる画像を送信する画像共有サイトだったのですが、現在は動画やテキストも遅れるSNSサービスとなりました。さらにビデオ会議機能も追加されています。2021年7月時点でのアクティブユーザー数は約3億人で、一日40億以上のスナップが送信されているそうです。

ネコ耳をつけるなど他のSNSに見られる画像編集よりも過激な、バカ顔に変えてしまうフィルターやレンズが人気となっています。フィルターは撮影後に編集するもので、レンズは撮影中に表示されるという違いがあります。

送信された画像や動画は一度だけのリプレイとスクリーンショットも可能ですが、投稿者に通知が届く仕組みとなっています。投稿者が残したくないと思っている画像をスクショすると、当然ブロックされることになるので注意が必要です。

日本語化は不十分ですが、2022年には東京にオフィスも設立されるそうなので、日本でも一気に人気となるかもしれませんね。

スナップチャット(Snapchat)の沿革とミッション

スナップチャット(Snapchat)の本拠地はカリフォルニア州サンタモニカです。2011年にスタンフォード大学3年生の2人がプログラマーと共に設立しました。7月にiOSで「Picaboo(ピカブー)」としてローンチされました。しかし、アイデアを持ち込んだ創業者の一人が追放され、9月に「スナップチャット(Snapchat)」として再リリースされました。

フェイスブックの例が有名ですが、こうした共同創業者の追放劇は本当によくあるケースなので、将来起業を目指す閲覧者の方は本当に信頼できる方とのみ起業するべきだということを肝に命じておいてください。2014年に約160億円の支払いとアイデア提供者として公式に承認することで和解となりました。

追放された創業者発案の「Ghostface Chilla」というお化けのマスコットは残されました。訳すと「ゆったりした気分にしてくれるお化け顔」です。日本でも最近「チルい」という言葉が流行しているようですが、「Chill Out」というゆったりした気分になれる音楽は2000年代から欧米のクラブやラウンジでは人気分野の一つでした。日本でも癒やしを求める人が増えたのでしょうか?

ミッションは、「写真に撮られたような完璧な表情や、素晴らしい感情だけでなく、人間の全ての感情を伝えたい」というものです。当初は、「アイデアは素晴らしいが、簡単に真似をされてしまうだろう」と言われていたそうです。そして、ブランドよりもユーザビリティと技術に力をいれていきます。

2012年5月には毎秒25のスナップが送信され、11月には毎日2千万のメッセージが送信されるほどに成長を遂げました。アンドロイド版もリリースされ、動画送信も開始されました。

2013年にはスナップ送信不可の保存用のみとする13歳以下のキッズ版がiOSでローンチされました。

2014年にフェイスブックからの買収提案を拒絶、ビデオチャット、消えるテキストメッセージ、「スナップキャッシュ」という独自通貨送信機能が追加され、SNSとなりました。

2015年には有料の2回目の再生機能を追加しますが、翌年に削除されました。5月には毎日20億、11月には60億メッセージと、3年前と比較すると300倍の規模に急成長を果たしました。約500億円を調達しヴァリュエーションは約1兆7千億円のユニコーン企業となりました。

2016年にはスナップを保存し修正可能な「メモリー機能」が追加されました。日付や物確認機能でスナップを探せる検索機能を持ち、IDが必要な「マイアイズオンリーエリア」に保存されます。売上は約400億円、赤字は約500億円、アクティブユーザーは1億5千万人でした。「Spectacles」というグーグルグラスのような画像を撮影・録画できるスマートグラス発売と同時に「Snap Inc.」に社名を変更しました。

2017年になるとロンドンに海外本拠地が設立され、4月にはニューヨーク証券取引所に上場、初日に44%も上昇しました。始値で約3300億円となりマリオット・ホテルと同規模となりました。ツイッターの約3倍、フェイスブックの10分の1に当たります。この後グーグルからも買収を提案されます。

2020年第4四半期のアクティブユーザー数は前年同期比22%増加した2億6500万人です。2020年の売上は前年比45%も増加し、約2,700億円、赤字は1,000億円です。2020年10月には5兆円、わずか4ヶ月後の2021年2月には10兆円の市場価値企業の仲間入りを果たしています。株価は1年で3.5倍になりました、最も成長している企業のひとつといってもよいでしょう。

スナップチャット(Snapchat)の商品とマネタイゼーション

スナップチャット(Snapchat)は、当初は単なる画像共有アプリでした。現在はSNS機能を持ち、許可されたユーザーのみが閲覧できる個人による「ストーリー」と広告付きの企業による「ディスカバー」に大別されます。ストーリーは24時間の時系列の記録で、ディスカバーは広告付きの短い映像です。また、「マイアイズオンリーエリア」というパスワードで保護された空間に画像を保存できます。日本語を含む40言語に対応しています。

写真ボタンを押し続けることで10秒以内の静止画や動画を送信できます。これが「スナップ」です。後に60秒に延長されましたが、一度に送信できるのは10秒までです。スナップは、パスワードで保護された空間で24時間後または閲覧後に消失します。受信者による1日に1度の再生は無料ですが、スクリーンショットと同様に、発信者に通知されます。また、発信者はメモリーにスナップを保存することが可能です。

フィルターは、他のアプリにもあるようなセピアなどに色調を変えられるエフェクト機能だけではありません。「ジオフィルター」では、エッフェル塔などの世界中の名所を登場させ、背景にして、みなで写真を撮ることができます。プリクラにも同じ機能があったような気がするので、日本は実は色々なものを創造しているのにIT企業としては世界的な成功に結びついていないのが残念に思えました。また、タコベルがスポンサーのタコベルフィルターではタコス顔に変身することができます。虹色の舌を出したり、眼から滝のような涙を流したり、ヴォーグ風にオシャレを気取ったりと、様々なフィルターが用意されています。レンズは、相手の顔に焦点を当ててから表示されるので、そこから選ぶことができます。ネコ耳など1,000ものレンズの種類は毎日変わるので、前回気に入ったものを使えないこともあります。絵文字もあります。

こうしたおどけた、親しい人にしかみせたくないお馬鹿な画像や動画を共有し、ストレスを発散するのです。但し、ずっと持たれているとからかわれることもあるでしょうし、関係が壊れた際にはその画像が流出するのは避けたいので、閲覧後に消えることが重要なわけです。

親しい友人に限定せず公開しているユーザーは、目立ちたがり屋さんだったり、フォロワーを増やしたいなどの理由があるのでしょうが、これはインスタやTikTokなどでも同じですよね。

2016年には静止画や動画を10秒ずつ、10秒間隔で最大30秒まで撮影できるカメラ付属サングラスであるスマートグラス「Spectacles」を発売しました。特徴は、録画される画像がそのレンズの形状と同じく円形であることです。画像はスナップチャットアカウントに紐付けられ、本体のメモリーにアップロードできます。価格は$129.99と安価で、外観はグーグルグラスと異なりチープなおもちゃという印象です。BluetoothやWi-Fiでスマホと連動します。18年発売の洗練されたデザインに変更された第2世代は$149.99でした。2019年発売の第3世代は2つのカメラを内蔵、$380と価格も倍となっています。

2017年に追加されたボイスミキサーで声を変えることもできます。ある都市やイベントなどを示すオリジナルステッカーを作れる「ジオステッカー」機能もあります。

2018年には「スナップカメラ(Snap Camera)」というパソコン用のビデオ配信アプリがローンチされました。このアプリをダウンロードすれば、「ズーム」などお好みのビデオ会議アプリを通じてスナップチャットのフィルターやレンズを使用することで、お馬鹿な会話が楽しめます。米国で大流行している「リーグ・オブ・レジェンド」等の大勢で協力しながらのオンライン対戦型ゲームにも、オバカ顔で参戦できます。

また、2020年にはコンピュータビジョン企業を買収、ARフィルターやVR機器と接続し、自身のアバターを使用して仮想現実世界を体験するなど、元フェイスブックが力をいれており、今後流行するであろうメタバースにも対応しています。2021年にクリエイター向け限定にリリースされたスマートグラス「Spectacles」最新版はAR対応となっています。カメラ、マイク、スピーカーが内蔵されています。重量は134グラムと前モデルの倍ですが、他社のHMDよりは小型です。

課題だったマネタイゼーションでは、2015年に企業の宣伝用のスナップである「ディスカバー」と「ライブストーリーズ」が開始されました。2016年にはNFLと組んだストーリーやオリンピックで放映権を持ったNBCと組んだストーリーが配信されました。

そして、下記のタコベルや全米の店舗の位置を使用した最初の顧客のマクドナルド、スターバックスなど企業のジオフィルターが広告の主力となってきました。

スナップチャット(Snapchat)の問題点

最大の問題点は性的画像の流出です。スナップチャット(Snapchat)は、プライベートな画像や衝動的に送信したオバカなメールや画像の流出の恐れがないというのが、当初のセールスポイントでした。しかし実際には上述のように発信者に通知されるものの、スクショはできてしまうわけです。ここで問題になるのが、オバカ顔だけでなく性的画像も送信されていることです。主要ユーザーがティーンズなので、頼まれると断れずにそうした画像を送信してしまう、すぐに消えるからいいと思っていたら、スクショができてしまう。つまり、日本でも最近話題のリベンジポルノなどに利用されてしまうことです。この点をユーザー層の両親が憂慮しているのは当然でしょう。

また、2017年に追加された現在の滞在地点を友人にシェアする「スナップマップ」機能も、プライバシーと安全面から非難を受けました。企業のディスカバリーページも当初は評判が悪く、スナップ送信とストーリーの二度見が複雑とされ、120万人がアップデートの削除を求める事態となりました。

そして、収益面では未だに赤字が続いています。その商品は他のSNSと比較すると評価も高く差別化しているのですが、その全てが赤字となっています。上述のストーリーズやジオフィルターなどの主力商品以外でも、最新商品のセルフィー画像への3Dペイント、自分と友人のビット文字のアバターが主要キャラクターとして出演するビット文字テレビ、コカコーラやマクドナルドなどのロゴがAR内でスキャンできる広告、自社製品のカタログや広告を自動的に反映してくれて手間がかからないダイナミックアズなど、魅力的な商品を揃えています。特にダイナミックアズはD2C商品として高く評価されています。インスタグラムの広告が高価であり、スペースの取り合いとなっているため人気となり、2020年第1四半期には全広告の半分を占めるようになりました。フェイスブックは黒字化まで設立後11年もかかりました。スナップチャットも2021年が11年目だったので、そろそろ黒字化してもいい頃なのかもしれません。

新型コロナウイルスの流行による世界的な金余り状態により、赤字でも株価は上昇を続けていました。しかし、10月にアップルが導入するデータ収集制限により広告キャンペーンの評価・管理が難しくなると発表、株価は約25%も急落しました。2022年1月現時点での株価は$46と昨年の高値$83の半値近くまで下落してきています。赤字にも関わらず、明らかに上がりすぎでしたよね。時価総額も10兆円を割り、7兆円ほどにまで下がっています。

その商品への評価は高く、その成長は計り知れないように感じられます。話題のメタバース関連銘柄でもあります。将来の米国新興成長株投資家・起業家である閲覧者の方も、中長期的には投資候補として注目してみてはいかがでしょうか?

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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