海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 スポットセッター(Spotsetter)

掲載:2021/2/15

最終更新日:2021/02/15

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はアップルが買収した企業の一つであるスポットセッター(Spotsetter)について、見ていきましょう。

起業・スタートアップを目指す方必見!スポットセッター(Spotsetter)の概要

スポットセッター(Spotsetter)は、2011年にカリフォルニア州サンフランシスコに設立されたソーシャル検索エンジンを提供する企業です。ビッグデータにより、どこに遊びに行くべきかを提案してくれるのですが、当初は見知らぬ人ではなく友人のデータのみを集めることによる信頼感が他社との差別化要因でした。

2012年にはアクセラレーターから約1,000万円を調達し、10週間の養育を受けました。その後のシードファンディングで約1.5億円を集めることができました。将来の投資家・アントレプレナーのみなさんも、アクセラレーターから認められることが重要だとご理解いただけると思います。そして、起業後わずか3年の2014年にアップルに買収されたのですが、買収価格は明らかにされていません。買収時の従業員数なども不明です。

リンクト・インのように、どの友人がどの分野のエキスパートであるかを、カテゴリ毎にタグ付けできます。ただし、ビジネス分野ではなく、Aさんはコーヒー、Bさんはお鮨、Cさんは美術などお出かけ用に分類するわけです。

地図上をスクロールすると、友人が行った場所、さらにその中でも推薦している場所をご自分の専用の地図上に表示できるのです。日本のお出かけサイトにみられるように、現地に行ったことがないキューレター、旅の達人でも何でもない方が推薦しているスポットやお店に行くよりも、はるかに失敗が少ないのはお分かりいただけるでしょう。例えば日本でも地方を旅行する際には、県庁所在地でも食べログなどの情報も未だに少ない都市が多く、どの店を予約するか苦労した経験がお有りだと思います。もし、グルメの友人が実際に現地を訪れ、推薦している飲食店があれば、迷わずそのお店に行けばいいわけです。

このアイデアはFoursquareというアプリがすでに行っていたそうですが、特許によりフェイスブックやツイッターの情報を吸い上げることができるそうです。SRIインターナショナルの記事で強調した、特許の重要性を起業・スタートアップを目指す閲覧者の方にも気づいていただきたいです。

友人からの情報だけでなく、食べログの元となったYelpやトリップアドバイザーなどの口コミやミシュランやザガートなどの専門家の批評を、30ものサイトから取得しているとのことです。観光、レストラン、ホテルなど旅行に関わる全ての情報が1つのサイトから手に入るのですから、こんな便利なことはないですよね?

海外旅行においては、ミシュランやザガートでレストランは探せるので、食べログなどの素人の口コミや昔ながらの県や市のウェブサイトに紹介されている店から探さべばならない日本旅行よりも確実に美味しい店を探すことができます。しかし、ホテルの予約はホテル予約サイト、観光は国や地域のサイトを使用するので、少なくとも3つのサイトが必要になるわけです。スポットセッター(Spotsetter)のようなサイトが特に日本にあれば、みなが今より充実した旅行がおくれるようになるはずです。

起業家・アントレプレナー注目! アップルがスポットセッター(Spotsetter)を買収した理由と買収後の動向は?

まずは、そのデータが挙げられます。買収前の2013年時点で、既に500万人の個人データ、4,000万のサイトからのデータを収集し、100万箇所の情報を提供していたとのことです。場所、寺社仏閣などのキーワード、レストランなどのカテゴリを入れると、レビューサイトからの情報に加え友人のコメントが提示されるそうです。

アップルはHopstop、Embarkなどの公共交通機関マップアプリやLocationalyという企業データ提供企業をアップル・マップのために買収していますが、こうした企業がマップの改善のために買われたのに対し、スポットセッター(Spotsetter)はGoogleマップにない機能を追加するための買収だった点が特徴です。

2人のファウンダーのうちの1人がGoogleマップのエンジニアだったということもあるようですが、それにはないレコメンド機能が魅力だったようです。

そして、買収後はいつものように、独自アプリは閉鎖され、アンドロイドでは使えなくなりました。アルファベットとは異なり、アップルが世の中のために役立っているのかと、疑問に思ってしまいます。そして買収から5年後の2019年に、ようやく、旅行の目的地や気になる場所をお気に入りとして追加してリストを作り友人と共有できるコレクション機能が、iOS13で開始されました。日本では食べログやトリップアドバイザーの口コミや情報が掲載されます。

旅行に行く際に、同行する家族や恋人、友人と共有することで、行きたい名所、寺社仏閣、お城、レストラン、お土産屋などをお互いに入れていって事前に打ち合わせができます。旅行前から楽しめますし、充実した旅行になるでしょう。レストランの電話番号や住所などの情報も表示されるので、店の予約もでき、現地に向かう際に場所を確認することもできます。

しかし、残念ながら、スポットセッター(Spotsetter)の機能は一部しか導入されていません。Googleマップに劣っていると言われているマップ自体の精度を上げることのプライオリティが高くなっているようです。地方旅行の際に美味しいお店を探すのに苦労している筆者としては、特に日本でスポットセッター(Spotsetter)のフル機能が搭載されるのが待ち遠しいです。

医療においてもパーソナライズ化の必要が叫ばれていますが、検索の分野でも同様です。地図の精度を上げることは、もちろん重要です。しかし、アップルにはお出かけ分野において、このスポットセッター(Spotsetter)の以前有していた機能を早く実現していただきたいものです。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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