海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 Summly(サムリー)

掲載:2021/1/8

最終更新日:2021/01/08

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回は、サムリー(Summly)について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業家・アントレプレナー注目!サムリー(Summly)はイギリスのティーン・エイジャーが開発!

サムリー(Summly)は、当時10代だったダロイシオ少年が開発したウェブサイトの要約アプリです。名前は英語で要約を意味するsummaryから取られたと思われます。サムリー(Summly)は2013年にアップルストアに登場すると、一気に人気となります。そして同年、ヤフーに約30億円で買収されると、17歳だった少年が大金を獲得したとして、当時のイギリスやアメリカではこの話題が非常にホットとなりました。

ダロイシオ少年は、2011年、15歳の時に、ネット上の膨大な量の文章を要約できれば便利なのではと、考えつきます。既にプログラミング技術を取得していたダロイシオ少年は、同年メールやブログを要約するアルゴリズム「Trimit(トリミット)」を開発しました。このTrimit(トリミット)は、アップルストアでも人気となりました。そして、香港の投資家からの約3億円の出資を受け、ダロイシオ少年はウェブ業界では、知る人ぞ知る存在となったのです。

こうして潤沢な資金を獲得したことにより、ダロイシオ少年は新しいプロジェクトの開発をスムーズに進めることができるようになりました。そして、Trimit(トリミット)の技術をニュースに転用し、同年ニュース要約アプリ「サムリー(Summly)」を立ち上げたのです。

現代はネットの普及により、ニュースが溢れています。すべてのニュースを読むことなど、不可能でしょう。こうした人々の期待に応えたのが、サムリー(Summly)というわけです。

起業・スタートアップを目標とする閲覧者のみなさんも、こうした単純な疑問の中にビジネス・チャンスがあるのだと学んで頂ければと思います。しかも、彼のアイデアは、まさしく世の中の役に立つものだったわけです!

サムリー(Summly)は、最初は要約の質があまり高くないのが問題でした。しかし、潤沢な資金を使用し、自然言語処理技術のプロであるイスラエル人のチームを雇ったことで、解決できたとのことです。前回のSiriの例にもありましたが、やはり言語認識、翻訳や要約には、自然言語処理技術が不可欠のようです。

2012年には、オノ・ヨーコ、俳優のアシュトン・カッチャーやスティーブン・フライなどから、約1億円の追加出資を受けました。そして、2013年のヤフーへの売却へと至ったわけです。同時にヤフーにプロダクト・マネジャーとして参加しました。

起業・スタートアップを目指す方必見!サムリー(Summly)の機能とは?

サムリー(Summly)が注目されたのは、ニュース記事の要約アプリとしてでした。あらゆるニュースが要約され、スマート・フォンで閲覧できるのです。要約のポイントとなるのが、単語の使用頻度や文脈における位置です。そこから、どの単語が重要なのかを判断するのです。被リンク数の数などからそのサイトの重要性を判断するグーグルのページ・ランクと似た機能だと感じました。

そのため、規則正しく構成された記事については上手く要約できるが、ばらばらな規則性のない文章は苦手ということになるようです。文章力が低く一貫性のない、何を言っているかわからないようなキュレーション・サイトの記事などは、残念ながらサムリー(Summly)も対応してくれないということになります。

現在では珍しくないかもしれないですが、学習機能も備え、進化していくという特徴も備えています。

また、サムリー(Summly)の特徴は、その機能の優秀性だけではありません。若い世代かつファション好きでデザインに興味を持つダロイシオ少年ならではの、デザイン性の高さも注目されました。

サムリー(Summly)で要約を読んで興味を持った場合には、オリジナルのニュース原稿に簡単に移動も可能となっています。引用と同じ構造となっており、他社のようにニュース提供会社との揉め事は起きていないとのことです。

起業家・アントレプレナー注目!サムリー(Summly)の可能性とダロイシオ少年のその後は?

しかし、将来のアントレプレナーを目指すシニア・女性・若年層のみなさんであれば、ニュースは見出しを見ればある程度の内容を把握できる、と考える方も多いのではないでしょうか?

それに対して、ウェブサイト、特に内容の濃いキュレーション・サイトでない専門家によるサイトや研究論文を、見出しだけで理解することなど不可能でしょう。サムリー(Summly)の技術を使用すれば、こうしたことも可能になるというのが、検索エンジンにおいてグーグルの後塵を拝しているヤフーの考えだったのではないでしょうか?

2014年に、当時ヤフーのプロダクト・マネジャーだったダロイシオ氏は、ヤフー・ニュース・ダイジェストというアプリをローンチしました。サムリー(Summly)をさらに進化させ、その日の重要ニュースの要約を1日に2回提供しました。特徴としては、1. 自動要約に加えて手動でも校正されている、2. 地図やグラフや引用やウィキペディアが挿入されている、という点でした。このアプリは業界で高く評価され、2014年のアップルのデザイン・アワードを受賞しました。

これで責任を果たしたと思ったのか、2015年にダロイシオ氏はヤフーを退職しました。そして同年、Sphere Knowledgeという会社を共同で設立しました。Sphere Knowledgeについては、公開情報ではありませんが、知識をラインのようなメッセンジャーで共有するサービスだと言われています。2019年には約30億円を調達したそうで、既に24歳となったダロイシオ氏への期待は大きいようです。

いかがだったでしょうか?海外では少年にしてミリオネアーというのも夢ではありません。未来の起業家・アントレプレナーである女性・シニア・若年層の方も、世の中を便利にしたいという気持ちがあれば、ダロイシオ氏のようになることも可能なのです。しかし、それにはプログラミングがいかに重要かということも、ご理解いただけたのではと思います。ホリエモンこと堀江氏も、東大在学時にプログラマーとしてインターネットと出会い、起業したのです。

次回は、やはり要約アプリであるブリンキスト(Blinkist)について解説していきます。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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