テラドック・ヘルス(Teladoc Health):ビッグデータ活用とAI分析が強み!遠隔診療のリーディングカンパニー
シリコンバレーの注目企業紹介
掲載:2025/4/10
最終更新日:2025/04/10
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールのシリコンバレー等の注目企業紹介のコラム。今回は、遠隔診療、慢性疾患やメンタルヘルス管理など包括的なオンライン医療サービスを世界中で提供しているテラドック・ヘルス(Teladoc Health)についてご紹介します。
●テラドック・ヘルスの資金調達の経緯
テラドック・ヘルスは、遠隔診療界のトップ企業です。本拠地はニューヨーク州パーチェスです。他社との差別化ポイントはビッグデータ活用とAI分析です。2023年現在、130か国で約8,000万人に遠隔診療を提供しており、米国の約6,000万人は有料会員だそうです。顧客数は12,000社、従業員は5,000人を超えています。
テラドック・ヘルスは2009年と2011年にシリーズaを実施。それぞれ約13億円、約25億円を集めました。2012年のシリーズbで約20億円、2014年のシリーズcで約70億円を調達し、軌道に乗りました。2015年にはニューヨーク証券取引所に上場し約220億円を調達。上場とともにユニコーン企業となりました。
●テラドック・ヘルスの概要と沿革
テラドック・ヘルスは、2002年にテキサス州ダラスで設立されました。医師などが創業者である最も古い遠隔診療企業で、いつでも医師が遠隔で患者の相談に乗れるというビジネスモデルでした。診察料はその都度支払う仕組みでしたが、従業員に対してはサブスクリプションモデルを適用していたそうです。
2005年のヘルスケア会議において、テラドック・ヘルスは全米にその名前をブランディング化することができました。2007年にはAT&Tなどの大企業が従業員に同社のサービスを提供し、会員数が100万人となります。2011年には大手保険会社のエトナがフロリダとテキサスの保険加入者にテラドック・ヘルスの遠隔診療を提供。その後、全米50州へと対象エリアを広げ、一気に普及します。将来の起業家のみなさんには、やはり大手企業との提携が事業拡大の契機になると知っていただければ幸いです。
そして、やはり運がとても重要です。2010年に成立したいわゆるオバマケア法が2014年に施行されると、2,000万人もの無保険者が健康保険資格を獲得。多くの保険会社がテラドック・ヘルス製品を導入し、会員数が大幅に増加しました。AT&Tに続いて同業のT-Mobile、ホームセンターのThe Home Depotなどの大手企業が従業員向けにテラドック・ヘルス製品の提供を開始しました。テラドック・ヘルスは2013年に競合のConsult A Doctor、2014年にはAmeriDocを買収。本業を拡大し、2年連続で売上が倍増しました。
2015年にはメンタルヘルスのオンライン診療企業であるBetterHelp、その場で救急医療を提供するStat Health Service、2016年にはアプリを使用した競合のHealthiestYou、2017年には医師へのセカンドオピニオンなどの質問サイトであるBestDoctorsを次々と買収します。さらに、2018年には大病院から薬局まで幅広く医療器具を提供するAdvance Medicalを買い上げ、全米最大の遠隔診療企業となっています。その結果、2016年に会員数は1,500万人となり、2017年にはフォーチュン1000企業の約20%を含む7,500社に上る顧客を獲得しました。
テラドック・ヘルスが行ってきた買収からは、「競合他社や専門分野の同業のM&Aによる本業拡大」、さらに「医師とつながりのある企業を統合し、傘下の医師数を増やす戦略」が伺えます。本業とは全く関係のない分野へ進出する企業も多い中、シナジーのある企業のみを買っているのは称賛に値するでしょう。起業家を目指すみなさんにも参考にしていただきたいです。2018年にはTeladocからTeladoc Healthへと社名を変更しています。また、全米最大の薬局チェーンを傘下に持つCVSと提携しました。2019年にはフランスの競合であるMedecinDirectを買収。カナダに進出するなど海外展開も進めていきます。
2020年に新型コロナウイルスが流行すると、CDCに非常に精度の高い感染状況予測データを提供しました。さらに、救急治療のInTouch health、高血圧や糖尿病などの慢性疾患患者向け生活習慣マネジメントアプリを提供するLivongo Healthを買収して予防医療分野へ進出。翌年にはDexcomを通じて糖尿病マネジメントサービスを開始しました。さらに、メンタルヘルスケア・プログラムもスタートしています。2021年にはマイクロソフトのTeams経由でTeladocの医療システムSoloを提供することを発表しました。2022年にはアレクサを通じて、アマゾンユーザーも同社の製品にアクセスできるようになりました。著名病院のメイヨー・クリニックとも提携が決まりました。
●テラドック・ヘルスの商品
テラドック・ヘルスは「Teladoc」の他に、買収した「Advance Medical」「BestDoctors」「BetterHelp」「HealthiesYou」「Livongo Health」をブランドとして残しています。既に認知度とブランドネームが確立されている企業やサービスを買収するマーケティング戦略の結果だと推測されます。
「Teladoc」は遠隔医療サービス、「Advance Medical」は病院から薬局までの医療機器卸、「BestDoctors」はセカンドオピニオンなど医師への質問サイト、「BetterHelp」はメンタルヘルス専門のテレ・メディシン、「HealthiesYou」はアプリによる遠隔医療サービス、「Livongo Health」は血圧や血糖値の測定など慢性疾患向けアプリです。
「Teladoc」では電話とビデオ会議を使用した遠隔医療機器とAIとデータ分析、ライセンス可能なプラットフォームを提供しています。患者はいつでも好きな時にアプリを使用して、医師による遠隔診療と処方を受けられます。100以上の医療ガイドラインを用意し、2019年の段階で90%以上の相談が1回の遠隔診療で解決されているそうです。
前述の糖尿病マネジメントを含む慢性疾患ケアプログラム「Chronic Care Complete」や「myStrengthComplete」というメンタルヘルスケア・プログラム、日本でいう「かかりつけ医制度」であるプライマリ・ケア・サービス「Primary360」も用意されています。
また、同社の製品は6つの分野に分かれています。プラットフォームとプログラム、指針と補助、専門医療、メンタルヘルス、遠隔診療、統合されたバーチャルケアです。統合されたバーチャルケアはマイクロソフトとの提携により、カルテ閲覧などの作業がマイクロソフトのプラットフォーム上で可能になり、利便性が向上したそうです。大半の顧客が保険会社や企業なので、月額または年額のサブスクリプション収入モデルとなっています。
今後注目されるのが、テラドック・ヘルスが遠隔診療によって得た膨大な患者のデータです。AIが進化すると、その解析の元となるデータ量の多さが大きな強みとなります。米国ハイグロ投資家としては目が離せない企業の1つではないでしょうか。

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