海外企業紹介

起業・スタートアップのための
シリコンバレーの企業紹介 Tempo AI(テンポAI)

掲載:2020/12/25

最終更新日:2020/12/25

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はTempo AI(テンポAI)について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業家・アントレプレナー注目!テンポAI(Tempo AI)の目標はビジネスマンのための優秀な秘書!

テンポAI(Tempo AI)は、SRIインターナショナルからスピンアウトした、スマートカレンダーを提供する企業です。前回紹介したデスティ(Desti)同様に、特徴はAIによる学習機能といえるでしょう。そしてアップルのiOSに採用されているので、起業・スタートアップを目指すみなさんも知らないうちにお使いになったことがあるかもしれません。

ユーザーのiPhoneに蓄積されたカレンダー、メール、連絡先、訪れた場所などから、AIが、ユーザーが関心をもちそうなイベントをピックアップし、リクエストがあれば表示するというコンセプトです。ユーザーの日々のルーティーンとなっている行動からパターンを分析して、パーソナイズ化されたカレンダーを提供してくれます。そして、使い込めば使い込むほど、ユーザーの求める情報が提示されるわけです。

例えば、ユーザーが美術愛好家でよく展覧会に出かけているとすると、自動的に関心のありそうなイベントを表示してくれるということです。現在・今後の展覧会を検索して探す必要がなくなるので、非常に便利ですよね?

しかし、テンポAI(Tempo AI)が目指していたのは、プライベートよりもビジネスユースでした。忙しいビジネスマンが、スマホ1つでどんどん仕事を片付ける手助けになればよいという、生産性の向上が目的でした。

現実世界ではエグゼクティブになれば秘書がスケジューリングなどを手助けしてくれるわけですが、秘書をアプリで実現しようということです。

忙しいビジネスマンでしたら、ミーティングだけでも1日に数本も入っているでしょう。社外の打合わせでしたら、どこの場所で行われるのかも、調べなければなりません。そして、米国では通常打合せに車ででかけるわけですが、この駐車場が少なく、ニューヨークでもサンフランシスコのベイエリアでもなかなか空いていないのです。近くの駐車場を、一つではなく複数調べねばならないのです。もちろん、アップルマップなどから所要時間も知らせてくれます

筆者の経験でも、訪問先の病院などの駐車場が空いていないために、パートナー企業のSRIインターナショナルのリサーチャーの方は会議に出席できず、その間は車で待っていることになったということも日常茶飯事でした。近ければウーバーを呼ぶという手段もあるでのしょうが、スタンフォードやメンロー・パークなどのベイエリア南部からサンフランシスコ市内までは車で1時間以上もかかり、現実的ではありません。

テンポAI(Tempo AI)は、会議と時間だけでなく、会議の場所、場所までの時間、そのそばの複数の駐車場など、あらゆる情報を届けてくれるわけです。

それ以外にも、もし飛行機での出張があるのならば、フライトの遅延状況やターミナルとゲート、フェイスブックでの友人の誕生日に投稿するなどのタスクのリマインド、打合せで移動した場所の天気予報(特にベイエリアでは南部は天気だがサンフランシスコでは雨、気温が10度異なるのは当たり前です)、そして初めて会う顧客だとしたらその写真や共通の友人(フェイスブックなどからの情報)、リンクトインなどからの職歴なども提示してくれるのです!

本当に秘書のようですよね?

さらに、ご自身がお気に入りに入れているSNSの投稿やメールなども、カレンダー上に表示されます。電話会議も時間になれば知らせてくれるだけでなく、あの面倒なパスワードを入力せずにボタンをタップするだけで参加できるそうです。

起業・スタートアップを目指す方必見!テンポAI(Tempo AI)の沿革

テンポAI(Tempo AI)は、2011年に設立されました。アプリは2013年にローンチされましたが、非常に人気となり、アプリの評価で5つ星を獲得しました。

10万以上ものリクエストに応えるために、予約システムを導入することになりました。3回にわたり、約13億円を調達することにも成功しています。

その後テンポAI(Tempo AI)は、2015年にはセールスフォース・ドットコムに買収されることとなりました。CEOのシン氏は、セールフォースの一部になることで、ビジネスマンの貴重な時間を節約するというミッションをさらに大規模に継続できると語っていました。

セールスフォース・ドットコムのユーザーであるビジネスマンは、こうしたスマート・カレンダーを当然必要としています。パーソナル用ではなく、ビジネス・ユースに転化していくことになるのが少し残念ですね。そして、せっかくこのアプリの良さを知ったのに、もう新規ユーザーを受け付けてくれないというのが一番ショックです!それ以上にそれまでテンポAI(Tempo AI)を実際に使用していたユーザーの方の落胆は、計り知れないでしょうが。

いくらで買収されたのかはわかりませんが、エグジットとしても悪くはないと思います。

主婦などの女性・シニア・ミレニアル世代などの未来の起業家・アントレプレナーのみなさんは、前回紹介したデスティ(Desti)もそうですが、買収されるエグジットに適した会社を起業するというのも一つのオプションだと思います。

次回はスポーツビジョン(Sportvision)について解説します。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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