映画から学ぶ起業・スタートアップ向けアドバイス
『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』

アタッカーズ・ビジネススクール（ＡＢＳ）のシニア・女性等への映画から学ぶ起業アドバイスのコラム。今回は、最高の“ワンチーム”を作るには人種や階級を超えた信頼関係を構築することが必要と訴えている傑作ファンタジー『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業・スタートアップを目標とする方への『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』の概要

『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』は、ファンタジー小説の最高峰といわれるJ・R・R・トールキン作の「指輪物語」を映画化した壮大な三部作の第一部です。アカデミー賞で13部門にノミネートされたピーター・ジャクソン監督による01年公開の名作です。世界を支配する力を持つ指輪を消し去るための旅にでた、9人の旅の仲間の友情と苦難を、描きました。イギリスでは子供向けと揶揄されている「ハリー・ポッター」シリーズとは異なり、大人も十分楽しめる作品となっています。

C.G.を屈指した映像やホビット、エルフなどの表情は非常にリアルで、映像化不可能といわれた壮大なファンタジーの世界を見事に再現しています。アカデミー賞で撮影賞、メイクアップ賞、視覚効果賞を受賞したのは当然といえるでしょう。演技陣の演技も高く評価され、この作品で人気となった俳優も少なくありません。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoesの視聴者1,355,751人による平均スコアは4.12という高評価となっています。

主人公のホビット族のフロドを演じたのがアメリカでは子役スターとして有名だったイライジャ・ウッドです。『フォーエヴァー・ヤング 時を越えた告白』（92年）、マコーレー・カルキンの『危険な遊び』（93年）、60年代の人気テレビシリーズ『わんぱくフリッパー』を映画化した『フリッパー』（96年）などで子役スターとしての地位を確立していました。

人間のヒーロー、アラゴルン役はヴィゴ・モーテンセンです。91年にショーン･ペン監督の秀作『インディアン・ランナー』で、ベトナム戦争帰りで精神を病んだ男を熱演し、そのセクシーさといぶし銀のような演技力で脚光を浴びました。しかしその後は作品に恵まれず、デミ・ムーア主演の『G.I.ジェー ン』での厳格な鬼曹長役などで、知る人ぞ知る存在でした。この『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』で、世界的な知名度を獲得しました。

アラゴルンの恋人であるエルフのアルウェン役は、エアロスミスのボーカルのスティーヴン・タイラーの娘である美人女優リヴ・タイラーです。96年に出生の謎を解明するためイタリア・トスカーナ地方を訪れる美少女役を務めたベルナルド・ベルトルッチ監督の『魅せられて』でスターダムに上り、98年にはブルース･ウイリス主演のSF大作『アルマゲドン』、99年にはプーシキンの小説『エヴゲニー・オネーギン』を映画化した『オネーギンの恋文』でヒロインを演じ、すでに高い人気を誇っていました。

エルフ族の弓の名人レゴラス役は、オーランド・ブルームです。当時はまだ無名でしたが、この美青年レゴラス役で人気が爆発、03年には『パイレーツ・オブ・カリビアン』三部作のウィル役に抜擢されることとなります。

エルフ族の女王ガラドリエル役は、ケイト・ブランシェットです。98年に『エリザベス』で若き日のエリザベス一世役を見事に務め、ゴールデングローブ賞と英国アカデミー賞の主演女優賞を受賞し、ブレイクを果たしました。以降、人の運命を見通す超能力を持つ占い師を演じた『ギフト』（00年）、ゴールデングローブ主演女優賞にノミネートされた、二人の脱獄囚と夫と主婦の三角関係と強盗生活をつづったブルース・ ウィリス共演の傑作恋愛サスペンス『バンディッツ』（01年）などで、その美貌と高い演技力への評価を確立していました。この『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』での出番は少ないですが、神秘的な美しさで高い存在感を示しています。

また、悪に寝返る白の賢者サルマンを、ドラキュラ役者として名高いクリストファー・リーが演じています。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』のネタバレなしの途中までのストーリー

ストーリーは中つ国第3紀、ビルボ・バギンズの111歳の誕生日を祝うために大騒ぎのホビット族の村で始まります。ビルボの旧友の魔法使いガンダルフも訪れ、二人は再会を喜びます。ガンダルフは指輪と共に旅にでようとするビルボを説得し、指輪はビルボの養子フロド（イライジャ・ウッド）に託されることとなりました。この指輪は冥王サウロンの指輪であり、サウロンの魂は、指輪を全力をかけて探していました。

モルドール国の滅びの山の火口に指輪を投げ込み指輪を破壊するために、ガンダルフはフロドに、裂け谷の館へ半エルフのエルロンドを訪ねて旅立つように指示します。フロドは親友のサムと共に村を出ます。ガンダルフは、白の賢者サルマン（クリストファー・リー）に助言を求めるために旅立ちます。

フロドの一行にはホビット族のメリーとピピン、人間のアラゴルン（ヴィゴ・モーテンセン）が加わり、谷に向かいます。途中サウロンの下僕に急襲されフロドは傷つきますが、エルロンドの娘のアルウェン（リヴ・タイラー）が迎えに来てエルロンドの館へ向かいます。フロドが目を覚ますとガンダルフ、ビルボがいました。

ガンダルフはサルマンが裏切り、オークの軍隊を作り、指輪を手に入れようとしていることを知り、逃れてきたのでした。エルロンドはドワーフ族、ホビット族、エルフ族、人間の仲間を集め、会議を開きました。アラゴルンが、ボロミアの父が執政を務めていた人間のゴンドール国の正当なる王位継承者であることも、明らかになりました。

フロドはモルドールに行って指輪を破壊すると宣言、アラゴルン、ボロミア、エルフのレゴラス（オーランド・ブルーム）、ドワーフのギムリ、ホビットのサム、メリー、ピピン、魔法使いのガンダルフからなる旅の仲間が結成されたのです。しかし、その後の旅では数々の試練が待ち受けていました….。

『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』を観て起業・スタートアップを目指す方に気づいて頂きたい点

副題が「旅の仲間」となっているように、旅の仲間の友情がテーマとなっています。しかも、友情はホビット族の3人に留まらず、ホビット、エルフ、ドワーフ、人間、魔法使いという、種族をまたいだものです。

欧米企業では、マネージメント層はよく「チーム」という言葉を口にします。マネージメントと従業員が一体となることでシナジー効果が生まれると、M.B.Aなどで教えられるからです。日本でも2019年のラグビー・ワールドカップの日本代表のスローガンの「ワンチーム」で、一般の方にも広まりました。

映画では困難な旅に出発する前に起きた出来事により、種族をまたいだ信頼関係が構築されています。起業・スタートアップを目指すみなさんには、起業前からパートナーや出資者、従業員、VCなどとの信頼関係を形成することが重要だと、気づいていただきたいのです。まず「ワンチーム」を作ることが、起業の際に最初にやるべきことだと、教えてくれています。

特に、人間の王家の血をひく英雄アラゴルン、エルフの王子レゴラスらが指輪を持つフロドのもとを離れホビットのメリーとピピンの救出に向かう場面は、指輪を消滅させるという大目的よりも友情、しかも自分よりも劣ったホビット族の端役との友情を重視するということを意味するわけで、大きな感動を呼びます。作者トールキンの母国であるイギリスの王族が、かつて植民地であったアフリカやインドの一般人の二人を助けに行くようなものです。

こうした人種差や階級差がなくても、大義のためにはメリーとピピンは犠牲になってもしょうがないというのが、通常の考え方でしょう。人種も階級も劣った者の救出を大義よりも優先するなどは、ありえないことです。しかし、こうした一般的な概念とは真逆の、人種や階級を超えた信頼関係を構築することが最高のワンチームを作るためには必要なのだと、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんに示唆してくれています。

RPGゲームファン、ハリポタファン、ファンタジー映画ファンなどどなたにでもおすすめできる大ヒット娯楽作品といえるでしょう！3部作すべてが傑作で、テレワーク中の暇つぶしにピッタリです！続編の「ホビット」シリーズよりも断然こちらがオススメです。