映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス
『暗殺の森』

2021/11/08

アタッカーズ・ビジネススクールの、スタートアップを目指すシニア・女性・ミレニアル世代などへの映画から学ぶ副業・起業アドバイスのコラム。今回は、自分自身を常に保ち環境に順応してはいけない、油断は禁物だと示唆してくれる『暗殺の森』について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。

副業・起業を目標とする方への『暗殺の森』の概要

『暗殺の森』は、『ラストタンゴ・イン・パリ』(72年)『ラスト・エンペラー』(87年)などで知られるイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチの1970年監督作品です。監督の数多い名作の中でも最高傑作ともいえる作品で、イタリアの小説家アルベルト・モラヴィアの『孤独な青年』を映画化たものです。モラヴィアは、ベルトルッチが敬愛するジャン=リュック・ゴダール監督がブリジット・バルドー主演で撮った名作『軽蔑』(63年)の作者としても知られています。原題は『順応主義者』であり、この原題を知って初めてこの『暗殺の森』という作品を理解できるといえるでしょう。

音楽は、トリュフォー監督作品の常連であり、上述のジャン=リュック・ゴダール監督の『軽蔑』(63年)も強く印象に残るジョルジュ・ドルリューが担当、作品をドラマチックに盛り上げています。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoes視聴者8,773人による平均スコアは、4.34であり、欧州映画としては最高水準のスコアとなっています。ファシストを描いた作品はアメリカでも人気があることも理由でしょうが、作品の素晴らしさを物語っているのでしょう。全米映画批評家協会監督賞と脚本賞を受賞しており、評論家からも、もちろん高く評価されています。

主役の順応主義者である無口な青年マルチェロ役は、ジャン=ルイ・トランティニャンです。ルルーシュの永遠のラブ・ストーリー『男と女』(66年)、コスタ=ガヴラス監督のアカデミー外国語映画賞作品『Z』(69年)などで、演技派としての地位を確立しつつありました。

教授の妻アンナ役は、ロベール・ブレッソンの『やさしい女』(68年)でデビューし、ツルゲーネフの同名小説を映画化した『初恋』(70年)で人気が出始めていたドミニク・サンダが演じ、作品に華を添えています。

マルチェロの妻ジュリアを、ピエトロ・ジェルミ監督の『誘惑されて棄てられて』(64年)、サン・セバスチャン映画祭最優秀女優賞を受賞した『山いぬ』(69年)などで知られるイタリアの人気女優ステファニア・サンドレッリが演じています。

起業家・投資家を目指すみなさん向けの『暗殺の森』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、主人公の青年マルチェロ(ジャン=ルイ・トランティニャン)の回想シーンで始まります。少年の頃にいじめられているところを運転手のリーノに助けられ部屋に連れて行かれたマルチェロは、同性愛者のリーノを夢中で拳銃で撃ってしまいます。それ以来、殺人を犯したという罪悪感にとりつかれています。

目立たずに生きることを決めたマルチェロは勉学に励み、大学の哲学の講師となります。精神病の父の遺伝を忘れるため、知性のかけらもないジュリア(ステファニア・サンドレッリ)という平凡な女と結婚するという普通の道を歩みます。そして、当時台頭しつつあったファシスト体制にも、順応していったのです。

マルチェロは、友人のイタロを通じファシスト党から、パリに亡命しているかつての恩師であるアンチ・ファシストのクアドリ教授の同行を探るという任務を受けました。ジュリアとの新婚旅行という名目で、パリに旅立ったのです。政府の情報員が、絶えずマルチェロの同行を影から監視していました。クアドリ教授の家に招待された二人を出迎えたのは、クアドリとは娘ほども年の離れた夫人のアンナ(ドミニク・サンダ)でした。食事などを通じ、4人は親しくなっていきます。

マルチェロがファシストであることを見抜いていたクアドリですが、彼は無害だと思ってたのです。しかし、何か不安を覚えたアンナはマルチェロに身体を投げ出し、苦しめないように頼むのでした。事実、党からの指令は殺害に変わっていたのでした…。

『暗殺の森』を観て副業・起業を目指す方に気づいて頂きたい点

全編に漂う暗殺というテーマに基づく暴力と官能性が、作品に何とも言えぬ魅力を与えています。説明しがたい、映画に流れる雰囲気というものがこうした名作の魅力であり、理解するには実際に作品をご覧になって頂くしかないでしょう。特に無慈悲でサディスティックな暗殺シーンや、官能性の白眉ともいえる有名な女同士のタンゴ・シーンは映画史に残る名場面といえるでしょう。

『暗殺の森』の邦題は映画のタイトルとしては分かりやすく、これでよかったのかもしれません。しかし、原題は先に述べたように『順応主義者』であり、過去の罪や精神病者を父に持つというトラウマから普通であろうと願い、体制に順応していこうという青年の心理がテーマとなっています。未来の起業家・投資家の皆さんには、投資と起業の成功後には、それまでと異なる華麗な生活が待っていることでしょう。エグジットやIPO後には急に生活が派手になった経営者を、筆者は何人も見てきました。しかし、アタッカーズ・ビジネススクールの卒業生となるみなさんには、マルチェロのように周囲に順応せずに、贅沢や度を過ぎた遊びやギャンブルなどにはまることなく、自分自身を保ち、成功前と変わらない態度や生活を心がけて頂きたいのです。

クアドリ教授がマルチェロを本当のファシストではないと言ったのは、まさにマルチェロの心理を見抜いていたからです。マルチェロは、その当時隆盛を誇っていたファシズムに、迎合しようとしただけにすぎないわけです。しかし、本物のファシストではないと見抜いたその慧眼がクアドリ教授にとって仇になったわけで、やはり油断は禁物だということを作品は教示してくれています。もしも少年の頃の出来事がトラウマとならなければ、マルチェロは順応主義者とはならずにクアドリ教授のよき弟子となり、片腕となっていたのかもしれませんね。

まだ物事の是非が定まらない少年時代の出来事で人生が変わってしまうことは、珍しくはないのでしょう。それを描いた小説や映画も、数多く存在します。中等教育が如何に大事であるか、現在の日本の若者の草食化が、家庭でも学校でも叱られた経験のない過保護な教育によって引き起こされてしまったことを、改めて想起させられました。スパルタ教育というもはや死語になってしまった教育法が、ある程度は許容されるべきだと考えるような人は、残念ながらもう殆どいないのかもしれないですね。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。