映画から学ぶ起業・スタートアップ向けアドバイス
『ことの終わり』
掲載:2020/12/9
最終更新日:2020/12/09
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への映画から学ぶ起業アドバイスのコラム。今回は、因果応報はもちろん、自分よりも相手を思う大切さ、許すことが最も重要なのだと教えてくれる『ことの終わり』について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。
起業・スタートアップを目標とする方への『ことの終わり』の概要
『ことの終わり』は、『クライング・ゲーム』(92年)『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94年)などで知られるアイルランドの鬼才ニール・ジョーダン監督による2000年の作品です。原作は、『第三の男』などの代表作を持つ20世紀前半の英国文学界を代表するグレアム・グリーンの同名小説です。原題は『The End of the Affair』で、神の啓示により愛する恋人に恨まれながらも別れる決断をした一人の女性の生き様を描いた感動作です。
NYCのセレブ高校生の恋愛を描き、ミレニアル世代の間で大ヒットしたアメリカのドラマ『ゴシップガール』(2007~2012年)においても、ある1話のエピソードとして取り上げられていました。
オックスフォード大学在学中にカソリックに改宗したグリーンならではの、神の大いなる存在についてが、テーマとなっています。作品を盛り上げている崇高さを漂わせる音楽は、パトリス・ルコント監督の『仕立て屋の恋』(89年)や『髪結いの亭主』(92年)、『ピアノ・レッスン』(92年)などで知られるイギリスのミニマル・ミュージックの大家、マイケル・ナイマンが担当しています。
米国最大の映画批評サイトRottenTomatoesの聴衆9,768人による平均スコアは3.8となっています。
主役の人妻サラを演じたのが『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97年)、『ビッグ・リボウスキ』(98年)で当時人気急上昇中だったアメリカの美人女優ジュリアン・ムーアです。この『ことの終わり』での熱い情熱を抑えた名演技でアカデミー主演女優賞にノミネートされ人気を確立、01年には『羊たちの沈黙』の続編『ハンニバル』において、前作でジョディ・フォスターが演じたFBI捜査官クラリス役に抜擢されました。その後はアメリカを代表する人気女優となりました。その官能的でありながら、純粋さも兼ね備えたジュリアンの美しさに圧倒されます。当時40歳とは到底信じられなかった、まさに遅咲きの名女優です。
サラを愛するサラの夫の友人の作家モーリス役は、『イングリッシュ・ペイシェント』(96年)でブレイクを果たし、ユマ・サーマン共演のレトロな雰囲気の探偵映画『アベンジャーズ』(99年)、『エヴゲニー・オネーギン』を映画化したリヴ・タイラー共演の『オネーギンの恋文』(99年)などで英国を代表する俳優となっていたレイフ・ファインズです。一見物静かなのですが内部に熱い情熱を秘めているモーリス役を、熱演しています。
そして、友人と妻との愛に苦悩しながらも静かに見守る夫のヘンリーを、主役を務めた『クライング・ゲーム』(92年)などで知られるジョーダン監督作品常連のスティーヴン・レイが演じています。
起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『ことの終わり』のネタバレなしの途中までのストーリー
『ことの終わり』は、第二次大戦終了直後の1946年のロンドンで始まります。作家のモーリス・ベンドリックス(レイフ・ファインズ)は、二年ぶりに友人のヘンリー・マイルズ(スティーヴン・レイ)と再会します。妻のサラ(ジュリアン・ムーア)が浮気しているのではないかと苦悩するヘンリーの言葉に、モーリスはヘンリーへの嫉妬を覚えます。
かつてモーリスは、サラと不倫の仲でした。そしてその嫉妬心は、今でもモーリスがサラを愛していることを物語っていました。戦時中に高級官僚を題材とした小説を書く際にヘンリーと知り合ったモーリスは、紹介されたサラと愛し合うようになっていったのでした。
ヘンリーに内緒でサラの素行を調べるために探偵を雇ったモーリスが知ったサラの相手とは、神だったのです…。
何の説明も無い唐突な愛の終わりにサラに対して憎しみを抱いていたモーリスは、この後その理由を知ることとなります。そして、映画はエンデイングへとすすんでいくのです….。
『ことの終わり』を観て起業・スタートアップを目指す方に気づいて頂きたい点
宗教心の薄い現代の日本人には、分かりづらい主題かもしれません。しかし、神との約束を忠実に守り、愛する人に恨まれながらもその愛を決して受け入れないサラの意思の強さと気高さは理解できるでしょう。二人の関係は不倫であり、許されるべきものではありません。まして、夫のヘンリーは浮気をしているどころかサラを深く愛しているので、なおさらです。
神がもしも存在するのならば、この不倫関係を終わらせようとしても不思議ではないでしょう。当然のように二人の関係は終わりを告げることになります。そして、因果応報により、二人ともにその関係を享楽した分、別れた後にそれ以上に苦しむこととなるのです。
『ことの終わり』を鑑賞した起業家・アントレプレナーを目指すみなさんに理解していただきたいのは、まずは因果応報は必ずあるということです。
筆者自身の経験でも様々なキャリアにおいて、必ず起きています。計略を用いてライバルを辞職に追い込んだ人は、その後自分も同じ運命をたどる。嫉妬心から何の罪もない部下を追い出した上司が重病になったり、急死する….。こうした例を、数多く目にしてきました。起業・スタートアップを目指すシニア・女性・若年層の方も、ご自分に関係がないとしても、周囲でこうしたことが起きていないかを、思い出してみてください。そして、こうしたことを起こさないように注意すべきだと、悟っていただきたいです。
次に理解して頂きたいのは、本当の愛とは、自分のことよりも相手のことを大切に思うということです。
起業家・アントレプレナーとなるには一人では辛く、大変です。周囲の協力があれば成功への近道となるのは間違いないのです。その際に相手が協力してくれる条件は、相手を利用するのではなく、相手のために尽くしているかどうかだと思います。
短期的には相手を利用すれば利を得られるかもしれません。しかし、中長期的に考えると、必ず因果応報として帰ってくるので損となるというのが筆者の経験に基づくアドバイスです。
サラのモーリスへの愛は、明らかに本当の愛といえるでしょう。しかし本当の愛であろうとも、カソリックの倫理観から見るとやはり許されない愛は、いつかは終わるべきだということなのでしょう。
そうした観点から、高級官僚という高い地位にいてプライドも高いはずなのに、自分を裏切った妻への無償の愛を貫き通すヘンリーのサラへの愛の偉大さに心を打たれます。キリスト教から仏教まですべての宗教に通じる、「許す」ということが一番重要だと示唆してくれています。彼だけは幸せを掴むことができる、とグリーンは言いたいのではないのでしょうか?
パートナーや友人を自分以上に大切にすることが起業・スタートアップの成功の第一条件だと、学んで頂ければ幸いです。
こうした学びを別としても、ニール・ジョーダンの卓越したストーリー・テリング、グレアム・グリーンの崇高なテーマ、ジュリアンをはじめとする名演が重なり合い、あっという間に時間が過ぎてしまうことでしょう。本当の愛とは何かということも教えてくれる名作です。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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