映画から学ぶ起業・スタートアップ向けアドバイス
『ショコラ 』
掲載:2021/2/3
最終更新日:2021/02/03
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への映画から学ぶ起業アドバイスのコラム。今回は起業家に、会社運営においてはプロダクト・アウトではなく、マーケット・インの姿勢が重要性なのだと教示してくれる『ショコラ』について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。
起業・スタートアップを目標とする方への『ショコラ』の概要
『ショコラ』は、ジョン・アーヴィングの同名小説を映画化した名作『サイダーハウス・ルール』(99年)でアカデミー作品賞・監督賞にノミネートされたラッセ・ハルストレムが手がけた00年制作の珠玉のファンタジーです。
ショコラ(チョコレート)を食べることによって忘れていた大切なことに気付く村の人々と、戒律で抑圧しようとする支配層との対立を描きました。主人公のショコラを作る母親と娘に神秘的な雰囲気を持たせながらも、コメディあり、ロマンスあり、そして快楽主義とモラルの対立などのテーマもありと、全てそろった珠玉の作品となっています。
幻想的な音楽は、『サイダー・ハウス・ルール』に続きレイチェル・ポートマンが起用されています。
『ショコラ 』の主役は、題名から分かるとおりショコラ(チョコレート)です。フランス人は、ショコラが大好きです。お隣ベルギーのピエール・マルコリーニやジャン=ポール・エヴァンなど、近年は日本にも一粒250円から300円もするような高級ショコラショップが開設され、人気を得ています。もちろんフランスでの価格は半分以下でしょうが、それだけの値段を出しても食べたくなるほど美味しいのが、本物のショコラなのです。
米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoesの聴衆328,925人による平均スコアは4であり、 スウェーデン出身の監督によるヨーロッパ風の映画にも関わらず、米国人に非常に高く評価された作品となっています。
村に流れ着いてショコラ・ショップを始める主人公の女性ヴィアンヌ役は、ジュリエット・ビノシュです。『ポンヌフの恋人』(91年)、『トリコロール/青の愛』(93年)、アカデミー助演女優賞を受賞した『イングリッシュ・ペイシェント』(96年)などで、当時はフランスだけでなく、世界中で高い人気を誇っていました。この『ショコラ』では、自由で、人種などへの差別もなく、ミステリアスで、敵さえも包み込む寛容さを持つ母親でもある女性を、見事に演じています。
ヴィアンヌを助ける孤独な老女アルマンド役は、『007/ゴールデンアイ』(95年)以来シリーズでのジェームズ・ボンドの上司「M」役で御なじみの、イギリスの大物女優ジュディ・デンチです。ヴィクトリア女王を演じた『Queen Victoria 至上の恋』(97年)でゴールデングローブ賞主演女優賞、エリザベス1世を演じた『恋におちたシェイクスピア』(98年)でアカデミー助演女優賞を受賞している名優が、『ショコラ 』でも迫真の演技を見せています。
そして『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで日本でも高い人気を誇るジョニー・デップが、ヴィアンヌと恋に落ちるロマ(ジプシーのことですが、ジプシーは欧米で差別用語です)のリーダー役で、名作『ギルバート・グレイプ』(93年)以来となる、ハルストレム監督作品出演を果たしています。
起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『ショコラ』のネタバレなしの途中までのストーリー
ネタバレなしの途中までのストーリーは、フランスの小さな村で始まります。レノ伯爵のもと因習に縛られ戒律を守って暮らす保守的な村に、赤いコートに身を包んだミステリアスな母娘が流れ着きます。母ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と娘アヌークです。ショコラ(チョコレート)の効能を広めるために世界を旅してきた二人は、娘とも絶縁している孤独な老女アルマンド(ジュディ・デンチ)から店を借り、ショコラ・ショップを開きます。ヴィアンヌにすすめられたそれぞれの客にあったショコラを食べると、倦怠期の夫婦は愛が甦り、老人は長く秘めた恋を打ち明ける勇気をもつなどの、効用が生まれました。
ショコラによって、抑圧されていた欲求を解放しようという空気が村に流れます。断食期間にもショコラを食べる村人に、レノ伯爵は危機感を覚え、ヴィアンヌのショコラ・ショップへの出入りを禁じます。さらに河にロマの一団がやってきて、リーダーのルー(ジョニー・デップ)とヴィアンヌは恋に落ちます。レノ伯爵は、新たなよそ者の出現に悩み、ヴィアンヌとロマ達の追放を決定するのでした…。
『ショコラ』を観て起業・スタートアップを目指す方に気づいて頂きたい点
『ショコラ 』のテーマは、自分の人生はご自身で決定するものだということです。他人の人生の幸せを、統治者が、伝統や格式で自分勝手に縛ることの愚かさです。会社勤めを辞められての起業を目標としているシニア・女性・ミレニアル世代のみなさんには、ご自分の人生は自分で決定するものだという考え方は、すんなり受け入れられるのではないでしょうか?
ヴィアンヌのショコラにより、上述のような、多くの効能が現れます。そして、うつうつとしていた村に活気が訪れるのです。統治者であるレノ伯爵にとっても、村に活気が訪れるのは、本来は歓迎すべきことのはずです。断食期間にもショコラを食べたのは行き過ぎかもしれませんが、そこは節度を持たせた上で、ある程度の自由を認めるべきでしょう。それなのに白黒はっきりとつけようとするから、対立が生まれてしまうのです。
レノ伯爵が村人の幸せを本当に望んでいるよき統治者であったなら、ヴィアンヌがもたらしたこうした変化を素直に受け止めたことでしょう。しかし、レノ伯爵が望んでいるのは村人ではなく自分自身の幸せであり、自身の戒律主義の思想を村人に押し付けているだけだったわけです。そのため、戒律主義への脅威であるヴィアンヌは、敵対者とみなされてしまいました。
将来の起業家・アントレプレナーである閲覧者の方は、代表取締役CEOという、レノ伯爵と同じ統治者の立場になるわけです。ご自分の考え方を押し付けるのではなく、理解をしてもらい、従業員にある程度の思想の自由を与えることが必要なのだと理解していただきたいです。
つまり、起業・スタートアップを目指すみなさんは、マーケット・インの思想で人々が何を望んでいるかを理解し受けとめた上で、会社の管理方針を決定しなくてはならないのです。厳しい言い方になりますが、自分の考えを押し付けるだけのプロダクト・アウトタイプの方は、起業家・アントレプレナーになってはいけないということです。
アメリカ映画ですが、タイトルはフランス語のショコラであり、チョコレートではありません。舞台がフランスになっているのも、ぴったりです。美味しいだけでなく、それぞれの人が持つ悩みを解決してくれる優れた漢方薬のような効果があるショコラがあったなら、人々が夢中になるのも当然のことでしょう!ショコラにそんな魔力があるかのように、魅力的に描かれています。
ショコラ好きはもちろん、ミステリアスな雰囲気が作品中を漂い、ファンタジー好きにもオススメの名作となっています。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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