海外企業紹介

起業・投資のためのシリコンバレーの企業紹介
ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)

掲載:2021/3/15

最終更新日:2021/03/15

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクールのスタートアップを目指すシニア・女性等への起業のアイデアとなるシリコンバレーの注目企業紹介のコラム。今回はルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)について解説します。

ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)の概要と沿革

ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)は、2020年12月にナスダックに上場を果たし、創業者のラッセル氏が25歳という、自力では史上最年少でビリオネアーになったと欧米では話題となっている企業です。以前ご紹介した17歳の少年が10億円を手にしたと注目されたサムリー(Summly)のケースよりもを二桁も多い資産を獲得したわけです。LiDARシステムというレーザー光を使用して車の周囲の障害物の3Dマップを作成するという自動運転車に欠かせない技術を開発しています。米国株に投資されている投資家である閲覧者の方の中には、ご存知の方もおられるかもしれません。

ラッセル氏は 15歳でレーザー分野の起業家をメンターに持つと、レーザー会社での仕事を斡旋してもらい実践を積みます。その経験を元にして17歳で名門スタンフォード大学を入学後わずか数ヶ月で中退すると、イーロン・マスクと共同でPayPalを創業したティール氏による1,000万円の奨学金を元にして2012年に会社を設立しました。アメリカでは大人気の動画カメラ「GoPro」の創業者も支援しています。

ビジョンがしっかりとしており、安全を第一目標にし、高価だが高品質の製品を開発しています。売却の意思はなく、長期運営を目指しているそうです。

2017年には約40億円を調達し、宇宙航空事業産業が集まるフロリダ州オーランドとカリフォルニア州パロアルトに拠点を持ちました。250人の従業員で製造を開始しました。ウェイモの立ち上げメンバーの一人であるトヨタ・リサーチ・インスティチュートのCEOが興味を示し、トヨタが自動走行車に採用したことで注目され、トヨタ向けにオーランド工場で10,000個を製造しました。

2018年にはボルボも提携、2020年5月にはルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)のLiDARシステムを使用して2022年に高速道路上での自動運転を実現すると発表しました。さらに、ダイムラートラックとも提携しました。

そして11月には、ウェイモの記事でご紹介したインテル傘下の自動走行にカメラを使用するイスラエルのベンチャー企業「モービルアイ」とも2年間の共同開発の末に提携を果たします。ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)がLiDARシステムを提供し、モービルアイが開発するセンサーシステムの重要な部品として使用されるそうです。モービルアイは従来から使用しているシリコンベースのLiDARシステムも使用し続けるそうですが、ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)との提携には影響しないとのことです。おそらくコストの面で高価すぎるので、ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)はメインシステムとして使用し、他のシリコンベースのLiDARシステムはサブで使用すると考えられます。モービルアイが2022年にローンチを目指す無人タクシーに搭載される予定です。さらに、ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)はこの提携により現在5,000万台の量産車に搭載されるモービルアイの一部品となることで売上の急増が期待できるということです。

そして12月に上場を果たし、約600億円を調達しました。2019年の年間の赤字額は約80億でまだ黒字化はできていないそうです。しかし、提携企業は全世界で50社にもなり、世界の10大自動車企業のうち7社が含まれているそうです。

現在はコロラドスプリングスとデトロイト、欧州初となるミュンヘンにも拠点を構えました。

LiDARシステムの長所と短所、ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)の差別化要因とは?

LiDARシステムは、自動運転車用のレーザー光を使用したスキャナーです。周囲の車、自転車、歩行者や障害物にレーザーを当てて反射光による時間で距離を測り、自動的に自動走行車の周囲に3Dマップを作成するのです。カメラとセンサーを組み合わせて360度、3次元のマップが出来上がります。センサーには測定可能距離、解像度、コスト、耐久性などが必要条件となります。

大きさは靴箱程度であり、車の屋根かフェンダーに取り付けるそうです。

ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)以外にもLiDAR開発企業はもちろんありますが、50倍の解像度と約10倍の距離を測れることで差別化しています。例えばグーグルの兄弟会社で以前ご紹介したウェイモの35メートルに対して、ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)のシステムは200メートルまでの3Dマップを作り上げられるのです。例えば60キロで急ブレーキを踏んでから停止するまでの距離は乾燥した路面でも35~40メートルなのでウェイモの場合は衝突してしまいますが、200メートルだと十分な余裕があることになります。

また、通常のシリコンではなくインジウムガリウムヒ素の半導体と、通常の905ナノメーターに対して1550ナノメーターの長い波長のレーザーを使用することで高解像度を実現し、黒い物体も認識ができるそうです。しかし、光の周波数を変化させるため、非常に高価だそうです。レーザー自体がレーダーより高価であり、テスラのイーロン・マスク氏はコストが高すぎるとLiDARシステム自体に懐疑的です。

テスラのオートパイロットシステムは、メインである160メートルの前方レーダーと遠距離用の250メートルのメインカメラ、死角用の魚眼カメラ、後方の左右と真ん中の3個のカメラ、車体の周囲に8メートルの超音波センサーが12個、GPSを組み込んだシステムだそうです。最新式のハードウェア3というモデルでは前機種に使用されたエヌヴィディア社と比較すると電力の効率性を高め、10倍の解像度を誇る自社開発半導体を使用しているそうです。カスタムチップなので映像解析の強化に特化できたのが要因とのことです。

しかし、テスラは自動走行車が白い物体を認識できず2016年にはトレーラーに突っ込む事故を、2018年にも高速道路の分岐点にぶつかる事故を起こしています。自動運転自体が非常に危険なものであり、価格よりも安全が重要視されるべきだと個人的には考えています。安全であれば自動運転車の価格が数億円であってもよいわけで、数千万円の安全ではない自動運転車などは発売されない方がよいと思います。

コストを度外視して安全を追求し、ビジョンに掲げたことが、ルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)がトヨタを始めとする世界の10大自動車企業のうち7車に選ばれた成功要因なのだと強く感じました。

起業家を目指す閲覧者の方には、この日本では軽視されがちなビジョンやミッションの重要性を、このルミナー・テクノロジーズ(Luminar Technologies)の成功を通じて、再認識して頂きたいと願います。投資家の方には長期投資におけるポートフォリオにテンバガーとなりうるこの銘柄を考慮するのもありではないでしょうか?

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

ご相談・お申込み