起業アドバイス

映画から学ぶ起業・スタートアップ向けアドバイス
『恋愛小説家』

掲載:2021/3/3

最終更新日:2021/03/03

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への映画から学ぶ起業アドバイスのコラム。今回は、コミュ力に欠けている社員をチームに受け入れる必要性と、物事を決して諦めてはいけない事を教示してくれる『恋愛小説家』について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業・スタートアップを目標とする方への『恋愛小説家』の概要

『恋愛小説家』は、ジェームズ・L・ブルックス監督による97年公開の感動作です。ブルックス監督は、シャーリー・マクレーンとデブラ・ウィンガー主演で、母親と娘の複雑な愛情を描き、アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞を受賞した名作『愛と追憶の日々』(83年)で知られる名匠です。心温まるストーリーが一番の魅力、と言えるでしょう。

その『愛と追憶の日々』で助演男優賞を受賞したジャック・ニコルソンが、本作で、『カッコーの巣の上で』(75年)以来となる2度目のアカデミー主演男優賞に輝きました。そして、相手役であるヘレン・ハントも、アカデミー主演女優賞を獲得しました。オスカーのダブル受賞でも証明されたように、『恋愛小説家』の魅力の一つが、俳優陣の演技力の高さです。

音楽も素晴らしく、『ドライビングMiss デイジー』(89年)、『テルマ&ルイーズ 』(91年)、アカデミー作曲賞を受賞した『ライオン・キング』(94年)などで知られるハンス・ジマーが担当しています。

また、ニューヨークを舞台としているので、ニューヨーク好きにはたまらない作品となっています。犬が大きな役割を与えられており、犬好きにもオススメの作品です。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoes聴衆378,686人による平均スコアは4.1であり、非常に高く評価された作品となっています。

主人公メルヴィン役のジャック・ニコルソンについては、『カッコーの巣の上で』(75年)や『シャイニング』(80年)、『ア・フュー・グッドメン』(92年)などでの絶賛に値する演技力により、今更ふれる必要もないでしょう。オスカーに12回ノミネート(主演賞8回、助演4賞回)されている、当時のアメリカを代表する名優でした。『恋愛小説家』でも、異常に潔癖症で、偏屈の、人間嫌いだが、実は愛すべき人物を見事に演じています。

ヒロインのキャロル役のヘレン・ハントは、この『恋愛小説家』以降、天才子役ハーレイ・ジョエル・オスメントが自分が受けた善意を別の3人の相手に渡すことで世界を変えていこうという少年を演じた感動作『ペイ・フォワード 可能の王国』の母親役(00年)、南太平洋の無人島に流れ着いた男を描いたトム・ハンクス主演の『キャスト・アウェイ』でのトムの相手役(01年)、メル・ギブソン共演の広告業界を舞台としたラブコメ『ハート・オブ・ウーマン』(01年)、保険会社に勤務する犬猿の仲の男女がインチキ魔術師の呪文を聞くうちに惹かれあっていくウディ・アレン監督・主演のラブコメ『スコルピオンの恋まじない』(01年)などでヒロインを務めることになり、映画スターとしても開花します。将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんの中にはご存知の方もいらっしゃるでしょうが、90年代のアメリカでの人気は凄まじかったです。92年から99年までアメリカで放映された大ヒットテレビドラマ『あなたにムチュー(Mad About You)』では、4度のエミー賞と3度のゴールデングローブ賞(コメディ部門)に輝くなど、コメディエンヌとしての実力が高く評価されていました美しいだけでなく、面白く、性格も素晴らしく、芯もしっかりしているというアメリカ人の愛する女性の条件を全て備えているからでしょう。『恋愛小説家』でも、ニコルソン演ずる人間嫌いの主人公でさえ惚れてしまう女性を、生き生きと演じています。

そして、ニコルソン演ずる主人公が心を開いていくきっかけを作ったグレッグ・キニア演ずる隣人のゲイの画家と、その愛犬の名演技も忘れることはできないでしょう。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『恋愛小説家』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、ニューヨーク・マンハッタンで始まります。メルヴィン・ユドール(ジャック・ニコルソン)は独身の人気恋愛小説家ですが、作品からは全く想像もできない変わり者です。極端な毒舌家で、プラスチックのナイフとフォークを持ち歩き、一度使った石鹸はゴミ箱に捨てるほどの完璧な潔癖症で、人間嫌いでした。そんなメルヴィンをうまく扱えるのは、毎日決まった時間に決まった席でランチを取るレストランの、喘息持ちの息子を抱えたシングル・マザーのウェイトレスのキャロル(ヘレン・ハント)だけでした。

そんな時、怪我で入院したメルヴィンが、隣人でゲイの画家サイモン(グレッグ・キニア)の愛犬バーデルをあずかることになります。かつてバーデルをダストシュートに投げ込んだこともあるメルヴィンは、当初は乗り気ではありませんでした。しかし、ベッドにも潜り込んできて、歩道の継ぎ目を踏まないようにする癖まで真似されて、次第にバーデルに心を開いていきます。ここからメルヴィンの中で、何かが変わり始めました。キャロルが喘息持ちの息子の世話でレストランに出られないと知ると、自費で専門医を手配します。さらに、退院したが破産し絶望するサイモンの、両親のいるニュー・オーリンズへの旅に、キャロルと共に同行することとなります。旅先のレストランでキャロルに告白するメルヴィンですが、得意の毒舌で怒らせてしまうのでした…。

『恋愛小説家』を観て起業・スタートアップを目指す方に気づいて頂きたい点

バーデルという犬がなつくことで観客=周囲の人間は、メルヴィンが実は悪い奴ではないと感じていき、メルヴィンも周囲に心を開いていきます。このメルヴィンのように、変わり者だが実はいい奴というのは、意外と多いのかもしれないです。しかし、変わり者がいい奴に変身するには、周囲の協力が必要です。『恋愛小説家』ではそれが犬であり、いいなと思っている女性であり、隣人であったわけです。

起業・スタートアップを目指すみなさんは、将来は社長として、こうしたコミュ力に欠けているけれども、優秀で、実は良い人である従業員を、チームの一員として取り込まねばなりません。それには、周囲の協力が不可欠だと気付かせてくれる作品です。こうした優秀な人材を取り込めずに辞めさせてしまうことは、少人数であるスタートアップ企業にとっては大きな痛手となります。スタートアップ企業は大企業と異なり、人材確保が簡単ではありません。その性格で他の企業には受け入れられなかったメルヴィンのような性格に難ありだが、優秀かつ実は性格も良い人材をいかに会社に残すかが重要だというのが、筆者の経験に基づくアドバイスです。

そして『恋愛小説家』の一番のテーマは、アメリカ映画らしく、「決して諦めるな」ということです。サイモンが画家として失敗し、破産し、自信をなくしながらも立ち直っていくという中に、観客は勇気を与えられます。そしてメルヴィンも勇気をもらい、キュロルへの愛へと向き合っていきます。この起業家にとって不可欠はテーマを、改めて思い起こさせてくれる作品となっています。

友情あり、笑いあり、恋もあり、名演技あり、美女あり、かわいい犬もあり。全てが揃った傑作といえるでしょう。偏屈な老人のラブ・ストーリーなんて暗そうという先入観があったのですが、全く正反対の素晴らしい作品でした。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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