映画から学ぶ起業・スタートアップ向けアドバイス
『シラノ・ド・ベルジュラック 』

2021/01/06

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への映画から学ぶ起業アドバイスのコラム。今回は、コンプレックスから妬みによりダークサイドに入ることを戒め、妬まれないように注意することを教示してくれる『シラノ・ド・ベルジュラック』について、将来の起業家・アントレプレナーであるみなさんと共に見ていきましょう。

起業・スタートアップを目標とする方への『シラノ・ド・ベルジュラック』の概要

『シラノ・ド・ベルジュラック』は、17世紀のフランスに実在した剣豪でもあった作家をモデルにした、エドモン・ロスタンによる有名戯曲を映画化した1990年の作品です。高名な詩人で剣客だが、ピノキオのような大きな鼻がコンプレックスの男が報われない生涯一度の愛を貫くという物語は、世界中で愛されています。19世紀末から現在まで上演され、何度も映画化されてきました。監督はジャン=ポール・ベルモンド主演の『コニャックの男』(71年)やイブ・モンタンとカトリーヌ・ドヌーヴ主演の恋愛映画『うず潮』(75年)などで知られるジャン=ポール・ラプノーが務めました。フランス版のアカデミー賞であるセザール賞では、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞など10部門を制覇しました

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoes聴衆16,249人による平均スコアは4.32と、フランス文芸映画にも関わらず高評価となっています。

主演のシラノ役は、ジェラール・ドパルデューです。74年に『バルスーズ』でブレイク以来、トリュフォー監督の最高傑作『終電車』(80年)、フランス革命の中心人物ダントンとロヴェスピエールの対立を描いたアンジェイ・ワイダ監督の傑作『ダントン』(82年)、泉をめぐり二代にわたって展開する愛憎劇『愛と宿命の泉第1部フロレット家のジャン』(82年)、彫刻家カミーユ・クローデルの半生を描いたイザベル・アジャーニ共演の名作『カミーユ・クローデル』(89年)などでフランスを代表する俳優となっていました。この『シラノ・ド・ベルジュラック』ではまさにはまり役であるタイトル・ロールの感動を呼ぶ名演技でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、アンディ・マクドウエル共演の恋愛映画『グリーン・カード』(90年)でハリウッド進出を果たすこととなります。

シラノが愛するロクサーヌを演じたのが、当時はまだ無名だったアンヌ・ブロシェです。この『シラノ・ド・ベルジュラック』での清楚な美しさで注目され、92年には17世紀の宮廷音楽家マレと、その師サント・コロンブと恋人だった師の娘との葛藤を描いた名作『めぐり逢う朝』でヒロイン役を務め、ドパルデューと再び共演することとなります。

ロクサーヌが恋する、シラノが恋の橋渡し役をする美青年クリスチャンを演じたのが、ヴァンサン・ペレーズです。この『シラノ・ド・ベルジュラック』で一躍脚光を浴び、92年にはフランス領インドシナを舞台にフランス人女性とその養女と青年将校との三つ巴の恋を描いたカトリーヌ・ドヌーヴ共演のアカデミー外国語映画賞受賞の傑作『インドシナ』、ソフィー・マルソー共演の『恋人たちのアパルトマン』で一躍フランスを代表する若手スターとなりました。今となってはオールスター・キャストだったといえるでしょう。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『シラノ・ド・ベルジュラック』のネタバレなしの途中までのストーリー

ストーリーは、ルイ13世の治世で宰相のリシュリューが権力を奮っていた1640年のパリの劇場で始まります。詩人にして剣客としても名高いガスコン青年隊のシラノ・ド・ベルジュラック(シェラール・ドパルデュー)は、秘かに思いを寄せる従妹のロクサーヌ(アンヌ・ブロシェ)に言い寄っていたギッシュ伯爵の手先であるヴァルヴェール子爵と決闘しようとし、ギッシュ伯爵の恨みを買うこととなります。その夜シラノはロクサーヌから、彼女が想いをよせる美青年クリスチャン(ヴァンサン・ペレーズ)がガスコン青年隊に入隊するので、思いを伝えてほしいと頼まれました。実はクリスチャンもロクサーヌを愛していましたが、ロクサーヌに愛を伝えるための文才を持ち合わせていなかったのです。自らの大きな鼻にコンプレックスを抱くシラノは、ロクサーヌのために、自分が書いた恋文をクリスチャンに渡しキューピッド役を演ずることを決意します。

ロクサーヌの屋敷のバルコニーの下でクリスチャンはロクサーヌに愛を打ち明けるのですが、うまく言葉がでてきません。かわりにシラノが愛の言葉を述べ、ロクサーヌはクリスチャンの言葉だと思い、感動するのでした。そんな時ギッシュ伯爵は、シラノへの仕返しのため、ガスコン青年隊をオランダとの戦場に送ることにしました。シラノの機転で、ロクサーヌとクリスチャンは、出陣の前夜に結婚式を挙げることができました。過酷な戦場でも、シラノはクリスチャンにも無断で、ロクサーヌに一日ニ通の恋文を届け続けました。恋文に感動したロクサーヌは、戦場に向かうのでした…。

『シラノ・ド・ベルジュラック』を観て起業・スタートアップを目指す方に気づいて頂きたい点

正義感で友情に厚く、権力に媚びることがない。しかも人も羨む文才と剣の才能を併せ持っている。そんなシラノが唯一神から与えられなかったのが、容貌だったわけです。

当初はクリスチャンの容貌を愛したロクサーヌが最後に愛したのはシラノの書いた恋文だったわけであり、恋文を書いたのは自分だと名乗り出るのが自然でしょう。しかし、恋敵でもあった妬むべき存在のクリスチャンとの友情のために、生涯ロクサーヌだけを愛しながらも自分の気持ちを隠し続け、ロクサーヌのクリスチャンへの愛を失わせることはしないのです。恋敵であった友との友情を貫き自分の愛を諦める男の中の男のともいえるシラノの生き様が、古今東西を問わず多くの観客をひきつけてきたわけです。現在でも戯曲が上映され続け、何度も映画化され、フランスでもっとも愛されるキャラクターであるのも、うなずけるでしょう。

起業家・アントレプレナーを目指す方に気付いて頂きたいのは、『太陽がいっぱい』のトムとは異なり、シラノはクリスチャンへの妬みから悪へと走っていないことです。人間は弱く、キリスト教の7つの大罪の中でも、妬みには人生で何度も出会うことになります。周囲の方が羨ましくても、決して妬んではいけないのだと、示唆してくれています。キリスト教の7つの大罪を犯すことによりダークサイドに入り身を滅ぼすことになるのは、怒りにより我を忘れたアナキンがダース・ベイダーになるという『スター・ウォーズ』シリーズのエピソードを思い出して頂ければ、簡単にご理解できるでしょう。是非ともシラノのように、妬みを抑えて頂きたいと思います。

反対に、起業・スタートアップを行ったシニア・女性・ミレニアル世代のみなさんが成功されると、妬まれる側に回ることになります。シラノのように醜い容貌の方でも、成功者として妬まれます。また、性格が良くて今まで皆から愛されていた方でさえ、妬まれることになります。世の中は因果報応ですから、妬みの罪を犯していたのならば妬まれても仕方がない、ということになってしまいます。筆者にも、この妬みにより上場を逃してしまったのだと後悔している経験があります。そうならないためにも、成功された後には妬まれないように、注意をいくらしてもしすぎるということはないでしょう。

そのコンプレックスゆえに秘めた恋心を明かせぬシラノに、何かしらのコンプレックスで愛を諦めてきた方は、共感を覚えざるをえないでしょう。そして、ロクサーヌを愛しながらも恋文を書いたのは自分だと最後まで明らかにしないシラノの心意気は、観客に感動を与えます。ドパルデューの名演技に涙しない人はいないはずです。

フランス史上最高のキャラクターの一人を、現代最高の俳優が演じているのです。この作品を見て後悔する人などいない、フランス映画史に残る傑作といえるでしょう。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。