映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス
『シザーハンズ』
掲載:2021/9/6
最終更新日:2021/09/06
※記事の内容や肩書は、講義時のものです
アタッカーズ・ビジネススクールの、スタートアップを目指すシニア・女性・ミレニアル世代などへの映画から学ぶ副業・起業アドバイスのコラム。今回は、起業家に慈善の精神を持つことの尊さを教示してくれる『シザーハンズ』について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。
副業・起業を目標とする方への『シザーハンズ』の概要
『シザーハンズ』は、ティム・バートン監督の最高傑作といえるファンタジー映画の至宝的作品です。ある少女を愛してしまった純真無垢な心を持つ人造人間が、汚れた人間世界の中で苦闘する姿を描いた1990年の作品です。
苦悩する人造人間というと、もちろん『メアリーの総て』(18年)で怪物の苦悩の意味が明らかにされたフランケンシュタインの怪物がオリジナルなわけです。通常はホラー映画として捉えられる苦悩する人造人間の物語が、純粋な子供の心を持つ大人のようなティム・バートンにかかるとこんな美しい純愛ファンタジー作品に変わるのかと感嘆してしまうでしょう!まさに、バートンのファンタジー世界の原点ともいえる作品です。そして『エド・ウッド』(94年)、『スリーピー・ホロウ』(99年)、『チャーリーとチョコレート工場』(05年)、『アリス・イン・ワンダーランド』(10年)などでコンビを組むこととなるジョニー・デップと初めてタッグを組んだ記念すべき作品でもあります。
作品の魅力はいろいろありますが、まず挙げておきたいのがその映像美でしょう。冒頭の城の場面から、ガーゴイルなどで飾られたバートン好みのゴシック風の装飾や、恐竜や動物の形の植木の姿に圧倒されるでしょう。人造人間が作るゴジラなどの植え込み、芝生付きの色とりどりの家と車が並ぶ50年代風の家々なども可愛らしいです。人造人間が氷で作る天使像から舞い上がる雪の中で、ヒロインの少女が踊るシーンの美しさは、圧巻だです。
次に挙げたいのが音楽で、映像とマッチしたその独特の音楽により、冒頭から観客は知らず知らずの内にティム・バートンのファンタジーの世界に引き込まれていきます。『ピーウィーの大冒険』(85年)以来現在まで全てのティム・バートン監督作品を担当しているダニー・エルフマンによるもので、その音色はバートンファンにはお馴染みでしょう。そして人造人間を演じた役者のせつなさ残る演技と、少女を演じた役者の可憐な美しさも見逃せません。
米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoesの視聴者1,032,985人による平均スコアは、4.28という高評価となっています。これは、今までご紹介していた名作の中でもトップに近い評価であり、世界中の人々から愛されている傑作といえるでしょう。
主人公の人造人間エドワード役が、当時27歳のジョニー・デップです。88年にフォックスのテレビシリーズ『21ジャンプ・ストリート』に主演して注目されつつありましたが、まだ無名に近い存在でした。この『シザーハンズ』での切ない演技で、ブレイクを果たしました。以降、ゴールデングローブ賞主演男優賞 にノミネートされた『妹の恋人』(93年)、ディカプリオ共演の『ギルバート・グレイプ』(93年)、東欧の名匠クストリッツァ監督の不思議なファンタジー『アリゾナ・ドリーム』(94年)、バートンと再び組み史上最低の映画監督と言われたタイトルロールを演じた『エド・ウッド』(94年)、ジム・ ジャームッシュ監督の不思議な傑作『デッドマン』(95年)、自分が中世のプレイボーイのドン・ファンだと思い込む精神病患者役を務めた隠れた名作『ドンファン』(95年)などのミニシアター系の名作で独特の存在感を示し、映画通の間で人気を確立しました。そして、ディズニーのアトラクションを映画化した大ヒット作『パイレーツ・オブ・カリビアン』(03年)で40歳にして遂にハリウッドを代表するスターとなったのは、ご存知の通りでしょう。
エドワードが愛する少女キム役が、ウィノナ・ライダーです。88年にティム・バートン監督の『ビートルジュース』で準主役を演じ、89年にはクリスチャン・スレーター共演のアメリカのティーンの間で大ヒットしたブラック・コメディ青春映画『ヘザース/ベロニカの熱い日』に主演、当時人気急上昇中でした。この『シザーハンズ』での可憐な美しさで若手人気女優としての人気を確立しました。以降、シェール扮する恋多き母に反抗する長女役でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされた『恋する人魚たち』(90年)、タクシー運転手を好演したジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』(91年)、純粋さを装いながら画策をつくす若き妻を演じゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞したマーティン・スコセッシ監督の名作 『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』(93年)、ジューン・アリソンやキャサリーン・ヘップバーンが務めてきた次女のジョー役を好演しアカデミー主演女優賞にノミネートされた『若草物語』(94年)などに主演、X世代を代表する女優へと成長を遂げることになります。
起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『シザーハンズ』のネタバレなしの途中までのストーリー
ネタバレなしの途中までのストーリーは、吹雪が引き荒れるある町で始まります。お婆さんが孫娘を寝かしつけながら、孫の「どうして雪が降るの?」という問いに答えて、ある話をし始めました。昔山の上の屋敷に老発明家が住んでいて、人造人間を作り出しました。彼の名前はエドワードといって、両手はハサミでできていました。ある日エイボン化粧品の訪問販売員のペグが山の上の屋敷を訪ね、エドワード(ジョニー・デップ)と出会いました。ペグはたった一人で広い屋敷に住むエドワードを哀れに思い、家へ連れ帰りました。
ペグはエドワードを夫のビル、小学生の息子のケヴィンに紹介、エドワードは一家に暖かく迎えられました。ペグが見知らぬ男を連れ帰ったことは、一気に近所の噂になっていました。近所の奥さん連中が興味本位に家に押しかけた時、エドーワードはハサミで庭木を美しく動物の形に刈り取る技を披露、近所の庭木も恐竜などの形に整え、さらに近所の犬のグルーミングや、奥さん連中のヘアメイクにも非凡な才能を発揮し、一躍近所の人気者になりました。
その頃キャンプに行って不在だったペグの娘の高校生のキム(ウィノナ・ライダー)が、家に帰って来ます。エドワードは写真を見たときからキムに恋していましたが、キムは最初はエドワードを毛嫌いしました。ある時エドワードがハサミの手で鍵を開けられることを知ったキムの彼氏のジムがエドワードを使って父親の金を盗ませようとしましたが金庫の警報装置が働き、エドワードだけが警官に捕まってしいました。キムは戻ろうとしたのですが、ジムが無理やりキムを連れて逃げてしまったのでした。エドワードはキムのことを気遣って、一切弁明しませんでした。
この事件がおきてから近所の奥さん連中はエドワードを避けるようになりましたが、キムはエドワードに好意を持つようになります。クリスマスの夜、エドワードが氷で天使の彫刻をすると削った氷が雪のように舞い散り、雪の中キムはうれしそうに踊っていました。しかし、キムがエドワードに近づいた時にジムがどなったため、振り返ったエドワードのハサミでキムは手を傷つけられてしまいました。ジムはエドワードに、「お前は厄介者だ!」と罵り、「出て行いけ!」と叫びました。キムは、ジムに絶交宣言をしました。深く傷ついたエドワードは町をさまよいながら植木を倒したりしたために、奥さん連中は警察を呼ぶのでした…。
『シザーハンズ』を観て副業・起業を目指す方に気づいて頂きたい点
エドワードは外界から隔てられて育ったために真に純粋無垢な心を持っていて、通常の人間とは価値観が異なっています。キムの彼氏が父親の部屋に泥棒に入ることに加担したのも、愛しているキムが頼んだためでした。キムの父親が常識を教えるために「札束が詰まったかばんを拾ったらどうするか?」と尋ねると、「好きな人にプレゼントする。」と答えてしまいます。こうした人間界の常識を持たないファンタジーの世界の住人が人間界に舞い降りたために、悲劇が生まれていったわけです。
エドワードは正しいことをしているのですが、嫉妬に狂った悪人の画策で、いつのまにか悪者にされてしまうのです。キムが、こうした間違ってはいるが美しいエドワードの価値観を称賛するシーンに、バートン監督の大人の価値観を否定する思いが強く現れていると感じられました。将来の起業家・アントレプレナーのみなさんには、利益を追求することよりも、世の中の役に立つことを目指していただきたいものです。
エドワードをかわいそうだと家に連れて帰るペグの優しさも、魅力です。1950年代の古きよき時代のアメリカという設定なのでしょうが、この時代のアメリカ映画を見ていると、こうした慈善の精神が強く生きているのが理解できます。現在も慈善は続いているといわれる人もいるかもしれませんが、税金対策が本当の目的です。そしてサッチャー、レーガン以降の経済のグローバル化でアメリカ人の職は海外に流出し、リーマン・ショックで中流階級の崩壊という現実に直面しています。自分達のことで精一杯であり見知らぬ人を連れ帰るなど、現在では考えられないことでしょう。ヒッチハイクがもはや過去のものとなっているのと同様です。
バートン監督の、古きよき時代のアメリカへの郷愁がひしひしと感じられました。副業・起業を目指す閲覧者の方には、是非とも、格差の少なかったバブル経済前の日本を取り戻すために起業していただきたいです。
思わず童心に帰ることができる、いつまでも心に残る、現代の珠玉の童話といえるでしょう。
著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。
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