映画から学ぶ副業・起業向けアドバイス
『マイノリティ・リポート』

2021/08/23

アタッカーズ・ビジネススクールの、スタートアップを目指すシニア・女性・ミレニアル世代などへの映画から学ぶ副業・起業アドバイスのコラム。今回は、起業家にAIと監視カメラなどの普及で政府が全てをコントロールする管理社会の是非とその中での人権侵害について問うている『マイノリティ・リポート』について、将来の起業家・投資家であるみなさんと共に見ていきましょう。

副業・起業を目標とする方への『マイノリティ・リポート』の概要

『マイノリティ・リポート』は、『ブレード・ランナー』の原作者として知られるフィリップ・K・ディックのSF小説を映画化した、スティーブン・スピルバーグの2001年監督作品です。『未知との遭遇』(77年)、『E.T.』(81年)などで早くからSF作品をてがけてきたスピルバーグが、『A.I.』(01年)に続いて20年ぶりに世に送り出したSF作品です。2054年のワシントンD.C.を舞台に、予知能力者による殺人予知システムを背景とした陰謀と、それに立ち向かう捜査官の活躍を描きました。SF作品を対象とするサターン賞で監督賞、SF映画賞、助演女優賞を受賞しました。

フィリップ・K・ディック原作とスピルバーグの演出による最後まで目が離せない素晴らしいストーリーと、見事に創造された未来世界が作品の一番の魅力です。警察と司法省の対立構造、Siriのような音声認識システムやiPadのような操作感のジェスチャ入力システム、瞳による認識システムなど設定が非常にリアルで、現在から30年後の未来として違和感なく物語に入り込めます。主人公の逃走シーンでのアクションも、見逃せません。スピルバーグ作品ならではの、見所満載の娯楽作品となっています。

米国最大の映画批評サイトRotten Tomatoes視聴者による評価は3.84とそこそこなのですが、専門誌などトップ批評家59人による平均スコアは8.30という高得点で、一般の方よりもプロに高く評価された作品となっています。

主人公の犯罪予防局の捜査官ジョン・アンダートンを演じたのがご存知トム・クルーズ。86年に『トップガン』 でブレイク以来、ビリヤードブームを巻き起こした『ハスラー2』(86年)、カクテルブームを引き起こした『カクテル』(88年)、自閉症の兄と弟の兄弟愛を描いたダスティン・ホフマン共演のアカデミー賞作品賞受賞の名作『レインマン』(88 年)、法律事務所の暗部を描いた傑作『ザ・ファーム 法律事務所』(93年)、60年代に大ヒットしたテレビドラマ『スパイ大作戦』を映画化しシリーズ化された『ミッション:インポッシブル』(96年)、キューブリックの遺作で当時の妻のニコール・キッドマン共演の問題作『アイズ・ワイド・シャット』(97年)、『ミッション:インポッシブル』の続編『M:I-2』(00年)、スペイン映画『オープン・ユア・アイズ』のリメイクでヒロインを演じたペネロペ・クルスとの愛に発展した『バニラ・スカイ』(01年)、などトップ・スターの地位をキープし続けていました。この『マイノリティ・リポート』でも、アラフォーとは思えぬ変わらぬカッコよさで、観客を魅了しています。

司法省調査官のダニー・ウィットワー役は、当時まだ無名のコリン・ファレルです。2000年にベトナム戦争の最終訓練地タイガーランドを舞台とした『タイガーランド』で反戦を主張する有能な兵士を熱演、ボストン批評家協会賞主演男優賞を受賞し注目されていました。この『マイノリティ・リポート』での演技でブレイク、サスペンス『フォーン・ブース』 (03年公開)、アレキサンダー大王の生涯を描いたオリヴァー・ストーン監督の『アレキサンダー』(05年)などのヒット作に主演、人気俳優となります。

プリコグと呼ばれる予知能力者のアガサ役が、サマンサ・モートン。97年に映画デビュー作『アンダー・ザ・スキン』でボストン映画批評家協会賞主演女優賞を受賞、99年にはウッディ・アレン監督の『ギター弾きの恋』でショーン・ペン演ずる主人公の恋人の聾唖のヒロインを演じアカデミー助演女優賞にノミネートされ、その可愛らしさと高い演技力で一気にブレイクを果たしていました。この『マイノリティ・リポート』では役柄上かその演技の素晴らしさも発揮できていなく、坊主頭のためその可愛らしい姿がラスト・シーンのみしか見られないのは残念です。

犯罪予防局のラマー・バージェス局長をイングマール・ベルイマン監督作品の常連として知られるスウェーデンの名優マックス・フォン・シドー闇医者をその独特の風貌で悪役俳優として知られるスウェーデンの俳優ピーター・ストーメアが演じています。

起業家・アントレプレナーを目指すみなさん向けの『マイノリティ・リポート』のネタバレなしの途中までのストーリー

ネタバレなしの途中までのストーリーは、2054年のワシントンD.C.で始まります。未来の世界はプリコグと呼ばれる3人の予知能力者による殺人予知システムのおかげで、殺人事件の存在しない社会となっていました。今日も犯罪予防局の主任捜査官ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は、予知システムで夫による妻と愛人の殺人事件を間一髪で防ぎました。

ところが、殺人予知システムを疑問視する司法省調査官のダニー・ウィットワー(コリン・ファレル)が犯罪予防局の視察に現れます。予防局局長のラマー・バージェス(マックス・ フォン・シドー)は、ジョンにウィットワーに気をつけるようにと助言するのでした。

そんあある日、予知システムによりジョンが殺人事件の容疑者となってしまいました。殺人の被害者も見たことのない相手で、ジョンは何かのわなだと思い逃走しました。ウィットワー率いる元部下たちの執拗な追跡をかわし、ジョンは殺人予知システムを考案したハイネマン博士を訪れ、プリコグ3人のビジョンが一致しない時、少数報告(マイノリティ・リポート)は棄却されてしまい、冤罪のケースがあることを知るのでした…。

『マイノリティ・リポート』を観て副業・起業を目指す方に気づいて頂きたい点

殺人予知システムは、確かに殺人を予知しています。しかし最後の瞬間で殺人の意思が変わる可能性は無視され、殺人容疑者は殺人を犯していないのに殺人未遂者として逮捕され、意識のない状態で永久に囚われの身となるのです。殺人は実際には行われていないのに、容疑者をこうした重い罪に問うてよいのかという問題があります。

冒頭の殺人未遂事件は妻の浮気に憤った夫が妻と愛人を殺そうとしたものですが、妻は全く罪に問われず、夫が最高刑(恐らく死罪は廃止されいるので)となってしまいました。つまり、殺人への言い分があろうがなかろうが状況が無視され、殺人未遂事件は全て一緒に扱われているということにも疑問が残ります

プリコグは、麻薬の中毒患者から生まれた遺伝子疾患を持つ子供が変異して予知夢を見るようになったという設定です。彼女達の人権は無視され、培養液の中で常に覚醒と睡眠の中間の状態におかれています。殺人を予防するためには「プリコグ」の人権を無視してもよいのかという問題も、存在していたわけです。

殺人事件が消滅した反面、こうした問題を持つ殺人予知システムの是非が選挙に利用され、警察と司法省との駆け引きに使われるという設定は、非常にリアルで楽しめます。殺人の防止という名目で、本当に殺人が起きてもいないのに、国民のプライバシーを政府が管理しているわけです。政府が全てをコントロールする管理社会の是非を問うた、21世紀のオーウェルの『1984』的作品といえるでしょう

将来の起業家・アントレプレナーである皆さんは、AIや監視カメラが人間を管理下におくというこの『1984』が描いた世界に、彼の予想からは35年ほど遅くはなりましたが、まさに生きているわけです。フェイスブックなどのSNS企業では、問題のある投稿を削除する部門の従業員のメンタルヘルスをどう管理していくかが、問題となっています。世界がどうなっていくのかは皆さんの手にゆだねられていると感じつつ、起業の際にはしっかりとした、世の中の役に立つヴィジョンを掲げ、「プリコグ」のような犠牲者を出さないようにしていただきたいです。

著者:ポッシュF
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもあり、今井氏と並ぶトップFXアナリストの西原宏一氏につけられたあだ名がポッシュ。FはFXのF。