起業アドバイス

起業・スタートアップのためのアドバイス2
起業の目的と分野

掲載:2020/8/31

最終更新日:2020/08/31

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への起業のアイデア・スタートアップのためのアドバイスの第2回。前回は、起業・スタートアップをいつから準備するかについて解説しました。今回は、最初に決めるべき起業の目的と分野について、説明していきます。

まずは起業・スタートアップのビジョン、ミッション、目標について考える

前回、起業・スタートアップはできる限り早く準備を始めた方がいいと、お話しました。そして、準備を始める際にまず行うことが、ご自分はどういうビジョンで、何をミッション・目的として起業するのかについて、ご自分の心と徹底的に向き合うことです。

起業し成功してお金持ちや有名人になりたい、サラリーマン生活は肌に合わないから個人でできる仕事をしたい、こういうビジネスがあったら世の中は便利になるのにまだないから始めてみよう、世の中を良くするためになにかに貢献したいなど、起業の目的は人によって様々です。別に、どれが正しいという答えはありません

ただし、その目標を決めたからには、それに向かってどんなに苦しくても頑張っていけるという覚悟が必要です。

したがって、お金持ちになりたい、セレブの彼女や彼氏を持ちたいでも、全く問題ありません!格好のいいビジョンやミッションなど、いくらでも後付け出来ますので!重要なのは、シニア・女性・若年層である起業をめざすみなさんが、その目的のためにどれだけ頑張れるかなのですから!

次に、どの分野で起業・スタートアップすべきかについて考える

どんなに苦しくてもがんばっていけるという目標が決まったならば、次はどの分野で起業するかについて、考えてみるべきでしょう。

シニア・女性・若年層の将来のアントレプレナーであるみなさんもいろいろとアイデアを思いつかれると思いますが、ここでは決定する際のアドバイスとなるいくつかの指標を示してみたいと思います。

  1. リスクが低い分野

起業・スタートアップは、それ自体が高リスクです。今までのサラリーマン生活とは異なり、給料はなくなり、当分の間は支出が増えていきます。

そうなると、低リスク・低コストで開始できる分野から、まずは始めるべきでしょう。

学生や若い社会人の方で確固としたビジネス・アイデアや研究成果が既にあり、VCから資金調達をする自信がある方は別として、時間に余裕のある中高年・シニアのサラリーマンや専業主婦やパートタイムなどの女性の方は、まずはご自分の得意な分野でのアフィリエイトビジネスから初めてみるのがいいのではないでしょうか?

副業が認められている企業はもちろん、認められていない方でも家族名義で開始すれば、問題はないでしょう。若い頃から仕事や趣味として長年培ってきた得意分野で、ブログを書いてみるのです。

アフィリエイトネットワークと契約を結べば、1つの申込みで数百円から数万円のアフィリエイト収入が獲得できます。また、グーグルのアドセンスの広告収入からの収益は1クリックで数円から数十円と少ないですが、みなさんのWebサイトがグーグルの検索結果のトップページに掲載され、PVが増えればアフィリエイト収入と合わせて毎月数万から数十万円の収入を得ることが可能です。

前回触れたようにシニアの方ですと、定年までの7年から10年の間に地道に記事を積み重ねていけば、サイトの価値は上昇していきます。専業主婦やパートタイムの女性の方ならば、若い頃からのスタートが可能です。

「シリコンバレーの注目企業紹介」のコラムのグーグルの記事で紹介していますが、将来的にはSEOなどのテクニックを使うよりもサイトの質が重視されていきますので、良い記事を書き続けていればサイトの順位が急に下がることはないでしょう。

ただし、グーグルのSearch Quality Evaluator Guidelines(検索品質評価ガイドライン) にありますように、専門家が存在するYMYL(医療、法律、投資などの分野)は資格を持っている方のサイトでないと将来は順位が落ちることになりますので、YMYL分野は避けるようにしてください。

  1. ニッチな分野

これは意外かと思われるかもしれませんが、みなさんが起業するにあたり今人気の分野を狙うのは、実は間違いです。AIやフィンテックなどに注目が集まっていますが、こうした分野は大手企業も参入してくるので競争が激しく、高リスクとなってしまいます。

例えば前回触れた筆者の会社の元インターンの学生が30代前半でエグジットした会社は、子供のお出かけという非常にニッチな分野の企業です。

これも「シリコンバレーの注目企業紹介」のコラムのグーグルに関する記事で紹介していますが、現在の日本では、素人が書いたものをコピペした似たような内容の検索結果が並ぶため、ユーザーはトップページしか見ていないのが現状です。つまり、トップページに掲載されないと上記の収入は発生しないのです。

しかし、ニッチであるからこそ、既存の有力企業ががっちりとトップ10を抑えているということもなく、SEO(検索エンジン最適化)でトップページに上昇することも容易となります。

また、SEOと並んで集客に必要な検索連動型広告においても、FXなどの人気分野ではビッグワードは1クリックで数千円もかかってしまいますが、子供のおでかけなどのニッチ分野では数十円ですむと思われます。つまり、ニッチな分野はマーケティングコストが格段に安くて済むわけです。

以前は、ブラックハットSEOというテクニックが多用されていました。これを使用すると、ローンや美容整形などの最も競合が激しい分野でも、後発企業がトップページ掲載を獲得することが可能でした。しかし、これも上記のグーグルの紹介ページで解説していますが、2017年の医療分野でのE-A-Tの導入により、ブラックハットSEOは危険視され、事実上不可能となりました。

その結果、競争が激しいFX、健康食品などの激戦分野はVCから敬遠され、資金調達が難しくなっているのが現状です。

今後起業を目指すシニア・女性などのみなさんは、「これからはフィンテックだよ!」などの周りの声に惑わされず、是非とも子供のお出かけサイトのように、世の中から必要とされているニッチな分野を探してみてください

  1. 海外で流行し始めているが日本にはまだ上陸していない分野

古くはeBay(1995年開始)の日本版であるヤフオク(1999年開始)やDeNA(1999年開始)などのようなオークションサイト、WhatsApp(2009年開始)と同様のサービスであるLINE(2011年開始)などのSNSアプリのように、主に米国で開始されたサービスを日本にそのまま持ってきて成功している会社は、非常に多いのです。

しかし、LINEはスタンプなど独自の機能を次々に開発し、日本だけでなく、米国ではヒスパニック系、さらにスペインや南米のなどのスペイン語圏やタイや台湾などのアジア圏でも人気を博しています。

このLINEのように、ただのモノマネで終わるのではなく、いろいろなアイデアを注ぎ込んで新機能を加えれば、後発であっても海外においても先行した会社に対抗できるわけです。Tik Tokなども好例ですよね?

さらに、海外で成功していてまだ日本に来ていないビジネスモデルを見つければ、VCなどからの出資の可能性も増大するでしょう。海外で成功しているという実績があるからです。

こうした観点からも、シリコンバレーなどの話題の会社についての情報を得る習慣を身に着けたいものです。

日本にはまだ上陸していない、または、まだそれほど流行していないが海外では流行しているニッチな分野を見つけられると、成功の確率が高いと言えるでしょう!

日本ではまだこれからのノマドライフを支援する企業、海外では流行しているが日本ではなぜか知られていない商品のEC会社、大手が参入していないニッチな分野の人材紹介業など、頭を巡らせてみると何かが見つかるのではないでしょうか?

  1. ご自分の経験が活かせる、または得意とする、興味がある分野

最後に、やはり、ご自分が自信のある、または興味がある分野で起業するのが、理想でしょう。

特にシニアの方の起業・スタートアップの場合は、それまでに数十年の企業でのご経験から得意分野、専門分野がお分かりだと思われます。例えば、不動産業に従事していた方ならマンションの買い時売り時や、買ってはいけない物件、保険業界にいらした方ならばお得なオプションの紹介や交通事故に遭った時の対処方法、などのノウハウがあるはずです。

また、シニアの方だけでなく若い方や専業主婦などの女性の方も、前述したようにブログによるアフィリエイト分野から起業を始めるにしても、やはり興味もなく、自信のない分野の記事を毎日書き続けることは苦痛であり、長続きしないでしょう。

上記の3.までに当てはまる分野から、ご自分に強みがある、または興味のある分野についてまずは探してみてください!

次回は個人事業主と会社設立どちらがいいのか?について解説していきます。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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