起業アドバイス

起業・スタートアップのためのアドバイス3
会社設立と個人事業主どちらがいい?

掲載:2020/9/2

最終更新日:2020/09/02

※記事の内容や肩書は、講義時のものです

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)のシニア・女性等への起業のアイデア・スタートアップのためのアドバイスの第3回。前回は、どの分野でスタートアップすべきかについて、お話しました。今回は、起業のテーマが決まったという前提で、個人事業主としてスタートすべきか、それとも会社を最初から設立すべきかについてのポイントについて、解説していきます。

起業・スタートアップの際に資金調達ができているか?

最初のポイントは、起業の際にどのぐらいの規模の資金が調達できているのかです。

筆者も経験がありますが、前職などでの実績から新会社を設立しようと既存企業から持ちかけられるケースがあるでしょう。また、起業準備中に作成したビジネスプランが偶然にもシード企業向けVCに気に入られるという場合もあるかもしれません。また、最近流行しているクラウド・ファンディングで資金が集まる可能性もあるでしょう。

こうしたケースでは、起業をする前に数百万~数千万円、場合によっては1億円以上の規模の資金を調達できます。資金はあるわけですから、次には信用が重要となりますので、当然会社設立となるでしょう。

しかし、これ以外のケースでは、自己資金や家族や友人からの融資などで起業することになるわけです。銀行など金融機関や公庫からの融資は、売上がゼロの起業前の状態では不可能です。個人事業主としてスタートするのが無難でしょう。

起業・スタートアップ後にある程度の利益が継続的に上げられるようになっているか?

次に、個人事業主で起業されたシニアや女性などの閲覧者の方が、どの段階で会社設立をされるのがいいのか、というトピックに移りましょう。

まずは、継続かつ安定的に利益が上がるようになってきたかがポイント、となります。一般には、年間の利益(事業所得)が500万円となることが目安とされています。これは、個人事業主としての所得が500万の場合と役員報酬が500万の場合の税金を比べると、後者がオトクだからです。

最初に継続かつ安定的と書かせていただいたのはこのためで、利益が50万円を超えて数ヶ月で法人化をすると、その後に利益が落ちた場合は不利となってしまいます。

起業・スタートアップしてから1年間は安定して利益が出るようになり、かつその後も減少することがないと自信が持てるまでは、個人事業主のままがいいでしょう。

起業・スタートアップ後に友人やVCから資金調達する自信があるか?

よく、法人の方が個人よりも信用力があるので、融資が獲得しやすいと書いてあるサイトを見かけます。しかし、これは本当ではありません。

金融機関にしても公庫にしても、売上、利益、ビジネスプラン、人物などを見て判断されるわけであり、個人事業主か株式会社かどうかは二の次と言っても差し支えないでしょう。

ただし、友人、さらにはVCから株式譲渡または新株発行での資金調達を考えているのならば、法人化が必要となります。

個人事業主が友人から資金を獲得できる方法は、あくまでも融資となります。銀行が融資をしてくれないので友人からお金を借りているという状況ですから、利子をつけて借入金を返済していく必要があります。銀行からの融資と同じことです。

しかし、シニア・女性・若年層などの起業されたみなさんのビジネスプランに友人が興味を持ってくれて、例えば50万ぐらいだったら出資してみようかなという話になったとしましょう。その段階で会社を設立すると仮定すると、友人の方は設立時からの出資者になるわけです。資本金が500万円で一株1円で500万株を発行したとすると、50万円と引換えに50万株を譲渡することとなります。つまり、株式の10%をその友人の方は保有することとなります。

また、上記のようにシード企業向けのVCから融資を受ける際にも、法人化は必須です。スタートアップやプレシードと言われるまだビジネスをローンチしていない企業であっても、ファウンダーの方自身やそのビジネス・プランが気に入られて、出資を受けるということはありうるでしょう。

シードと呼ばれる小さいながらも既に起業してビジネスをスタートしている個人事業主の方の場合には、もちろん、そうしたチャンスはあります。上記の友人の例と同じように株式と交換に資金を獲得することとなります。つまり、会社設立が必須ということです。

このケースでは会社にバリュエーションがつけられているわけですから、上記の友人のケースのように1株1円ということはないでしょう。例えば500万円で設立したばかりの会社に5,000万円の価値をつけていただいていれば、一株は10円となります。10%の株式を譲渡すると仮定すると、50万円ではなく、500万円の資金を獲得できる計算となります。

会社の価値については、人物、ビジネスモデル、狙っている市場の規模、その市場でどのくらいのマーケットシェアを取ると想定できるのかなど種々の条件で決まるので、一概にはいえません。個人的には、運も重要だと思っています。

いかがだったでしょうか?次回はシニア・女性・若年層のみなさんが会社を設立する際に重要となる、定款について解説していきます。

著者:松田遼司
東京大学卒業後、世界のトップ20に入るアイビー・リーグのMBA修了。外資系IT企業のアナリスト、エグゼクティブ、Web社長等を歴任。3度起業し、2度のエグジットに成功している。
FX業界の重鎮である今井雅人氏の5冊の著書を再構成・無料公開した「FX初心者の資産形成・運用向け今井流FX入門・始め方と口座比較」の講義解説者でもある。

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